公正取引委員会は、独占禁止法および、その補完法である下請法の運用を行っている行政機関であり、内閣府の外局として、位置付けされている。もし該当する違反行為があると思われた場合は、一般の人でも公正取引委員会に申告を行い、適当な措置を採るよう求めることができる。また、事業者は、行おうとする行為が問題にあたらないか事前に相談をすることが可能だ。本記事では、ジャニーズ事務所へ「注意」を行ったとして話題となっている公正取引委員会について取り上げる。

公正取引委員会による「注意」とは?

元SMAPメンバー3人のテレビ番組起用への妨げをめぐり、公正取引委員会がジャニーズ事務所に「注意」を行ったと報道された。独占禁止法違反被疑事件における公正取引委員会からの「注意」とは、どのようなケースであるのか。

 

下記は、公正取引委員会ホームページの「よくある質問コーナー(独占禁止法)」よりの抜粋である。

 

<違反行為の存在を疑うに足る証拠が得られないが,違反につながるおそれがある行為がみられたときには,未然防止を図る観点から「注意」を行っています。>

 

独占禁止法違反被疑事件に関する調査活動(審議)が行われた結果、「注意」を受けたということである。これを受け、ジャニーズ事務所は以下のコメントをホームページに出している。

 

<弊社が公正取引委員会より独占禁止法違反につながるおそれがあるとして注意を受けたとされる報道につきましてご報告申し上げます。

 

弊社がテレビ局に圧力などをかけた事実はなく、公正取引委員会からも独占禁止法違反行為があったとして行政処分や警告を受けたものでもありません。とはいえ、このような当局からの調査を受けたことは重く受け止め、今後は誤解を受けないように留意したいと思います。>

 

独占禁止法違反被疑事件に関する調査活動(審議)は、主に以下4つのいずれかが端緒となり開始される。今回の件に関して、何が端緒となったのかは明らかにされていない。

 

(1)職権探知

(2)一般人からの報告(申告)

(3)「課徴金減免制度」の利用

(4)中小企業庁の請求

 

ちなみに、一般人からの報告(申告)に関しては、以下の情報があると望ましいとされる(公正取引委員会ホームページより抜粋)。

 

<(1) 報告者の氏名,住所,電話番号,電子メールアドレス

(公正取引委員会に報告したことを他人に知られたくないような場合でも,公正取引委員会は責任を持ってその秘密を守っていますので,できるだけ匿名は避けてください。)

(2) 違反の疑いがある行為者の名称,代表者名,所在地

(3) 違反の疑いがある行為の具体的事実について次の事柄

[1]だれが(違反被疑行為主体者,直接の関係者の氏名。例えば,価格協定の会合の出席者の氏名)

[2]だれと共に(共同行為者),

[3]いつ(違反被疑行為の日時),

[4]どこで(違反被疑行為の場所),

[5]なぜ,

[6]だれに対して(違反被疑行為による被害者,相手方),

[7]いかなる方法で,

[8]何をしたか,

[9]独占禁止法第何条に違反していると思われるか,

[10]その他(談合のルール等)>

他人事ではない「下請法」…50万円以下の罰金も

冒頭でも書いたとおり、公正取引委員会では、独占禁止法だけではなくその補完法である下請法の運用も行っているが、こちらは、実は多くの人に関係があり、知らず知らずのうちに違反している可能性がある、気をつけたい法律だ。

 

働き方改革により、副業やフリーランスなどへの外注業務が増えている状況で、親事業者(資本金1,000万円以上の場合は該当する可能性あり)が忘れがちなのが3条書面と呼ばれるものの発行だ。いわゆる発注書である。

 

親事業者は,発注に際して下記の具体的記載事項をすべて記載している書面(3条書面)を直ちに下請事業者に交付する義務があるとされる(公正取引委員会ホームページより抜粋)。

 

<【3条書面に記載すべき具体的事項】

(1) 親事業者及び下請事業者の名称(番号,記号等による記載も可)

(2) 製造委託,修理委託,情報成果物作成委託又は役務提供委託をした日

(3) 下請事業者の給付の内容(委託の内容が分かるよう,明確に記載する。)

(4) 下請事業者の給付を受領する期日(役務提供委託の場合は,役務が提供される期日又は期間)

(5) 下請事業者の給付を受領する場所

(6) 下請事業者の給付の内容について検査をする場合は,検査を完了する期日

(7) 下請代金の額(具体的な金額を記載する必要があるが,算定方法による記載も可)

(8) 下請代金の支払期日

(9) 手形を交付する場合は,手形の金額(支払比率でも可)及び手形の満期

(10) 一括決済方式で支払う場合は,金融機関名,貸付け又は支払可能額,親事業者が下請代金債権相当額又は下請代金債務相当額を金融機関へ支払う期日

(11) 電子記録債権で支払う場合は,電子記録債権の額及び電子記録債権の満期日

(12) 原材料等を有償支給する場合は,品名,数量,対価,引渡しの期日,決済期日,決済方法>

 

3条書面以外にも親会社の義務はある。本記事では詳細は省くが、しっかりと確認されたい。

 

上記の書面交付違反に関して、下請法の罰則では、会社のみならず、実際の違反行為者にも50万円以下の罰金が課せられる。会社の仕組みに従って業務をこなしていたら、知らずに違反になっていた……ということも考えられるので、注意しよう。

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