金融庁による「老後資金として2000万円必要」とも読める報告書により、資産運用が担う役割に注目が集まっている。本記事では、1級ファイナンシャルプランニング技能士で、金融教育研究所・代表の佐々木裕平氏が、「安全な資産運用」は可能なのかを考察する。

元本保証による「安全な資産運用」は可能だが…

◆1000万円を安全に増やすことはできる? できない?

 

退職金やまとまった預貯金など、大きなお金がある場合は、どのようなかたちにせよ、できるだけ安全に増やしたいところです。

 

でも、果たして安全に増やすことなんて、できるのでしょうか?

 

今回は、仮に1000万円のお金が手元にあったとして、それを安全に資産運用できるのか?という点から考察していきます。

 

1000万円を安全に増やせる?
1000万円を安全に増やせる?

 

<ポイント①>1000万円の資産運用は安全にできることはできる

 

結論からいうと、資産運用で1000万円を安全に運用できます。別のいい方をすると、元本保証の運用ですね。ただ、それはたぶん、多くの人にとっては「満足できない」内容ではないかなと思います。

 

どんな運用方法かというと、預貯金や個人向け国債がそれに相当します。預貯金や個人向け国債であれば、1000万円でも安全な資産運用が基本的には可能です。

 

預貯金であれば、銀行などが倒産しても、一行当たり1000万円とその利子が保証されているからですね。また、個人向け国債は国が保証していますので、こちらも安全に増やすことが可能です。

 

<ポイント②>安全に1000万円を資産運用すると、リターンがどうしても低い

 

ただ、どうしても安全に1000万円を資産運用しようとすると、リターンが低くなってしまいます。

 

2019年現在では、元本保証タイプの預貯金や個人向け国債ですと、利回りが0.01~0.05%くらいです。そのため、多くの人にとっては、安全に1000万円を資産運用しようとすると「満足できない」ものになりがちです。

 

ちなみに、年率0.05%で1000万円を預けた場合、安全に5000円増えることになります。0.01%の場合は、安全に1000円増えますね(※税金など無視した場合)。

 

昔のように、金利が3%あれば、1000万円の元本保証の資産運用でも30万円が安全に増えましたが、現在ではだいぶ低くなったことが実感できます。

税制上優遇されている「投資制度」が拡充

◆安全に1000万円を資産運用する以外の方法も知っておく

 

資産運用とは、お金(資産)を働ける場所に運んで用いることを指すことがあります。どうしても気持ち的には、大切な1000万円だからこそ、安全な場所に運んで用いたい、とは思うのですが、現状では増えにくいのが現実です。

 

そこで、安全に1000万円を資産運用する以外の方法も知っておくことが重要ではないかと思います(※もちろん、安全資産としての預貯金・個人向け国債は大変に重要な存在です。不要だという意味ではありません)。

 

価格変動リスクのある投資をすると、1000万円を安全に資産運用することはできません。場合によっては、元本が半分以下に減ってしまうこともあります。ちなみに、長期でやったら絶対にうまくいく!という保証もありません。

 

それでも、現在では企業型確定拠出年金やiDeCo、そしてつみたてNISAなどの税制上優遇されている投資制度が拡充されてきています(※税制優遇以外に、投資にかかるリスクやリターンは各種制度であっても変わりません)。

 

そこで、リスクのある資産運用をする、しないは置いといて、まずは

 

●リスクのある投資とはどのようなものか

●どのようにしたら、どうなるのか

●損をするのはなぜなのか

●分散するとどうなるのか

●長期でやると、過去はどうだったのか

 

などを学ぶことが重要ではないか、と思います。

 

安全に1000万円を資産運用する方法はありますが、それ以外の方法を知ったうえで、ではどうするか?を考えることも重要ではないかな、と思います。

 

 

佐々木 裕平

金融教育研究所 代表

 

本連載は、「金融教育研究所」掲載の記事を転載・再編集したものです。

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