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第2次モディ政権の19年度予算案を受けた市場の反応を見ると、株式市場(S&PBSEセンセックス指数)は下落、失望感が示されています。為替市場の反応は落ち着いています。一方、債券市場は19年度予算案を好感し国債利回りは低下(価格は上昇)しました。

インド政府:19年度予算案を公表、投資主導の成長が示唆される

インド財務省は2019年7月5日に2019年度(19年4月~20年3月)の予算案を発表しました。2期目に入ったモディ政権で経済のかじ取りを担うシタラマン財務相が議会で予算演説を行い、海外からの直接投資に関するルールを一段と緩和することなどが表明されました。

 

歳出総額は27兆8千億ルピー(約43兆円)で、前年度予算から13%増えています。鉄道などインフラ投資に今後5年で100兆ルピーを投じ、景気の底上げを目指す意向です。

どこに注目すべきか:19年度予算、自社株買い、インフラ投資

第2次モディ政権の19年度予算案を受けた市場の反応を見ると、株式市場(S&PBSEセンセックス指数)は下落、失望感が示されています(図表1参照)。為替市場の反応は落ち着いています。一方、債券市場は19年度予算案を好感し国債利回りは低下(価格は上昇)しました(図表2参照)。

 

[図表1]インドルピー(対ドル)とS&PBSEセンセックス指数 日次、期間:2018年7月8日~2019年7月8日 出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成
[図表1]インドルピー(対ドル)とS&PBSEセンセックス指数
日次、期間:2018年7月8日~2019年7月8日
出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成

 

[図表2]インド国債利回り(2年、10年)の推移 日次、期間:2018年7月8日~2019年7月8日 出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成
[図表2]インド国債利回り(2年、10年)の推移
日次、期間:2018年7月8日~2019年7月8日
出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成

 

まず、19年度予算案を受け、小幅ながら株式市場が下落した要因を考えると、全体的にやや引き締め気味な点が挙げられます。例えば、今回の予算案における財政赤字対GDP(国内総生産)比率は3.3%となっています。2月の暫定予算時点では3.4%が示されていました。

 

歳出総額は前年度予算から13%増えてはいるものの、対GDP比率で財政赤字を抑制する姿勢です。シタラマン財務相の予算説明でも示されたように、8%以上の成長で分母を引き上げる意向とは見られますが、現在5%台の成長率を引き上げる道筋は不透明です。

 

 

また、5月の総選挙で農民などから不満が高かったことから、財政拡大を目指すと見られていましたが、財政赤字目標は緊縮方向となりました。この調和を図るため、インド政府は、予算配分で農家への支出を手厚くする一方で、歳入の増加を予算案に含めています。例えば、資産売却に伴う収入目標を2月の暫定予算時点から引き上げたほか、しわ寄せが株式市場にも及ぶ可能性があります。財務省は自社株買いに対して課税をする予定で、今後の展開次第ながら、配当(既課税)よりも税制上有利と見られていた自社株買いに慎重となる可能性も考えられます。

 

インフラ投資として、道路や鉄道整備を打ち出し成長の基盤を示しています。ただ、5月の選挙での公約「インフラに5年で100兆ルピー」の再表明と受け止められ、新鮮味の点で株式市場が盛り上がらなかった可能性が考えられます。

 

次に、債券市場は19年度予算案を受け利回りが低下しており、好意的に受け止めています。株式市場にあまり評価されなかったやや緊縮的な財政姿勢がプラスと見られます。

 

また、予算演説でインドとして初となるグローバル債の発行計画を表明しました。国内の債券市場で財政赤字穴埋めのための国債発行圧力が和らぐ可能性がある点もインド国債市場は好感したと見られます。ただ、過去最高の7兆1000億ルピーを借り入れる計画について、借入目標額に変更はないことも明言しており、債務負担が重い点に注意は必要です。一部に不満は見られますが、財政緊縮とインフラ投資拡大などによる中長期の成長路線はインドの現実に沿った内容で、モディ政権の方向を示したものと評価しています。

 

 

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当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『「株式市場失望」「債券市場好感」…インド19年度予算案』を参照)。

 

(2019年7月9日)

 

 

梅澤 利文

ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部投資戦略部 ストラテジスト

 

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