地方に土地を持っている場合、「不動産業者がすすめているし、アパートを建てて、賃貸経営をしてみよう」と考える方もいることでしょう。しかし、昨今の人口減少・一点集中の人口分布を鑑みれば、いくら相続対策とはいえ、最適な方法とは言い難いのが現状です。そこで本記事では、東京アーバンコンサルティング株式会社代表の相馬耕三氏が、「地方土地」有効活用のワザをわかりやすく解説します。

地方の土地を新たな収益物件に組み替える

地方の資産家の場合、代々所有する土地を生かして、その土地の上にアパートを建てて賃貸経営をしている例をよく見かけます。

 

ところが、それでは本当に土地を生かしきれていないケースがあります。生かしきれていないばかりか、建物を建てるために多額の借り入れをしていると、相続対策にもなっていないことが多いのです。では、そのような場合はどうしたらよいのでしょうか。

 

私は土地をそのまま売却し、売却して得たお金で都心部の将来性の高いマンションを購入するといった、資産の組み替えを行うべきだと考えています。その際、更地を駐車場として貸している場合には、一定の規制はありますが事業用買い替えの制度を利用して節税する方法もあります。

 

ある地方の中核都市に住む資産家Bさんの例です。Bさんは大手不動産業者から、アパート経営をすすめられていました。収益が上がり、相続対策にも有効というお決まりの宣伝です。

 

Bさんは「簡単にアパート経営などできるものではない」とは思っていましたが、その不動産業者の立派なパンフレットを見ながら、「資産を運用することも大切だ」と少し興味が湧いていたのです。

 

気になるのは、アパートの建築費を借り入れで賄わないといけないことです。豪勢なマンションを建てるわけではなくとも、不動産業者さんの見積もり試算によると1億4000万円は借り入れないといけません。

 

しかし現在の経済環境では、いくら借り入れをして立派なアパートを建てても、人口の減少している地方都市ではそのうち空室が目立ってきます。よほど高い利回りを期待できる土地でなければ結局は借り入れだけが残り、やがて塩漬け状態の不動産になってしまうでしょう。とはいえ土地を土地のまま持っていてもただ税金を支払うばかりですから、どうにかして有効利用したいという思いはあります。

 

では、Bさんは所有している土地をどのように活用するべきでしょうか。Bさんが所有しているのは、中核都市の郊外にある1000坪超の土地です。土地の一部は近隣のカーディーラーの駐車場として賃貸し、月額60万円ほどの駐車場収入があるとのことでした。

 

いくつかの手法が考えられますが、まずは一戸建て住宅用の分譲から検討してみましょう。中核都市の郊外なので、一戸建ての需要はあり、造成して分譲し、1戸ずつ売却していくことは有効な土地の利用方法に思えます。

 

ただ、詳しく調べてみるとこの地域は容積率の厳しい地域であり、80坪ずつ分譲しても顧客が満足する家を建てられる可能性は低く、売れないリスクがあるということです。そのため、一戸建て住宅地とするなら、分譲予定地としてまとめてデベロッパーに売却したほうがいいという判断ができます。

 

では、不動産会社が持ちかけてきたという賃貸アパートはどうでしょうか。不動産会社の案のひとつは、数棟の社宅向けの賃貸アパート経営を始めるという内容です。しかし、現在の土地だけで1億円以上で売却できるのに、なぜ多額の借り入れをしてまでリスクを負うのかが疑問ですから、あまり得策とはいえません。

 

不動産会社は「6.1%の利回りが実現できます」といっていたようですが、それはあくまで建物価格だけをもとにした利回り計算です。土地の価値まで含めて計算すると2%足らずで、今後の経済の動向によっては返済の金利分も収益として上げられない可能性があります。

 

このように、その土地個別の要因を勘案すると、それぞれの対策が将来的に適切であるか、愚策であるかがある程度判断できます。Bさんのケースで私が最終的に最も有効利用になると考えたのは、土地を売却しての資産組み替えです。

 

1億円以上になる土地の売却額は、都内の1LDK〜2LDKクラスのオーソドックスなマンションにすると3〜4戸は購入できる金額です。借り入れのリスクを冒してまで利回りの低そうな賃貸アパートを建てるなら、土地を売却してその売却益で将来性のある不動産を購入したほうがリスクも少なく、さらに相続対策に生かすこともできます。

 

地方の中核都市に土地を今後持ち続けても、人口減少などの要因を考えれば土地の価格は低下が予想されます。将来の損を未然に防ぐ思い切った発想の転換が望まれます。

「将来性のある不動産」の見極めは、専門家に相談を

こうしてBさんと一緒に都内を回って将来性のあるマンションを選び、購入を決めました。それぞれを賃貸に回せば、建物分を借り入れで賄って建てるアパート経営よりはリスクが少なく収益化できます。

 

さらに、相続については、それぞれのマンションを相続人に渡せば共有を避けることができ、争いごとも起きません。賃貸に回すと事業用マンションとなるので節税効果も期待できます。

 

この資産の組み替えで問題なのは、Bさんのように地方に住む人には東京の将来性のある不動産がどれか、実態がわからないことです。

 

ですから、それを判断できる人に相談する必要があるのです。Bさんの案件は私がコンサルティングしましたが、都心に詳しくない地方の方は、信頼できる不動産会社や、不動産に詳しい友人にまず相談し、情報を収集することをおすすめします。

 

2020年の東京オリンピック・パラリンピックを控えて、どんな不動産が値上がりするのかといった記事が新聞や週刊誌でもよく見られます。一つひとつの記事には私自身、賛成できるものと賛成しかねるものがありますが、そのような記事も参考にはなります。

 

実際にBさんに限らず、地方の資産家は、所有する地方の広大な土地を売却し、都心のマンションを購入するという同様の資産の組み替えを積極的に行っています。その多くは数億円の売却益で、3000万〜7000万円のマンションを数戸購入しています。自分が住むのであれば億ションを買いたいという気持ちも出てくるでしょうが、ほとんどの資産家は他人に貸すことが前提です。

 

そのため入居者が決まりやすい賃料を設定できて、かつ収益力が維持でき、将来性のある立地の物件を選んでいます。特に中古の場合は、しっかりとした管理組合運営をしているマンションであることが重要です。このようなマンションであれば、市場性がありますので売却したいときに売却できます。交通の便が良く、そこそこの環境であれば将来のキャピタルゲインも期待できます。これが土地の所有から利用への大きなポイントのひとつです。都内において賃貸したときの運用利回りは、地域によって異なりますが、グロス利回りで年率4%から6%が相場水準です。

 

地方の方は都心にマンションを購入しても、賃貸をどこに頼むのか、管理を誰がやるのかといった心配があると思いますが、いまはインターネットを使えば自宅からでも情報収集ができ、信頼のおける業者を簡単に検索・比較して選ぶ時代になっていますので、積極的に利用してください。

改訂版 塩漬けになった不動産を優良不動産に変える方法

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相馬 耕三

幻冬舎メディアコンサルティング

バブル崩壊以降、買ったはいいものの収益を生んでいない賃貸物件や、地価の暴落でほったらかしになっている土地を抱える不動産オーナーは多くいます。ソニー生命の不動産整備などを実現してきた経験豊富な不動産コンサルタント…

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