「最近何かと不祥事の多い損益計算書よりも、キャッシュフロー計算書の方が雄弁に会社の真実を教えてくれることがあると言われた。それはどういうことだろうか?」
吉田:まず当社のキャッシュの動きからおさらいしてみよう。
高杉:幸い当社は黒字でしたから、それを反映して営業活動のキャッシュフローもプラスになっていました。それでも自動化のための設備投資などで資金がさらに必要になったため、新規の借入をしました。その結果、財務活動のキャッシュフローもプラス、投資活動のキャッシュフローはマイナスです。
吉田:以上をまとめると、営業活動→プラス、投資活動→マイナス、財務活動→プラスということだね。代表的なものとしては以下の3パターンのキャッシュフローがある。当社は「成長型」に該当すると思う。取引先の分析にも有効な方法だから試してごらん。過去の財務諸表を調べたら、先日倒産した夕日商事は数年前から切売型が続いていたようだ。黒字倒産の兆候はあったわけだね。
[図1]キャッシュフローで見る会社の3類型
<成長型のキャッシュフロー>図1上段
「営業活動のキャッシュフロー」と「財務活動のキャッシュフロー」が共にプラスとなっていて、「投資活動のキャッシュフロー」がマイナスとなっている状況。利益と新規の借入金を、会社の成長(設備投資や事業買収など)に投入している姿を示す。
<成熟型のキャッシュフロー>図1中段
「営業活動のキャッシュフロー」はプラスであるものの、「財務活動のキャッシュフロー」がマイナスになっている状況。これは設備投資などを控えて借入金を返済している状態であり、会社の成長がやや鈍っていることを示す場合がある。
<切売型のキャッシュフロー>図1下段
さらに会社の成長が鈍り「投資活動のキャッシュフロー」がプラスに転じると、事業資産の切り売りによる借入金の返済とも考えられる。一時的なものではなく何年間も続いている場合には、事業が重大な局面を迎えている可能性があり、過去のトレンドを見て慎重に判断する。
まとめ
キャッシュフローから見た会社のパターンは3つある(成長型、成熟型、切売型)。