トランプ大統領の中国に対する制裁関税の意向が表明されたことで、株式、通貨、債券など様々な市場に影響が現れています。今回取り上げる欧州株式は業績面に底堅さは見られる一方、輸出依存度が高いことなどから米中貿易戦争の影響が下押し圧力になる点に注意が必要です。
欧州株式市場:トランプ大統領の制裁関税表明を受け下落
米国時間2019年8月1日にトランプ大統領が課税対象となっていなかった中国製品3000億ドル相当に対し制裁関税を実施する意向を表明した後の欧州株式市場は、米中貿易戦争の経済への影響を懸念して下落しました。
欧州株式を幅広くカバーするSTOXX欧州600指数は2日に2.5%(ユーロベース)程度下落し、主要株式で構成される各国指数は大幅な下落となり、ドイツDAX指数は3.1%、フランスのCAC40指数は3.6%程度それぞれ下落しました。1日の取引時間中にトランプ大統領が制裁関税を発表した米国では、株式市場(S&P500種)が1%弱下落し、2日間で1.6%程度の下落となりました(図表1参照)。
どこに注目すべきか:欧州株式市場、業績、ガイダンス、制裁関税
トランプ大統領の中国に対する制裁関税の意向が表明されたことで、株式、通貨、債券など様々な市場に影響が現れています。今回取り上げる欧州株式は業績面に底堅さは見られる一方、輸出依存度が高いことなどから米中貿易戦争の影響が下押し圧力になる点に注意が必要です。
まず、欧州企業の業績を決算発表で確認します。
欧州企業の4-6月期決算報告の進捗度合いは7月末時点で約3分の1程度です。途中経過ながら4-6月期のEPS(一株当たり利益)は前年同期比小幅のプラスで推移しています(図表2参照)。事前の市場予想では欧州株式のEPSは前年同期比マイナス(各種レポートからマイナス4%程度)が見込まれていたことに比べれば、水準は低いものの、コンセンサスとの比較から底堅いとの評価もできそうです。
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![[図表2]STOXX欧州600指数企業のEPS成長率の推移 四半期、期間:2017年4-6月期~2019年4-6月期、以降予想値 出所:RefinitivのI/B/E/Sデータを参考にピクテ投信投資顧問作成](https://ggo.ismcdn.jp/mwimgs/6/6/640/img_6661c5acf0b14f43da188ae0428c724655083.jpg)
四半期、期間:2017年4-6月期~2019年4-6月期、以降予想値
出所:RefinitivのI/B/E/Sデータを参考にピクテ投信投資顧問作成
欧州株式の業績をセクター別に見ると、景気循環(シクリカル)は素材や、排気ガス規制の悪影響が残る自動車関連など耐久消費財が足かせとなる一方で、公益、ヘルスケア、などのディフェンシブセクターは概ね底堅い動きでした。なお、金融セクターは銘柄別の変動が大きくなっています。
欧州企業の今後について、EPS成長の予想を見ると欧州企業の現段階の見通しでは回復が期待されています。低金利とユーロ安が製造業を下支えする要因と見られます。
ただ、欧州企業の利益変動要因として次の点に注意が必要です。欧州はドイツやイタリアなどオープン経済(外需依存が相対的に高い)である点です。不確実性を高める米中貿易戦争の影響を欧州が受けやすい傾向が見られる中、足元両国の緊張が高まっている点は気がかりです。
欧州の政治リスクも要注意です。例えば、英国の欧州連合(EU)離脱は、英国の新政権のもと、合意なき離脱の可能性が高まったと見ています。グローバル経済への影響について、やや関心が低下したようにも感じられますが、欧州内での影響は依然大きいと思われます。イタリアの連立与党に加え、ドイツでも、メルケル首相の神通力にかげりも見られます。
欧州株式は業績の点で、低水準ながら底堅さは見られますが、地政学リスクには注視が必要と見ています。
当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『欧州株式市場、業績は回復期待も外部要因に不透明感』を参照)。
(2019年8月5日)
梅澤 利文
ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部投資戦略部 ストラテジスト
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