M&Aは、中小企業の間でも活発になっている
「M&A」という言葉はよく耳にしますが、会社買収というイメージが強く、それ以上はよくわからない、という経営者もいるのではないでしょうか。そこでM&Aの“超”基本的なことをまとめてみました。
まずM&Aとは、Merger and Acquisitionの略で、会社の「合併」と「買収」のことをいいます。2000年始め、大手会社がM&Aを行ったことによって、日本でM&Aの文化がどんどん浸透し、今では中小企業間でも活発になりました。
中小企業庁によると、2017年の取引数は3,000件を超えました。またM&Aは大企業が活用しているイメージが強いですが、実は中小企業において、新規で子会社を立ち上げるより、M&Aによって会社を買収し子会社化するほうが多くなっています。大企業よりも実は中小企業によるM&Aの実績が多くなっているのです。
では、M&Aには、どのような種類があるのでしょうか。大きく以下6つの種類があります。それぞれの方法については、またの機会に説明します。
1.売手会社の株式をすべて買手会社に譲渡する「株式譲渡」
2.売手会社のすべての株式を買手会社の株式と交換する「株式交換」
3.買手会社が新しく会社を立ち上げて、売手会社の株式をすべて移転させる「株式移転」
4.売手会社の事業を買手会社に譲渡する「事業譲渡」
5.売手会社を分割して、分割した部分を買手会社に移転する「会社分割」
6.売手会社と事業を統合し1つの会社になる「合併」
M&Aにおける売手と買手のメリット・デメリット
M&Aをすることによって、メリットもあればデメリットもあります。まずは売手会社のメリットとデメリットを見ていきましょう。売り手会社のメリットは、大きく下記の4つが挙げられます。
1.経営者の利益の確保
2.事業の継承問題を解決できる
3.事業のさらなる拡大
4.連帯保証などの個人保証解除
一方、売手会社のデメリットは、大きく2つ挙げられます。
1.売却後の運営義務が発生する場合がある
2.事業領域の制限が発生する
続いて、買手会社がM&Aをするメリットとデメリットを見ていきましょう。買手会社のメリットは、大きく4つ挙げられます。
1.シナジー効果を最大化できる
2.会社の成長スピードが早くなる
3.起業リスクを回避できる
4.オーナーとして不労所得を得ることができる
一方、買手会社のデメリットは、大きく3つ挙げられます。
1.簿外債務を引き継いでしまうリスクがある
2.運転資金が不足する場合がある
3.うまく引継ぎができないリスクがある
M&Aを相談する相手は? どれくらい費用がかかる?
一般的にはM&Aを検討し始めたとき、銀行や公認会計士、弁護士、司法書士など相談できる窓口は多いものの、実際に最後の成約まで対応してもらえるのは仲介会社になります(事業承継のニーズが拡大し、M&A市場に参入する仲介会社が増えています)。
続いて、M&Aの際に売買以外でかかる費用を見ていきます。まずM&Aを仲介会社に依頼する場合、仲介手数料が発生します。一般的には、成約価格に対するパーセンテージで決められていますが、なかには着手金が発生する会社もあります。会社によって料金体系が異なりますので、依頼する前にきちんと確認するようにしましょう。
もう1つ考えておくべき費用は、税金です。買手会社の場合、基本的に法人税はかかりません。しかし、事業譲渡の場合、棚卸資産や固定資産を取得した場合、消費税がかかります。計算方法は、売掛金などを除いた「課税資産の譲渡額×8%」で算出します。
売手会社は、譲渡方法によって支払う税金の種類が異なります。個人名義で株式譲渡した場合、「譲渡所得×20%」の所得税が課税されます。なお、 2062年までは2.1%の復興特別所得税も別途課税されます。税金を安くするには、できるだけ譲渡に伴う経費をきちんと計上し、譲渡所得を安くすることが大切です。一方、法人名義で譲渡した場合、「譲渡益×30%」の法人税が課税されます。こちらも税金を安くするには、できるだけ譲渡に伴う経費をきちんと計上することです。
事業譲渡の場合、「譲渡益×30%」の法人税と、売掛金などを除いた「課税資産の譲渡額×8%」の消費税がかかります。
M&A成立まで、どのように進んでいくのか?
最後に、実際にM&Aをする時の流れを、売手会社と買手会社、それぞれの視点で見ていきましょう。まず売手会社は、大まかに下記の流れになります。
1.提携仲介契約の締結
2.企業概要書の作成
3.トップ面談
4.詳細条件調整
5.基本合意契約の締結
6.買取監査(デューデリジェンス)
7.最終契約
8.社員や取引先、銀行への開示
続いて買手会社の大まかな流れです。
1.M&Aのプロに相談する
2.NDA(機密保持契約書)を締結する
3.「提携仲介契約書」を締結する
4.売手会社の詳細資料を検討する
5.トップ面談
6.買収条件の条件調整
7.買取監査(デューデリジェンス)
8.最終契約
9.社員や取引先、銀行への開示
売手会社との流れで被っている箇所もありますが、具体的な作業はまったく異なります。また、M&Aを成約したあとの引き継ぎ、スムーズな運営のために、事前調整を行わなければいけません。
まとめ
今回はM&Aの基本的な事項について説明しました。買手にしても、売手にしても、自力でなんとかするのはもう時代遅れです。お互いのニーズに合ったM&Aをすることによって、会社のさらなる成長につながります。ぜひ、会社の発展のためにもM&Aに対する理解を深め、次への一歩を踏み出してください。