構造的に「お金のあるところ」を知っている?
かんぽ生命と日本郵政による保険商品の不適切な販売が問題となっている。両社の社長は、顧客に不利益となる契約を勧めていたことを認め、10日、謝罪した。
金融商品に関する知識は、売る側と買う側で差が大きく(そもそも生命保険などの保険商品が金融商品に属することさえも知らない人が多い)、販売や勧誘には許可が必要である。
顧客の不利にならないことを前提に「ルールを守って」販売・勧誘することを条件として、金融機関はその許可を得ているのだが、かんぽ生命と日本郵政は、そのルールを逸脱してしまったというわけだ。
ルールを逸脱した金融機関というと、最近では、スルガ銀行の事例が記憶に新しい。こちらは不正融資の問題で、書類の改ざんまで行っていたのだが、問題の本質は変わらない。金融機関にはびこる「ノルマ主義」である。
金融機関の営業マンは、「もっと売れ」「なんで売れないんだ!」と上司からこっぴどくやられる。なぜ金融機関の営業チームは、時代錯誤なイケイケのノルマ主義になってしまうのか? これは「どの顧客がどれくらいお金を持っているか」を知っていることが要因の一つかもしれない。顧客の資産状況を知っているとすれば、「売れるはずだろう!」と営業に厳しいノルマが課せられることも想像にたやすい。構造的に「お金のあるところ」がわかっているわけだから、売れないのは営業の責任というわけだ。
「2,000万円問題」で色めきだつ金融業界が危ない
スルガ銀行の例をつなげると、融資で儲けられなくなった今、生き残りの策の一つとして、保険や投資信託の販売で頑張るしか手はないだろうが、はたして営業環境は改善されているのか。問題を起こしたばかりであるから、まだ内部統制をしっかりと行っている方であろうと期待するが、油断はできない。
他の金融機関はどうか。金融庁による「老後2,000万円不足」レポートがメディアで報じられたことにより、ここぞ!とばかりに色めきだち、投資信託の販売に力を入れる可能性もある。内部で営業にどれだけプレッシャーがかけられているか……。続く金融機関の不祥事を読むと、不安は増すばかりである。
何もしなければ老後資産は不足すると煽られ、金融機関の勧めてくる商品にも安心ができない(2019年6月には株式会社ゆうちょ銀行が、高齢者に投資信託の不適切な販売をしていたことが発覚している)とリスク喚起する声もある。顧客側が資産防衛を考えた場合、何か打つ手はないのだろうか。
既存の金融機関以外の「独立した立場」にいるIFA
金融庁は、金融商品に関して販売会社とは別の独立した立場で顧客にアドバイスできる存在の必要性を提言しており、2004年4月に金融商品仲介業(当初は証券仲介業)制度が導入されたことで、日本でもIFA(Independent Financial Advisor/独立系ファイナンシャルアドバイザー)が登場したが、まだ一般的にはあまり知られていない。
IFAは特定の金融機関の従業員ではないので、「会社の営業方針には縛られない」。また、顧客の利益を優先した商品選択をする…という当たり前の提案が可能な(というより、リレーションを考慮すると「必須な」)立場にいる。
IFA個人の能力差、ネット取引と比較した際の手数料…などIFAに相談するデメリットもあるが、そもそも選択肢として「あまり知られていない」という現状は改善すべきであろう。ちなみにアメリカでは、投資信託等の販売に携わる人々の約半分がIFAになっており、今回のような問題が起こりにくい環境が醸成されている。
金融庁は、問題のある金融業者への「処分」以外にも、状況改善への施策もいろいろと講じている。こうした有用な情報が「知る人ぞ知る」とならぬよう、メディアも報道の姿勢を見直すべきかもしれない。