金融庁による「老後資金として2000万円必要」とも読める報告書により、年金制度の危うさに改めて注目が集まった。本報告は、年金制度改革のため、国民に資産形成の自助努力を求めたかたちとなっていたが、実際、年金はいくらもらえるのだろうか。本記事では、1級ファイナンシャルプランニング技能士で、金融教育研究所・代表の佐々木裕平氏が、今後の公的年金制度について考察する。

生活費26.5万円/月の夫婦世帯…不足する金額は?

◆年金受給額は昔8.3倍、未来2.3倍?

 

本記事では、年金について考察してみたいと思います。本記事でいう年金とは、65歳以降などに受け取れる公的年金制度を指しています。

 

2019年現在、65歳の平均的モデルの夫婦世帯では、月に21万円程度が受給できています。そのため、月の生活費が26.5万円のモデルの世帯が30年間(つまり90歳まで)生存した場合の不足額は、概算で以下のとおりになります。

 

●年金収入21万円-支出26.5万円=毎月5.5万円の不足

●5.5万円の不足×12ヵ月×30年=1980万円の不足

 

◆私たちが受け取れる年金の受給額は平均21万円は本当?ウソ?

 

上記のような計算では、確かにおよそ2000万円ほど老後の生活資金が足りません。ここに、2000万円問題の現実があるわけですね。

 

さて、上記は本当でしょうか? それともウソでしょうか?

 

自分で計算をしておいてなんですが、筆者は「いまは本当だけど将来はウソになる」と考えています。どういうことでしょうか。

 

年金「平均21万円」は受け取れる?
平均21万円の年金は受け取れる?

支払保険料の「8.3倍」の年金をもらえる1935年生まれ

◆将来の年金の受給額はいくらなの?

 

少し話がそれる気がするかもしれませんが、「支払った年金のお金に対して、将来どのくらい受け取れるのか?」というデータを見てみましょう。それによると、次のようになっています(厚生年金の場合)。

 

●1935年生まれの世代(いまの84歳程度):払った保険料の8.3倍の年金を受給できる

●1995年生まれの世代(いまの24歳程度):払った保険料の2.3倍の年金に留まる

 

参照:『厚生年金・国民年金 平成16年財政再計算結果(報告書)』(厚生労働省)

 

このように、大きな差があります。これは何を意味するのでしょうか?

 

つまり、いまの65歳世帯モデルでは平均21万円が受給できている(事実)が、いまの22歳が65歳(将来の受け取り開始年齢は70歳や75歳かもしれないですが)になる頃には、21万円より低い金額になっている可能性(未確定)があるのです。

 

ちなみに筆者は、個人的に現在価値で13万円程度になるのではないかと考えています。その場合、必要な金額は2000万円ではなく、5000万円程度になります。

 

これを埋めるために利用できる、自分のためのもう1つの年金制度がイデコ・つみたてニーサではないでしょうか。

 

◆なぜ年金の受給額が減るの? いくらなんでも減りすぎじゃない?

 

上記のように、将来の年金受給額が減るのには大きく2つの理由が考えられます。

 

①年金制度の成熟化に伴う運営上の問題 →保険料の引き上げの遅れ

 

②人口増の変動 →少子高齢化により現役世代が減ることで、高齢者の受け取れる絶対的な年金額が減る(年金は仕送り方式)

 

このような構造的な問題があります。そして、それはすぐに解決することができません。

 

そのため私たちは、若いうちから自分の老後のお金を自分で用意しないといけない可能性があるのです。
 

 

佐々木 裕平

金融教育研究所 代表

 

本連載は、「金融教育研究所」掲載の記事を転載・再編集したものです。

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