近年、活況を呈する日本の不動産市場のなかで、国内第二の大都市大阪は不動産に関わるプレーヤーの注目度が高い。そこで世界最大(2018年の収益に基づく)の事業用不動産サービス会社、シービーアールイー株式会社が発表した特別レポート『今後の大阪の不動産市場の行方~2030年に向けて~』から一部抜粋し、今後、大きく変貌する大阪と、その不動産市場の魅力を考察する。

万博に向けて「夢洲」に新たな賑わいの拠点が誕生

■変貌する大阪

大阪では“キタ”と“ミナミ”という俗称でエリアが語られることが多い。“キタ”エリアは梅田およびその周辺を指し、“ミナミ”エリアは難波およびその周辺を指している。かつての大阪のオフィス街の中心は、淀屋橋~本町にかけての御堂筋沿いであったが、過去20年程度の時間を経て、梅田にシフトしてきた。向こう10年、このトレンドはさらに加速する見込みである。

 

一方、“ミナミ”はもともと大阪の商業地の中心として賑わいのある街であったが、近年、国内屈指のインバウンドに人気のある街として、日本のみならず海外でも注目度が高まっている。特に、人の往来が最も多い心斎橋筋商店街は、年々外国人旅行者が増加し、道行く人の大半が外国人と言っても過言ではない。

 

また、外国人旅行者は、日本人にはあまり人気のないエリアにまで足を運び、観光やショッピング、飲食を楽しんでいる。こうした状況を受けて、近年、“ミナミ”では賑わいのエリアが拡大してきている。今後、心斎橋や難波から、さらに南に位置する恵美須町や新今宮方面にまで賑わいが広がるだろう。

 

大阪では、向こう10年の間に、“キタ”と”ミナミ”に加えて、“夢洲(ゆめしま)”という新たな事業用不動産の集積地が誕生する(図表1)。“夢洲”は、2025年に万博の開催が予定されているのみならず、IR誘致の最有力候補地のひとつでもあり、大阪市は同エリアでIRを核とした国際観光拠点の形成を目指している。

 

大阪府と大阪市のIR推進局の試算によると、経済波及効果は、建設時1.2兆円、運営が開始されれば7,600億円/年、雇用創出効果は、建設時7.5万人、運営が開始されれば8.8万人/年が見込まれている。関連する産業への波及は大きく、新たな雇用創出も期待され、大阪の事業用不動産にとってもインパクトは大きいと考えられる。

 

[図表1]大阪広域地図

再開発でオフィス集積が進む「キタ」

かつての大阪のオフィス街の中心は、淀屋橋~本町にかけての御堂筋沿いであったが、過去20年程度の時間を経て、再開発の相次いだ梅田にシフトしてきた。これまで梅田に大きな変化を与えた開発は[図表2]の通り。

 

出所:CBRE、2019年7月
[図表2]梅田における1997年以の主な大型開発 (出所:CBRE、2019年7月)

 

オオサカガーデンシティ開発で「ハービス大阪」が竣工する前年の1996年から、同開発の最後のビル「ブリーゼタワー」が竣工した2008年までに、梅田のオフィスの稼動面積は2.5倍に増加。1人当たりの床面積*3.7坪)と想定すると、当開発期間中に梅田の賃貸オフィスビルで働くワーカーは2.1万人増加したと試算される。さらに、大阪駅改良および駅周辺の再開発においては、「梅田阪急ビル」の竣工(2010年)を皮切りに、「グランフロント大阪」の竣工(2013年)まで、大阪を代表するランドマークビルが相次いで供給された。これにより、梅田のオフィスの稼動面積はさらに1.5倍増加し、ワーカー数も1.9万人増加したと試算される。

 

すなわち、「ハービス大阪」が竣工する前年の1996年から「グランフロント大阪タワーA、B、C」が竣工した2013年までに、梅田のオフィス稼動面積は3.8倍増加し、そこで働くワーカー数は4万人増加したことになる。

 

今後梅田に大きな変化をもたらす開発は[図表3]の通り。

 

出所:CBRE 2019年7月
[図表3]梅田における今後の主な大型開発 出所:CBRE 2019年7月

 

今後、大阪駅周辺では「大阪梅田ツインタワーズ・サウス」、「うめきた2期地区再開発事業」、「梅田3丁目計画」の3つの大型プロジェクトが予定されている。それぞれのプロジェクトは2022年から2025年にかけて竣工する。供給されるオフィス面積は7.8万坪で、2018年のストックに対して33%の増加が見込まれる。

 

この結果、大阪全体の賃貸オフィスビルのストックに占める梅田の割合は、2018年末時点の15%から、向こう10年間で20%程度にまで上昇すると推定される。立地や機能性に優れたビルがさらに集積する結果、今後のオフィス需要も梅田にますます集中すると考えられる。過去の再開発の際にもみられたような梅田以外のオフィスエリアからの移転のほかに、万博やIRに関連した需要も新規大型ビルの需要の後押しをするだろう。

 

しかし、梅田に需要が集中するとは言っても、新規供給のボリュームが多いことは確かであり、賃料設定によっては空室を残して竣工するビルもあると考えられる(図表4)。

 

[図表4]梅田におけるオフィス貸室総面積の推移

 

[図表5]梅田周辺における今後の主な開発計画

訪日外国人が急増する「ミナミ」

わが国へのインバウンドの増加が経済に大きな影響を与えており、とりわけ大阪は大きな恩恵を受けている。Mastercardによる「世界渡航先ランキング調査」によれば、大阪の来阪外国人数とその消費額の成長率は、いずれも2年連続で世界第一位であった。この成長の源泉となっている地が“ミナミ”である。“ミナミ”は、そもそも大阪の商業地の中心として賑わいのある街であったが、インバウンドの増加により大きく変貌した。ミナミの中で人の往来が最も多い心斎橋筋商店街の歩行者は、もはやその大半が外国人旅行者と言っても過言でない。

 

大阪への訪日外客数は、インバウンドの増加が本格化する前の2011年に140万人であったのに対して、2018年(推計)は1,140万人と8倍となった。同期間の全国の訪日外客数の増加(600万人から3,200万人(推計)に5倍の増加)を大きく上回った。円安やビザの規制緩和に加えて、関西国際空港におけるLCCの発着便数が大幅に増加したことが大きな原動力となった。関西国際空港は、LCCの就航都市数が日本で最も多い、日本最大のLCC拠点となっている。

 

政府目標である2030年の日本の訪日外客数6,000万人が達成されることを前提とし、過去の大阪の割合を乗じて推計すると、2030年の大阪への訪日外客数は2018年の2.3倍の2,600万人と推計される(図表6)。大阪への訪日外客数が今後2倍に増加する可能性がある中で、大阪の商業地の中心である“ミナミ”はどのように変貌していくのか、以下で考察する。

 

[図表6]訪日外客数の推移と予測

 

■御堂筋のさらなるハイストリート化

御堂筋は大阪の中心部を南北に貫く大動脈とも言うべき基幹道路である。御堂筋沿いの心斎橋界隈には、ラグジュアリーブランドの旗艦店舗が集積し、沿道の銀杏並木とともに高級感のあるハイストリートとなっている。近年、日本人に加えて外国人旅行者の往来が増加しているために、店舗の新規出店ニーズが増えている。今後控えている複数のプロジェクトは、御堂筋のハイストリート化をさらに促進すると考えられる。

 

2018年3月、大阪市は御堂筋歩道化構想を発表した。2025年の万博開催までに現在の6車線のうち側道2車線を開放して歩道空間とし、2037年には車道をすべて歩道化する。フランス、パリのシャンゼリゼ大通りを意識し、御堂筋を世界中から人を呼び寄せる目抜き通りにしようとしている。これに合わせて民間のプロジェクトも始動している。大きな変化をもたらすと考えられるプロジェクトは[図表7]の通り。

 

出所:CBRE、2019年7月
[図表7]2020年までに大阪・ミナミで行われる主な大型開発 出所:CBRE、2019年7月
 

「大丸」は、日本を代表する老舗百貨店の1つである。中でも「大丸心斎橋店」は最も売上の多い旗艦店である。100年近い伝統があり、建物も貴重な建築物として”ミナミ”のランドマーク的存在である。この「大丸心斎橋店」が建て替え、改装によって大きく変貌する。「大丸心斎橋店」は、「本館」、「北館」、「南館」で構成されており、「本館」は建て替え、「北館」と「南館」は改装する。「本館」は、低層階は従前建物で使用されていた希少で重厚感のある外壁が残され、ラグジュアリーブランドを意識したファサードとなる。複数のラグジュアリーブランドが出店し、御堂筋のハイストリートとしての景観的調和に大きく寄与すると考えられる。

 

「WOSAKA」は、世界中でホテルを運営するマリオット・インターナショナルが「Wホテル」のブランドで運営するラグジュアリーホテルである。“ミナミ”では訪日客の増加を背景に、近年、ホテルの開発ラッシュが続いている。

 

しかし、その大半は画一的な宿泊主体型のホテルである。”ミナミ”周辺のラグジュアリーホテルは、本町のセントレジスホテル大阪、難波のスイスホテル南海大阪しかない。大阪のインバウンドは年間1,000万人を超え、その70%以上が中間層中心のアジアからの来訪者である。「WOSAKA」が開業することで“ミナミ”に滞在する層の幅が広がり、とりわけ富裕層の割合を高めるだろう。

 

このことにより、富裕層を対象とするリテーラーの新たな出店が増加する可能性が考えられる。「WOSAKA」は、予定地周辺に既に集積している高級車のショールームや高級時計店などとともに、御堂筋のハイストリートとしてのイメージをさらに高めることになろう。

 

「心斎橋プラザビル/心斎橋フジビル」は、御堂筋と長堀通の交差する新橋交差点の北東の角地で、視認性が抜群の”ミナミ”心斎橋屈指の好立地である。「心斎橋プラザビル」は、「本館」、「新館」、「東館」の3棟で構成されており、「本館」にはルイ・ヴィトン、「新館」にはカルティエ、「東館」にはDIESELの旗艦店が入居している。「心斎橋フジビル」は「新館」と「東館」に隣接している。

 

現時点で「心斎橋プラザビル/心斎橋フジビル」の建て替え計画は明らかとなっていない。しかし、すべてのビルが竣工後20年以上経過しており、一部は築45年の建物もある。そのため、近い将来の一体開発が視野に入っていると推察される。一体開発が進めば、現在の入居テナントのようなラグジュアリー店舗の旗艦店の集積が一段と高まる。

 

加えて、敷地面積から想定される建物の規模に鑑みると、上層階には大規模のホテルが誕生する可能性が高い。新たな“ミナミ”のランドマークとして、御堂筋のハイストリートとしてのイメージを高めることにつながると考えられる。

 

■“ミナミ”の人の流れの変化、拡大

大阪の商業地の中心である“ミナミ”は、心斎橋と難波を中心に形成されてきた。最近は、“ミナミ”の人の流れが、その中心である心斎橋・難波よりもさらに南の恵美須町や新今宮方面にまで広がる動きがみられている。

 

この背景としては、大阪の代表的な観光資源の一つである“通天閣”や“あべのハルカス”が近いことや、世界的にも人気の高い日本のアニメやゲームなどの店舗の集積する日本橋からのアクセスの良さが挙げられる。恵美須町や新今宮は、大阪の地元住民や多くの日本人が観光として訪れるエリアではない。

 

しかし、多くの外国人旅行者からは、様々な観光スポットへの交通アクセスが良く、廉価な宿泊施設が多いエリアとみられている。外国人旅行者の消費行動がモノ消費からコト消費に変化していることとも相まって、今後も、“ミナミ”における人の流れはさらに変化・拡大していくだろう。

 

今後、“ミナミ”における人の流れの変化・拡大をさらに後押しするとみられる計画は[図表8]の通り。

 

出所:CBRE 2019年7月
[図表8]大阪ミナミ地区における、今後の主な開発 出所:CBRE 2019年7月

 

星野リゾートは、OMOブランドのホテルを2022年4月に開業することを決めた。大阪の下町風情を体現できるようなライフスタイル型のホテルとする計画である。南海電気鉄道は、中期経営計画でなんば中心のまちづくりを積極的に行うことを表明している。具体的には「南海なんば」駅から南に延びる「なんばEKIKAN」を核とした周辺開発、「新今宮」駅前に外国人就労支援・交流拠点を創設することを決めている。2019年6月、同社は星野リゾートの手掛ける「OMO7大阪新今宮」の開発に対して、出資することも決定した。

 

[図表9]“ミナミ エリア開発 MAP

万博とIR「夢洲」エリア=「ニシ」

2018年11月、2025年の万博開催地が大阪に決まった。開催地は大阪の最西部、大阪湾に浮かぶ人口島「夢洲」である。「夢洲」は、2018年7月に可決したIR実施法案に基づいて日本で整備される統合型リゾート(IR)の最有力候補地にもなっている。

 

現在の「夢洲」は、コンテナターミナルがあるのみである。交通アクセスは、JR桜島(ゆめ咲)線「桜島」駅もしくは大阪メトロ中央線「コスモスクエア」駅から、バスで10分弱である。大阪のターミナル駅である「大阪(梅田)」駅、「難波」駅からは30~40分程度の時間を要する。

 

今後は、大阪中心地をはじめとする関西各地と夢洲とを結ぶ様々なインフラ整備が進むことが明らかになってきている。JR西日本は、桜島(ゆめ咲)線を延伸し、2030年頃を目途に大阪(梅田)から直通でアクセスできるようにすることを計画している。一方、京阪電気鉄道は、中之島線を延伸して京都から乗り換えなしでアクセス可能とすることを構想している。大阪メトロも中央線の延伸を予定しており、2024年を目途に心斎橋・難波方面からのアクセスが向上する。中央線と相互乗り入れをしている近畿日本鉄道も、奈良から夢洲へ乗り換えなしでアクセス可能とすることを検討し始めている。

 

このように、夢洲エリアの開発とともに、鉄道ネットワークも大きく拡大する見込みである。大阪メトロは統合型リゾート(IR)の誘致決定を前提として、新駅「夢洲」駅で大規模開発を行うことを表明。高さ50階を越えるタワービルで、商業やエンターテイメント施設、ホテル、オフィスの複合施設となる計画である。投資規模は1千億円超となると報道されている。同社は、大阪メトロ御堂筋線、中央線の主要駅をリニューアルすることも表明している。「夢洲」と“キタ”、“ミナミ”との交通利便性が高まることで、エリア間の相乗効果が期待される(図表10)。

 

[図表10]夢洲エリア MAP とインフラ計画

 

■大阪万博と統合型リゾート(IR)の不動産市場への影響について

【大阪万博】

2018年11月、2025年に大阪で万博が開催されることが正式に決定した。日本での万博開催は2005年の愛知万博以来20年ぶりである。テーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」、コンセプトは「最先端技術の実験場」を掲げている。日本および大阪・関西の地域経済の活性化やビジネス機会の拡大で約2兆円の経済効果が見込まれている(2025日本万博誘致委員会試算)。

 

不動産市場への影響

オフィスセクターについては、万博をビジネス機会と考える企業による新規開設や拡張ニーズの増加が見込まれる。とりわけ、今回のテーマ、コンセプトに関連性の高い医薬・製薬業やAIをはじめ最新のテクノロジーを手掛ける企業の需要は高まるであろう。その他、日本を代表する企業約300社がオフィシャルパートナーとして協賛しており、こうした企業による大阪でのビジネス機会の拡大による需要の増加も期待される。2022年から本格化する大阪のオフィスビル供給ラッシュにとって追い風となるだろう。

 

リテールならびにホテルセクターについては、訪日外国人のみならず国内旅行者の増加によるさらなる需要創出が見込まれる。

 

2016年、日本政府は「明日の日本を支える観光ビジョン」を策定し、2020年の訪日外国人旅行者数は日本全体で4,000万人、2030年は6,000万人達成を目標としている。2018年は3,100万人で概ね計画通りに進捗している。訪日外客数の推移と予測(Figure4)に基づいて、大阪府の外国人の延べ宿泊者数を予測すると、2025年の外国人の延べ宿泊者数は、2018年の1,200万人から2,200万人に増加すると推計される。

 

一方、国内旅行者については、2005年に開催された愛知万博における日本人のホテルの宿泊者数の増加率に基づいて推計してみたい。愛知万博の開催期間中の名古屋市の日本人のホテルの宿泊者数は、対前年比で32%増加した。大阪万博においても、同程度以上の増加が期待できると考えられる。

 

1つには、2020年にユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)で新アトラクション「SUPERNINTENDOWORLD™」(マリオカート)が誕生する。USJでは2014年にハリーポッターをテーマとしたアトラクションを導入し、来場者数が2001年の開業以来最多となる1,050万人に達した。新アトラクションは、ハリーポッターを上回る投資規模になることが明らかになっている。

 

また、統合型リゾート(IR)の誘致が決定した場合、大阪府知事、市長ともに2024年の開業を目指すと表明している。これらのことに鑑みると、大阪府における日本人の延べ宿泊者数は、2018年の2,100万人に対し、2025年は2,700万人程度にまで増加する可能性がある(図表11)

 

万博開催期間中、多くの来訪者が万博のみならず、大阪の人気スポットである”ミナミ”にも立ち寄ることが想定される。そのため大阪はリテーラーにとって一段と魅力のある商圏として注目を集めるだろう。また、ホテルについても、供給計画の増加で過剰感が懸念される中、万博開催の正式決定は、需要の増加を後押しする大きな材料となると考えられる。

 

[図表11]大阪府 延べ宿泊者数の予測

 

【統合型リゾート(IR)】

2016年12月にIR推進法(特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律)が成立。2018年7月にはIR実施法(特定複合観光施設区域整備法)が成立し、2019年3月にIR整備にかかわる政令(特定複合観光施設区域整備法施行令)が決定。これを受けて、今後は施設要件などが順次決定される。

 

統合型リゾート(IR)に向けて決定した事項

1.認定される自治体は3自治体

現在、認定区域を目指す自治体は、10程度の自治体が名乗りを上げている。中でも、誘致に対して最も積極的な姿勢を示しているのが大阪と言われている。

 

2.施設のあり方

カジノ、会議場、宿泊施設などが一体となっている施設で、民間事業者により一体として設置・運営される。大阪では世界のトップオペレーターを中心に7事業者が特定複合観光施設を運営したいと表明している(図表12)

 

出所:CBRE 2019年7月
[図表12]大阪IR特定複合観光施設 事業コンセプト参加登録企業 出所:CBRE 2019年7月
 

3.カジノ(ゲーミング区域)に関する規定

ゲーミング区域の床面積の上限は、IR施設の床面積の合計の3%であることと定められている。

 

出所:CBRE 2019年7月
[図表13]主たる施設に対するガイドライン、夢洲計画とシンガポールの比較 出所:CBRE 2019年7月

 

大阪府市IR推進局の構想では、日本最大であるだけでなく、世界水準の競争力を備えたオールワンMICE拠点の設立を目指すとしている。現時点での計画によれば、MICE(国際会議場、展示場)、ホテル、カジノなどがシンガポールのMarinaBaySandsに近いもしくは上回るスケールの計画となっている。

 

不動産市場への影響

旅行者の増加が、リテールならびにホテルセクターに直接の恩恵をもたらすことは言うまでもない。それ以外に、オフィスセクターについても一定の需要増が期待できる。たとえば、大阪市の試算によると、建設を除く雇用だけで年間8~13万人の創出効果が見込まれている。すべての雇用者がオフィスで従事することはないとみられるが、一定のオフィス需要の増加につながるだろう。

 

統合型リゾート(IR)の効果が波及する業種としては、建設・不動産業、ゲーム関連業、通信・ソフト関連業、流通・サービス業が挙げられる。既に大手建設業では、夢洲の万博・統合型リゾートに向けたチームの新規開設や人員拡大の動きがみられている。

 

不動産業についても、新たに開発される事業用不動産において施設管理や運営が必要となる。ゲームや通信・ソフトウエア関連業は、カジノ向けの機器やシステム、セキュリティの開発などのビジネス機会が増えると考えられる。流通・サービス業は統合型リゾート(IR)向けの宿泊や飲食、物販などによるビジネス機会が増えるだろう。

 

 まとめ 

“キタ”(梅田)は、過去20年程度の時間を経て、再開発により大阪のオフィス街の中心となった。梅田での再開発は今後も続き、立地や機能性に優れたビルがさらに集積する。このことで、大阪のオフィスニーズはますます梅田に集中すると考えられる。

 

“ミナミ”(心斎橋)は、外国人旅行者の増加を受けて、これまでの大阪の商業地から日本を代表する商業地へと変化した。心斎橋にはリテーラーの新規出店ニーズが一段と集中しており、今後は心斎橋の周辺部にまで拡大すると考えられる。

 

“夢洲”は、万博開催に加え、統合型リゾートの誘致が決定すれば、インフラ整備の進展とともに、オフィスを中心とする‘キタ’と、商業を中心とする“ミナミ”との相乗効果も期待され、大阪における新たな事業用不動産の集積地となるだろう。

 

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