一言で「戸籍」といっても、実は様々な種類がある
戸籍による家系調査をするにあたって、どういう戸籍が取れてどういう戸籍が取れないのか、取得できる戸籍の範囲について説明していきます。まず、取得できる戸籍の範囲といっても大まかに2つの意味合いがあります。1つは「どこまで古い戸籍が取れるのか?」ということ。もう1つは「自分の親族のなかで、どういう人の戸籍が取れるのか?」ということです。
「どこまで古い戸籍が取れるのか?」というのは、さらに2つの意味合いにわかれます。1つは「除籍簿の保管期限が切れると取れなくなる」ということです。もう1つは「戸籍の種類」に関することです。まず戸籍の種類について、下記にまとめました。
・戸籍謄本…現在使われている戸籍です。
・除籍謄本…転籍したり、結婚して新たな戸籍を作ったり死亡するなどしてすべての人物が抜けてしまった戸籍です。この状態になって80年(2010年より150年に延長)で処分されてしまいます。
・改正原戸籍…昭和30年の戸籍法の改正まで使われていた戸籍です。現在の戸籍のように家族(奥様、お子様)だけでなく祖父や兄弟の配偶者やそのお子様お孫様まで記載されています(家制度を反映)。
・壬申戸籍…明治5年に作成された日本最古の戸籍です。現在では取得、閲覧できません。
戸籍にも除籍にも、謄本のほかに戸籍抄本、除籍抄本があったりしますが、専門的な話になりすぎないよう深入りを避けます。要するに「戸籍による家系調査」をするにあたり、「どこまで古い戸籍が取れるのか?」ということに関しては、
・除籍簿の保管期限が切れる前なら取れる
・戸籍の種類でいえば、戸籍謄本と除籍謄本と改正原戸籍が取れる
ということのみ大まかに知ってもらえれば十分です。では次に、親族のなかでどういう人の戸籍が取れるのか?という件です。
親族で「取得できる」戸籍、「取得できない」戸籍
戸籍による家系調査を進めるには現行の戸籍はもちろん、古い戸籍(除籍簿)を取得していかなければなりません。下記、戸籍法の条文には、除籍簿の取得請求をできる人物について書いてあります。
戸籍法第12条の2
除かれた戸籍に記載されている者又はその配偶者、直系尊属若しくは直系卑属は、その除かれた戸籍の謄本若しくは抄本又は除かれた戸籍に記載した事項に関する証明書の交付の請求をすることができる。国又は地方公共団体の職員、弁護士その他法務省令で定める者も、同様である。
要するに、
「除籍簿を取得できるのは、その除籍簿に記載されている人か、その配偶者(奥さんまたは旦那さん)か、直系の卑属か、直系の尊属である」
と書いてあります。つまり家系調査を始めようとする方からみると、
・自分
・父/母
・祖父/祖母
・曾祖父/曾祖母
・子、孫
の除籍簿は取れますよ、ということです。逆にいうと、それ以外の人物(すなわち傍系)、たとえば下記のような間柄の除籍簿は取れません。
・父の兄弟や、その配偶者や子ども
・祖父の兄弟や、その配偶者や子ども
・自分の兄弟や、その配偶者や子ども
では、その方々はまったく判明しないのか、というとそういうわけではありません。たとえば、自分の兄弟姉妹は、父の子どもとして、父の戸籍に記載されています。さらに父の兄弟は、祖父の子どもとして、祖父の戸籍に記載され、祖父の兄弟は、曾祖父の子どもとして、曾祖父の戸籍に記載されています。
また父や祖父の兄弟の配偶者や子どもは、昭和30年の戸籍法の改正まで使われていた、家制度を反映した戸籍には記載されている場合があります。
戸籍による「家系調査」でできる家系図とは?
以上のことを踏まえて、「戸籍による家系調査」から、どんな家系図ができあがるのでしょうか。先祖の足取りや取得できる戸籍の範囲など、運によるところも大きく、戸籍を取ってみるまで、まったくわかりません。一概にはいえませんが、今までの経験から推測できることを説明していきます。まず依頼主を起点に、どれくらい前の代まで遡ることができるか、経験則から表にしてみました。
今まで引き受けた家系調査の依頼や、筆耕・表装のためにすでに作成した家系図を見せていただいた経験から出した数値なので、かなり正確です。ただし、遡る年代に関しては、運によるところも大きいので、本当に取ってみないとわかりません。運によるところというのは、先祖の生きた年数や先祖の足取りによって、戸籍が取れるかどうか左右されるということです。
「もう1年先祖が長生きして除籍簿になるのが遅ければ、保管期限が切れずに取得できたかもしれない」「分家するのがもうちょっと遅ければ、分家前の戸籍を取得できたかもしれない」ということがよくあります。いずれにせよ、とにかく1日も早く古い戸籍を取っておくことが肝心です。
遡れる世代数は3~7代世代ですが、年数でいうと、約150~200年前です。一番古い先祖で、江戸時代末期~明治の初めに生きた方までが判明します。家系調査は、どれだけ遡れるかが一番の醍醐味であり、なるべくたくさん遡れるに越したことはありません。しかし実際に依頼主とやり取りをしていると「それだけではない」と気づかされます。調査結果を渡したあと、依頼主はいろいろ連絡をくれます。
「父母が大変喜んでいる」
「兄弟が欲しがってるんで兄弟の分も送ってほしい」
「この字はなんて読むの?」
「(家系図の入った)桐箱はどこに保管すればいい?」
「妻の分の調査を追加でやってほしい」
「久しぶりにお墓参りに行こうと思うんだ」
「巻物の巻き方を教えてほしい」
「孫ができた、書き加えて欲しい」
などなど……。家系調査の経過報告でやり取りをしているときより、調査終了後のやり取りのほうがずっと多いです。特に、両親や兄弟、家族との間で、家系図のこと、先祖のことを話題にしていることが、本当に嬉しいですね。おそらくそれが一番の先祖への供養です。家系図は調査結果よりも作ったあとにこそ意味を持つのです。
渡辺 宗貴
家系図作成代行センター株式会社代表