かつては高給取りの代名詞ともいえた医師でしたが、昨今は「貧困医師」と「金持ち医師」の二極化が進んでいます。資産形成のため、不動産投資で不労所得の獲得を試みようとする方もいますが、そこには「セレブ妻」の妨害が…。本記事では、医療法人の設立などを手掛ける大山一也氏著『資産10億円を実現する 医師のための収益物件活用術』(幻冬舎MC)より一部を抜粋し、「貧困医師」の実態を解説します。※「医師×お金」の総特集。特設ページはコチラ

いつまで経ってもお金が貯まらない「貧困医師」

医師の皆さんがキャリアプランを考えた際に、私の経験上、やはり最終的には独立開業を目指す医師が多いように感じます。しかし、そのための準備をしているかどうかをたずねると、皆さんのほとんどがしていません。あまりの忙しさに情報収集ができず、計画的な資産形成もできないので、収入の割に驚くほど預金が少ないことは多いのです。特にお金が貯まっていない医師の特徴は、2つあります。

 

◆大学病院の勤務医

 

一つは大学病院に勤める医師です。そもそも大学病院の存在意義は、臨床よりもどちらかといえば医師を育てることと医学の研究にあります。それゆえ多額の運営費がかかり、結果、医局の医師は収入が平均よりも低めのようです。

 

また、若手医師にとって医局は、勉強の場でもあり、特に有名大学の医学部に属していれば将来のブランドとなるため、たとえ薄給でも人が集まると聞いています。さらに大学院に入って博士号を取得するためには、授業料を支払わなければなりません。

 

30歳を過ぎて家族を持つことになれば、給与だけではとても生活できず、いくつものバイトを掛け持ちするケースが多いようです。それでもかつては、教授になれば「白い巨塔」の権力によって、さまざまな副収入なども望めましたが、いまではそれもむずかしくなってきました。

 

ある大学院に通う30代の医師は「働いても働いても全然お金が貯まらない。これってラットレースというんですよね」とため息をついていました。ラットレースとはロバート・キヨサキが著書『金持ち父さん 貧乏父さん』(筑摩書房)の中で語っている言葉で、いくら働いても一向に資産が貯まらない様子が、回し車の中で走り続けるネズミに似ていることからきています。

 

◆セレブな奥様に財布を握られている

 

もう一つが奥様に財布を握られているケースです。先日お会いした40代の医師の年収は2,000万円。しかし、着ているスーツは、どう見ても国道沿いの紳士服店で買ったであろうヨレヨレの品でした。

 

腕時計も国産のデジタルウォッチですし、一見高給取りの医師には見えません。相談内容を聞くと、「奥様に財布を握られていて預金もほとんどない。このままでは将来の目標である開業ができなくなるので、計画的な資産形成と運用を考えている」と言うのです。

 

どうやら奥様はセレブのような生活が好みのようで、自宅は世田谷区の注文住宅、クルマはベンツ、着る服は雑誌で紹介されているブランド物ばかり。先日銀座までお付き合いした際に購入したコートは30万円で、靴は10万円だったそうです。さらに週4回の習い事に通い、現在高校生の2人の子どもは小学校から私立。もちろん医学部を目指しています。これではお金が貯まるはずがありません。

 

医師の世界でも「貧困格差」が…
医師の世界でも「貧困格差」が…

 

しかし、これはけっしてレアなケースではありません。医師の奥様には比較的このようなタイプが多いように感じます。ご主人が激務で家のことは任せきり。さらに高給取りゆえに自由にお金を使ってしまうのです。そこでご主人である医師が、私のところに不動産運用の相談に来るわけですが、このケースでアドバイスを実行に移すのは簡単ではありません。

 

まず奥様が「不動産運用=ギャンブル」と思う傾向が強く、大反対されるのです。私としては、家族である奥様に内緒で話を進めることはお勧めできませんが、中には奥様としっかりお話をせずに運用をされている方もいるかもしれません。しかし、ほとんどが自宅に届く郵便物や融資をする銀行との交渉などでバレてしまうので、上手くいきません。やはり地道に説得するしか方法はないと思います。

 

そんなときこそ、自分一人で説得せずに、プロフェッショナルに相談すればほとんどの問題は解決すると思います。

 

「開業」して収入が増える医師も多いが…

一方で開業医には金持ち医師が多いようです。厚生労働省が行った調査によると、開業医の年収は2,787万円。勤務医が1,507万円ですからおよそ2倍。大きな差です。しかも、院内政治に振り回されることはなく、収入や仕事量もある程度自分でコントロールできる(データはすべて書籍刊行当時)。

 

私の知人の開業医の方たちは、ほとんどが「開業して収入が増えた。ストレスが減って体調も良くなった」といったことを話しています。もちろんすべての開業医が成功するわけではありません。独立ということになれば医師としてのスキルはもちろん、医療機関ならではの経営ノウハウも必須になります。

 

一般的なビジネスでは、価格で勝負することができますが、一部を除き医療行為ではこれは当てはまりません。たとえば大学病院や大きな市などの病院ではそのブランド力で患者が来ますが、開業したてのクリニックでは院長の人柄や腕で患者が来ることが多いでしょう。患者を「お客様」として接することができるか、また周辺住民から見て魅力的な特徴があるか、といったことも重要になります。

 

知り合いのある医師からは、このような話を聞いたことがあります。彼と同じ医局の医師(以下A医師)が独立を計画しました。A医師は医局では論文の数がダントツに多く、仕事も早くて正確ということで、職場では「エース」でした。

 

当然独立後も成功するだろうと、開業コンサルタントと相談しながら1億円以上の融資を金融機関に申し込むと、あっさりOK。郊外に200坪の土地を購入し、建物も自宅兼用の造りにして、クリニックを開業しました。しかし、患者は思うように来てくれません。そこでA医師は、頻繁に通ってくれる患者に、印象を聞いてみました。すると「周辺住民は建物がおしゃれすぎて入りにくいと言っている」と言うのです。

 

そこは田舎の比較的高齢者が多い地域。マーケティングは開業コンサルタントに任せきりでしたが、見事に失敗です。しかも後日はっきりとした現実を突きつけられることになるのです。

 

ある日、ネットサーフィンをしていると、クリニックの口コミサイトを発見しました。開業して3ヵ月。もう口コミがあってもいいだろうと検索してみると、3件中2件が「上から目線で感じが悪い」といった内容でした。その後も患者数は伸びずに、結局現在はより都心に近いテナントビルに移転したそうです。

 

これはあくまで一例です。実際には医師の独立開業は、一般的なビジネスの開業よりも成功率が高いことはいうまでもありません。まず、ニーズという点で圧倒的に社会に必要とされています。さらに高齢化社会が進むことで、ますます医療を必要とする人は増えます。にもかかわらず、競争率は圧倒的に低い。

 

たとえば日本の法人数は約271万社あります。対して病院は8,567施設しかありません。ベッド数19床以下のクリニックでも10万施設です。特に埼玉県と茨城県の競争率は低く、人口10万人に対する医師の数は、全国平均226人に対し、埼玉県は148人、茨城県は167人でワースト1、2位になっています。こうした基礎的な情報を使って開業に適した地域を選びつつ、専門診断科を軸にして検討することもできます(データはすべて書籍刊行当時)。

 

ターゲットとなる地域に自身の専門科がどれだけあるかは、前出の口コミサイトでエリアを絞り込んでいくなどで簡単に分かります。開業のための資産形成と同時に、このような事前準備を行って患者のニーズをしっかり把握していれば、医師の独立開業は一般的なビジネスよりも格段にリスクが低いと言えるでしょう。さらに今後は超高齢化社会に突入します。今後も新規の医療施設のニーズは増え続けるはずです。

 

患者のニーズをしっかり掴んだ金持ち医師として、次のような例があります。彼はもともと形成外科医でしたが、30代半ばで美容外科医になり、「自由診療」分野に転科したのです。2割または3割負担となる保険診療では、価格競争にならないためにさまざまな制約があります。一方で自由診療は価格設定も集客方法も文字通り自由です。たとえば視力を矯正するレーシックでは、スポーツ選手やタレントを起用している派手な広告を見たことがあるのではないでしょうか。

 

彼も雑誌やインターネットにかなりの広告費を費やしました。この費用は不動産運用からの捻出です。現在、彼の年収は2億円に達しています。これも極端な例といえるかもしれません。とはいえ、開業医の平均年収は2,787万円というのもまた事実。目指す価値はあるのではないでしょうか。それには資産形成が必須です。

 

また、ある程度資産を持つことになれば、「いつでも独立できる」と精神的に楽になり激務をこなすか、収入は減るが転職して業務量を減らすか、といった判断が冷静にできるようになるはずです。

医師にも「ビジネス感覚」が求められる時代へ

職業の選択肢や活躍の場がボーダレス化している昨今、医師としてのスキルと同時にビジネス感覚も持ち合わせた金持ち医師と、旧態依然の貧乏医師の二極化がいままさに進んでいます。

 

ここでいう「ビジネス感覚」とは時流を読む力も含みます。日本は今後世界のどの国も経験したことのない超高齢化社会に突き進んでいきます。そのため、健康寿命伸長産業による新サービスの創出が求められています。政府も同産業への民間企業参入を後押ししていくはずです。

 

また、人口減に伴って医療機器や医薬品と同時に医療サービスも重要な輸出品目になると考えられます。世界のさまざまな国の富裕層を対象とした高度な医療サービスを海外で提供したり、国内でも外国人を対象とした観光と人間ドックのパックツアーといった新しい医療サービスのニーズが生まれてきています。

 

 

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    大山 一也

    幻冬舎メディアコンサルティング

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