ピクテ投信投資顧問株式会社が、日々のマーケット情報を分析・解説します。※本連載は、ピクテ投信投資顧問株式会社が提供するマーケット情報・ヘッドラインを転載したものです。

 

米国トランプ大統領が今月になって突然、従来関税対象となっていない中国製品のほぼすべてに追加関税を課す「第4弾」の制裁を発動する意向を表明してから最初の中国貿易統計が公表されました。全体の数字は事前の予想と大差なく、市場の反応も限定的でした。ただ、内容を見ると今後の火種も見え隠れします。

中国貿易統計:7月中国の輸出は予想外に増加、対米輸出は前年比で減少

中国税関総署が2019年8月8日に発表した7月のドル建貿易統計によると、輸出は前年同月比プラス3.3%と、市場予想(マイナス1.0%)、前月(マイナス1.3%)を上回りました(図表1参照)。

 

月次、期間:2014年7月~2019年7月 出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成
[図表1]中国の輸出と輸入(米ドル建、前年同月比)の推移 月次、期間:2014年7月~2019年7月
出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成

 

輸入は前年同月比マイナス5.6%となったものの、市場予想(マイナス9.0%)、前月(マイナス7.4%)は上回りました。結果として、貿易黒字は451億ドル(約4兆7900億円)となりました。なお、中国の対米貿易黒字は1-7月に11.1%増加しました。

どこに注目すべきか:中国貿易統計、対米輸入、為替操作国

米国トランプ大統領が今月になって突然、従来関税対象となっていない中国製品のほぼすべてに追加関税を課す「第4弾」の制裁を発動する意向を表明してから最初の中国貿易統計が公表されました。全体の数字は事前の予想と大差なく、市場の反応も限定的でした。ただ、内容を見ると今後の火種も見え隠れします。

 

 

まず、7月の中国貿易統計全体の数字では、輸出が前年同月比3.3%と市場予想を上回り改善しました。この背景を特定するには材料不足ですが、国別の輸出額を見ると、(日本を除く)アジアの主な国々や、欧州への輸出が増えている一方で、対米国の輸出の伸びは緩やかです。この傾向が今後、持続的な動きとなるのか、現時点で判断できませんが、輸出先の分散の可能性が見られました。

 

次に、懸案となっている対米貿易を見ると、米国向け輸出は388億ドルでした(図表2参照)。前年同月比で伸び率を見ると、4ヵ月連続でマイナスとなっています。

 

資産を「守る」「増やす」「次世代に引き継ぐ」
ために必要な「学び」をご提供 >>カメハメハ倶楽部

 

月次、期間:2014年7月~2019年7月 出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成
[図表2]中国の対米国輸出と輸入額の推移 月次、期間:2014年7月~2019年7月
出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成

 

一方、輸入については108億ドルで、前年同月比では11ヵ月連続でマイナスとなっています。トランプ大統領は第4弾の意向を表明した際、中国が米国産大豆を購入しない(米国からの輸入)ことに不満を示しましたが、今回の貿易統計では、対米国の輸出と輸入のバランスが取れていないことが示されたとも見られます。貿易の不均衡は放置されるべきではないと思われますが、市場の反応を見ても、一方的な関税通告による解決策が妥当とも思われません。

 

さて、貿易統計に火種が残るなど、この先何が起きるか予断は許されませんが、当面、9月に予定されている米中閣僚会議が実施の運びとなるかに注目しています。

 

もう一つ、注目しているのが中国を為替操作国と表明したムニューシン財務長官のコメントです。財務長官は中国との競争上の不公正を除去するため国際通貨基金(IMF)と協力すると述べている点が気になります。IMFは米国の通商政策に否定的な見解を述べてきただけに、どのような協力関係となるのか興味のあるところです。IMFが7月に公表したばかりの対外セクターレポートでは人民元の実質実効為替レートを妥当と評価している点も合わせて注目しています。
 

 

当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『米の追加関税第4弾…動じぬ中国貿易統計に残る「火種」』を参照)。

 

(2019年8月8日)

 

 

梅澤 利文

ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部投資戦略部 ストラテジスト

 

カメハメハ倶楽部セミナー・イベント

 

【12/10開催】
相続税の「税務調査」の実態と対処方法
―税務調査を録音することはできるか?

 

【12/10開催】
不動産「売買」と何が決定的に違うのか?
相続・事業承継対策の新常識「不動産M&A」とは

 

【12/11開催】
家賃収入はどうなる?節目を迎える不動産投資
“金利上昇局面”におけるアパートローンに
ついて元メガバンカー×不動産鑑定士が徹底検討

 

【12/12開催】
<富裕層のファミリーガバナンス>
相続対策としての財産管理と遺言書作成

 

【12/17開催】
中国経済×米中対立×台湾有事は何処へ
―「投資先としての中国」を改めて考える

 

 

 

【ご注意】
●当レポートはピクテ投信投資顧問株式会社が作成したものであり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。
●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。当レポートに基づいて取られた投資行動の結果については、ピクテ投信投資顧問株式会社、幻冬舎グループは責任を負いません。
●当レポートに記載された過去の実績は、将来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません。
●当レポートは信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用目的への適合性を保証するものではありません。
●当レポート中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。
●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。
●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の対象ではありません。
●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資家保護基金の対象とはなりません。
●当レポートに掲載されているいかなる情報も、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録