信販会社や消費者金融など、預金業務を行わない金融業者をノンバンクといい、中には事業融資専門のノンバンクも存在します。また、ノンバンク系の事業融資を「ビジネスローン」と言って、他の事業融資と区別することがあります(ただし、事業融資とビジネスローンを同じ意味で使う人もいます)。本記事では、ノンバンク系でビジネスローンする上でよくある疑問を、1つずつ解説します。

ノンバンクに関するよくある疑問

ノンバンクに関するよくある疑問をいくつか紹介します。

 

◆「ノンバンクは危険じゃないの?」

 

今やノンバンクは、中小企業の資金調達に欠かせない存在です。以前はノンバンクの業務運営を否定する意見が一部にありました。金利が高いことや、ノンバンクの利用実績が銀行融資の審査に影響すると考えられたからです。

 

実際、ノンバンクは銀行から借りたお金で融資を実施しますので、銀行よりも当然貸付金利は高くなります。また銀行は、ノンバンクに頼る、すなわち銀行で借りられない相手に対して返済能力に乏しいというレッテルを貼る傾向がありました。しかし、2006年に最高裁で「グレーゾーン金利」を否認する判決が下り、高利貸し業者は淘汰されるようになり、金融業界全体の利息が引き下げられました。

 

ノンバンクの多くも低金利で融資するようになり、利息の見直しも年々進んでいます。また、ノンバンク融資でも保証業務が確立され、安全な形で資金調達できるようになりました。ノンバンクは審査手続きが簡単で、即日融資(ただし、申し込みの曜日、時間帯によっては翌日以降の取り扱いとなる場合があります)に対応するなど積極的な融資を実施しています。

 

◆「返済できない場合、取り立てが厳しいってホント?」

 

返済できない場合、ノンバンクも銀行も取り立て方法はほぼ同じです。ノンバンクだから厳しい、銀行だから甘いということはありません。延滞が続く場合は、法的な手続きに沿って延滞の処理が行われます。信用保証協会の保証で銀行から事業融資を受けている場合には、信用保証協会が銀行に返済します(これを代位弁済と言います)が、その場合には信用保証協会が取り立てを行います。この場合も取り立て方法は同じです。

 

支払いが遅れると督促状を送るほか、電話で返済の確認を行います。電話がつながらない場合のみ自宅を訪問することがあります。それでも支払いが行われない場合、簡易裁判所に支払い督促の申し立てが行われます。銀行でもノンバンクでも、連絡のある延滞に対しては非常に柔軟です。早めに相談を行えば、月々の返済額を減らして返済期間を延ばすなど、無理のない返済方法を提案してもらえます。

 

問題視されるのは、返済しないまま連絡が取れなくなることです。この場合は支払いの意思がないとみなされ、全ての取引が停止されます。今後の融資が受けられないことはもちろん、他社での新しい借入も全て否決されてしまいます。

 

こうなると、超高金利の違法業者しか貸してくれなくなります。延滞や遅延が発生すると、信用情報を著しく損なうので注意しましょう。

 

◆「ノンバンクは破綻しないの? 保証の安全性は?」

 

2008年頃より、多くの消費者金融が次々とメガバンク傘下へ再編されました。ビジネスローン専門業の多くも淘汰されました。現在残っている業者は健全経営をしていると認められる企業ばかりです。ビジネスローンを利用する場合は、信販会社や銀行系列のローン会社と契約を結べば、安全に資金調達が行えます。

 

破綻が不安視されるのは、銀行とのつながりがない小規模の金融業者、町金融や闇金融だけです。取引したい業者が健全かどうかは、金融庁のWebサイトで簡単に確認できます。登録貸金業者情報検索サービスを使うと、正式に登録した貸金業者を検索できます。掲載されていない業者は、違法業者である可能性が高いので注意しましょう。

 

最近は個人間による融資も活発化しています。ここ数年のうちに、インターネット上では多くの個人融資専門サイトが見られるようになりました。しかしネットの中には、健全な出資者と詐欺もしくはそれに近い業者の2種類があります。それには金融庁のような公的なお墨付きはありません。資金調達を焦るあまり、悪質な業者にだまされないよう気をつけてください。

 

◆「ノンバンクの上手な活用法を知りたい」

 

ノンバンク融資は、個人事業主から中小企業まで幅広く使えます。業者によって数百万円までの小規模融資や、1000万円~数億円の大型融資まで、さまざまな事業融資を扱っています。大口の融資を受ける場合は、担保や保証人が必要です。審査を受ける場合も必要な書類が多くなります。

 

それに対して、1000万円以下の融資は必要な書類は少なく、審査も最短の場合で即日、つまり申込当日の融資も場合によっては可能です。

 

◆「ノンバンクは『ブラック』でも使えるの?」

 

「ブラックでも融資OK」という広告をときどき見かけます。ここでのブラックとは、次の状況を指しています。

 

●任意整理で借入を減額した過去がある

●返済を長期間延滞している

●その他、信用情報上に「借入に関する問題」が残っている

 

一旦ブラックになると、事業融資やビジネスローンの利用は難しくなります。厳密には「ブラックリスト」なるものは存在しませんが、信用情報として「返済能力がない」という情報が残ってしまいます。自分の信用情報がどうなっているか不安であれば、信用情報機関に開示請求をするといいでしょう。

 

信用情報の問い合わせ先には、全国銀行個人信用情報センター(KSC)、CIC、日本信用情報機構(JICC)があります。「ブラック」でも事業融資のチャンスが断たれたわけではありません。ビジネスローン専門業者は、赤字や経営などに問題があっても、将来性を判断して融資を前向きに検討する傾向が強いので、融資のチャンスは大いにあります。

 

また、日本政策金融公庫の事業融資は、信用情報機関の情報とリンクせず、面接時の話や事業計画書や預金通帳の数字だけを見て審査を行うため、「ブラック」の状況にあっても融資を受けられる可能性があります。

ノンバンクで借りるメリット

ノンバンクで借りるメリットは多いのですが、大きく分けると以下の3つに集約できます。以下に順に説明していきます。

 

①審査に関して独自のノウハウを持っている

 

ノンバンクは、銀行よりも柔軟な審査を実施しています。これは各業者が銀行にはない独自の審査ノウハウを持っているためです。ノンバンクは、赤字決済や税金の滞納をしている会社にも柔軟に対応してくれます。事業融資の顧客を多く抱えているため、ビジネスに対する柔軟な理解ができるからです。一方、銀行の場合は赤字決済に厳しく、税金の滞納があれば融資は即否決です。

 

②審査から融資実施までのスピードが速い

 

前項と共通しますが、ノンバンクは独自の審査基準を持っているため、融資までのスピードが速いのが特徴です。特にビジネス専門の金融業者なら、最短当日中に審査結果を連絡してくれます。また、実施の融資まで最短で2~3営業日以内に手続きをしてくれるので、急な資金繰りにも冷静に対処できます。消費者金融では銀行系、非銀行系に関わらず即日融資にも対応しています。融資額は1000万円以下に設定されることが多いですが、融資までの速さは金融業者の中では群を抜いています。

 

③年々金利の見直しが進んでいる

 

かつてのノンバンクは金利が高いなど、危険なイメージを伴っていました。しかし、ここ10年の間にノンバンクを取り巻く環境は大きく変わりました。まず、ほとんどのノンバンクは金利の見直しを行っています。

 

そのため以前よりリスクの低い取引が行えるようになりました。また大口融資には低金利が適用されるなど、返済負担の少ない借入が可能となりました。

ノンバンクで借りるデメリット

便利なノンバンク融資ですが、大きく3つのデメリットも存在します。以下に順に説明しましょう。

 

①銀行に比べると金利が高くなりやすい

 

銀行の事業融資に比べると、ビジネスローンの金利はやや高めです。借入額によって変動しますが、銀行の金利が2%からと低金利なのに対し、ノンバンクは実質年率8.0~18.0%となるケースが多いのです。ただし、大手銀行系列の消費者金融では、ローンでビジネスローンを利用した場合、最低で4~6%台の低金利ローンが存在します。

 

②安全性のあやしい業者もある

 

ノンバンクの中には、稀に安全性のあやしい業者もあります。たとえば「町金融」と呼ばれる小さな金融業者はこのケースで、安易に融資を受けるのはお勧めできません。安全な業者かどうかは、金融庁のWebサイトで簡単に確認できます。貸金業者は必ず、金融庁に登録する必要がありますが、悪質な業者は金融庁への登録がありません。また、ネット上の口コミを参考にしてもよいでしょう。

 

③借入の限度額はやや少なめ

 

ノンバンクの融資限度額の平均は「300~800万円」とやや少なめです。1000万円以上の大口融資を受ける場合は、他の担保が必要な融資や、国の借入・自治体の補助金等を検討してください。借入先を組み合わせることも検討しましょう。

100%の融資実施を勝ち取った「賢い事業者の心構え」

ノンバンクからの融資に成功した事業者は、次のようなことを述べています。「ビジネスローンで一番チェックされるのは『経営者の返済能力』です。ビジネスローンは、決して審査が甘いわけではありません。このため、経営者が過去のクレジットヒストリーで問題がないか、税金の滞納がないか詳しく審査されます。一方、返済能力が認められれば、審査は通ったも同然です」

 

他社カードローンで借入があれば、先に完済してから審査を受けるようにしましょう。ちなみに「クレジットヒストリー」とは、クレジットカードおよびカードローンのキャッシング利用歴・返済状況のことを指します。

 

カード会社、消費者金融会社は、全国銀行個人信用情報センター(KSC)、CIC、日本信用情報機構(JICC)の信用情報機関のいずれか1社もしくは複数に所属しており、これらに問い合わせれば「クレジットヒストリー」が分かります。

 

このように言う事業者もいます。「事業内容や業歴、決算の内容も大切ですが、ノンバンクは会社の将来性を重視するため、経営者の人柄や真面目さが審査の可否を決めます。このため、融資担当者に会って話をする機会があれば、きちんとした服装で挑むようにしています。また、電話で話すときにも、きちんとした人間だという印象が与えられるよう努力しています」

 

業歴はノンバンク系なら1年、銀行なら2年以上なければ、融資の可決は厳しいと言えます。ただし、ビジネスローン専門の金融機関なら将来性があると判断すれば、1年以内でも融資をしてくれるケースがあります。ノンバンクからの融資を速くさせる、完璧な書類準備のコツノンバンクからの融資を速く受け取るには、書類を完璧にしておくことです。書類が100%完成されていれば、即日中に結果を受け取ることが可能です。

 

また完璧な書類であれば、融資の額も大きく変わってきます。銀行で事業融資を受ける場合、多くの書類が必要です。たとえば、融資の額が多ければ、第三者保証人や担保に関係する書類も提出します。

 

それに対して、ノンバンクのビジネスローンは必要書類が少なくて済みます。納税証明書や決算書、確定申告書、代表者の身分証明書があれば、ビジネスローンが利用できます。ただし、業歴が浅い場合は、収支計画書や事業計画書の提出が必要なこともあります。このほか、書類の書き方にもポイントがあります。

 

誤字や脱字があると、それだけで書類の印象はマイナスになります。プラスの印象を与えるには誤字脱字がなく、数字の計算まできちんと合わせておく必要があります。間違いは1人では気がつきにくいので、第三者にもチェックしてもらいましょう。

 

また、おかしな日本語を使用すると、融資担当者に経営者としての資質を疑われます。書類の書き方が分からない場合は、専用のフォーマットを使いましょう。分厚い事業計画書を作成する経営者もいますが、専用フォーマットに必要事項を埋めておくほうが簡潔で要領を得ているので、審査が通りやすくなります。何よりも読みやすい書類を意識して作成してください。

 

ノンバンクからの借入は、今ではかなり安全になりました。そして、スピーディーです。またローンの種類が多く、少額融資や大口融資など事業規模に合わせた自由な借り方が可能です。特に銀行からの融資がダメだった場合には、ノンバンクからのビジネスローンで資金繰りが改善できないか検討してみてください。

経営者が知らない 資金調達8つの方法

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福田 拓哉

幻冬舎メディアコンサルティング

「あと1000万円あれば、息を吹き返せるのに・・・」 「300万円あれば、事業が始められるのに・・・」といったことはよくある話です。 こういうときに、いったいどうやって資金調達をしたらいいのでしょうか。 資金調達とい…

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