母親に「パンツがない!」とスカイプ…米国の学生寮での生活

近年、富裕層を中心に、子どもを幼少のうちに海外留学させたり、国内のインターナショナルスクールに通わせたりと、国際感覚を身に着けるための教育がひとつのトレンドになっている。本連載では、グローバルマーケットの第一線で活躍し、現在は留学サポート事業などを手がける株式会社ランプライターコンサルティングで代表取締役社長を務める篠原竜一氏が、グローバル人材を目指す富裕層の教育事情について、実体験も交えながら解説する。今回は、米国の学生寮での生活を紹介しよう。

学年末に寮を出て、すべての家具・家電を買い直す

アメリカのボーディングスクールや大学の学生寮は、毎年、学年末に荷物をすべて持って退寮しないといけません。結構大変です。

 

なぜ退寮しなければいけないのでしょうか。それは寮をサマースクールで使用するからです。学校にとっては、夏休みは稼ぎ時なのです。多くの日本人もサマースクールに参加しています。実際にボーディングスクールや大学に入る前に子供に体験させる保護者も多いのではないでしょうか?

 

さて、この年頃の生徒が一年暮らした部屋を想像してみてください。

 

どう考えても片づけは大変です。学年末の2週間は期末テストで片づけをしている暇はありません。学校によっては倉庫があるところもありますが、ない場合はすべてを持って帰るか、近くの倉庫に入れるか、捨てるかという選択になります。倉庫を約3か月の夏休みに借りるとなるとそれなりの値段になります。

 

多くのアメリカ人は持てる分だけもって実家に帰り、残りは捨てるそうです。日本人的には「もったいない」と思いますが、大量生産・大量消費が当たり前のアメリカでは倉庫代にお金をかけるぐらいだったら買い替えようとなるそうです。

 

寮の部屋には通常、ベッド、机、クローゼットしかなく、枕や布団、シーツ、毛布、デスクランプ、ハンガーなどは持参しないといけません。日本と比べ寮の部屋は暗いことが多いです。日本人にとってちょうど良い部屋の明るさは、眼の色が青い欧米人にとっては眩しすぎるのです。したがって部屋に置くライトも必要です。留学生はそんな荷物を日本から持って行くのは難しいので、現地入りしてから買い揃えることになります。

 

アメリカでは8月にはいるとBack to School Salesが始まります。このセールでアメリカ人も留学生も、必要なものを買い揃えます。筆者がニューヨークに住んでいる時、「アメリカ人は、毎年何を買うのだろう」と思っていました。しかし上述の通り、捨てて買い直す文化のアメリカにおいて、約300校のボーディングスクール、約3000校の大学の入寮前の需要は大きいのです。

 

長男の入寮前に必要なものを揃えようとショッピングモールに行ったとき、すごく驚いたことがあります。Back to School Salesで売られている商品の多くが“Made in USA”なのです。このようにして、毎年、自国の製品が売れる仕組みを作っているのです。

 

ショッピングモールでは、ドーム(寮)セットなるものも売っています。枕や布団、シーツ、毛布、など必要なものがすべて入っている便利なセットです。売られているものがワンサイズだったので、学校のベッドのサイズを確認しようとホームページを見ていたら、店員が学校の寮のベッドは、すべて同じサイズだと教えてくれました。全米のすべての学校の寮のベッドが同じサイズなんて! さすがアメリカです。

 

米国・学生寮は、自国経済も支えている!?
米国・学生寮は、自国経済も支えている!?

多忙すぎる学生寮での生活で育まれる「自主性」

入寮日。自分で運転する学生、親の運転で学校に到着する学生様々ですが、大渋滞することもあります。もたもたしてはいられません。授業のレジストレーション(登録)を確認し、教科書を買い、あっという間に前期の授業が始まります。入学早々パニックになる新入生がたくさんいます。

 

部屋は色々ですが、ボーディングスクール(中学3年生~高校3年生)では、寮生活での共同生活から学ぶことが多いとの考えから、ルームメイトがいるケースがほとんどです。学校によっても異なりますが、二人部屋が一番多いようです。上級生になって寮長などになると、一人部屋が与えられることもあります。

 

大学は規模の小さいリベラルアーツカレッジの場合は、ボーディングスクールと同様の発想から2人~3人部屋から始まり、2年目以降は1人部屋、2人部屋などを選べるようになっています。学生数が多いリサーチ大学の場合は、1年生は1年生用の寮に入ることが保証され、2年生以上になると、引き続き寮に入ったり、近くにアパートを借りたりなど様々です。

 

筆者は長男の留学を通し、ボーディングスクールの寮生活からの学びは大きいと感じました。13、14歳の子供達が初めて親元から離れて共同生活をする。考えただけでも大変ですし、勉強量もそれまでとは比較になりません。

 

今まで通っていた学校でAしかとったことがない学生たちがボーディングスクールに自信満々でやってきますが、初めてBをとったら焦ります。洗濯物が溜まっているのはわかっているものの、宿題は終わりません。ちょっとしたことでもルームメイトのやることが気に入らなくなってきます。

 

月曜日から金曜日は、朝から晩まで予定はびっしりで、寮、食堂、教室、図書館、グランドを移動して1日は終わります。スポーツの試合以外で学校の外に出ることはまずありません。土曜日はスポーツの試合。日曜日は月曜日からの授業に備えて勉強をします。

 

困った時には寮に住む先輩や先生にいつでも相談すれば良いのですが、なかなか質問に行けません。ほとんどの学校では、お金を払うと洗濯サービスを頼むことができます。決まった曜日に決まった時間に洗濯物を洗濯袋に詰めて持って行けば良いだけです。それでもほとんどの留学生、特に男の子は、一度は母親にスカイプするそうです。

 

「パンツがない!」と。

 

 米国・学生寮で暮らす男子は、忙しい毎日で洗濯ができず、一度は母親に助けを求める

米国・学生寮で暮らす男子は、忙しい毎日で洗濯ができず、一度は母親に助けを求める

 

このように、自分自身の勉強(予習、復習、プロジェクトの準備)やスポーツなどに取り組むだけでも大変なのに、身の回りのことは自分でしなければなりません。しかし上級生になっていくと、いつの間にか下級生を指導できるように成長していきます。この経験こそがボーディングスクール出身者の強みです。

 

日々色々なことが起きます。上級生や寮長達は状況を把握し、解決策を模索し、対応しなければなりません。必要に応じて、寮に住む先生に相談しながら、自分達で問題を解決していきます。

 

世界各国から優秀な学生が集まり、何でも自分達で議論します。そんな寮生活を通じて、自信を持って次の目標にチャレンジする若者へ成長していくのです。

 

株式会社ランプライターコンサルティング 代表取締役社長

1988年に日本興業銀行に入行。東京、ロンドン、ニューヨークにてグローバルマーケットビジネスに従事。ニューヨーク支店はワールドトレードセンターの50階にあり、2001年米国同時多発テロでは被災した。この時の壮絶な経験から多様性を学ぶ重要性を痛感し、05年にバンクオブアメリカ証券会社に転職。マネージング・ディレクターとして外国債券のセールス&トレーディングを統括。07年に取締役に就任、副社長として金利・債券ビジネス拡大に注力。バンクオブアメリカメリルリンチを経て、14年にクレディ・アグリコル証券に入社、債券営業統括部長に就任し、機関投資家向けビジネス拡大に尽力。18年末に退職、19年2月、株式会社ランプライターコンサルティングを設立。インターナショナルスクール進学、アメリカ留学サポート事業に加え、世界を舞台に活躍する人材育成事業を展開している。

著者紹介

連載世界を舞台にしたグローバル人材を育てる…富裕層によるエリート教育

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