最近やや注目度が低下気味な印象であった雇用統計ですが、非農業部門雇用者数が市場予想を上回り米国景気の底堅さを示したことで、米国債利回りは大幅に上昇(価格は下落)しました。過度な利下げ期待に疑問を投げかける面もありますが、賃金上昇率は緩やかでインフレ圧力を高める懸念は低く、7月のFOMCを控え、適度な利下げ姿勢は維持されるものと見ています。
米雇用統計:非農業部門雇用者数が市場予想を大幅に上回り過度な利下げ期待に疑問も
米国労働省が2019年7月5日に公表した、6月の非農業部門雇用者数は前月比22.4万人増と、市場予想(16.0万人増)、5月(7.2万人増と速報値7.5万人増から下方修正)を上回りました(図表1参照)。
家計調査に基づく6月の失業率は3.7%に上昇し、市場予想(3.6%)前月(3.6%)を上回りました。平均時給は前年同月比3.1%増と、市場予想(3.2%)を若干下回り、前月比では0.2%増と、市場予想(0.3%増)、前月(0.3%増と速報値の0.2%から上方修正)を下回りました。
どこに注目すべきか:非農業部門雇用者数、労働参加率、利下げ
最近やや注目度が低下気味な印象であった雇用統計ですが、非農業部門雇用者数が市場予想を上回り米国景気の底堅さを示したことで、米国債利回りは大幅に上昇(価格は下落)しました。過度な利下げ期待に疑問を投げかける面もありますが、賃金上昇率は緩やかでインフレ圧力を高める懸念は低く、7月の米連邦公開市場委員会(FOMC)を控え、適度な利下げ姿勢は維持されるものと見ています。
今回の雇用統計は次の点で米国経済の底堅さが示されています。
まず、市場予想を大幅に上回った非農業部門雇用者数です。6月までの過去3ヵ月の平均で見ても約17万人と、労働力人口の増加を上回るペースでの伸びと見られます。
6月雇用統計の公表の前々日に公表された給与明細作成代行会社(ADPリサーチ・インスティテュート)が発表した給与名簿に基づく雇用者数(雇用統計の目安)が市場予想を下回っただけに、雇用統計の下ブレも懸念されていましたが、結果は反対となりました。
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失業率は3.7%と上昇し、数字だけ見れば悪化ですが、これは労働参加率が62.9%と上昇したことに伴う「質の良い」失業率の上昇と見ています。
7月のFOMCについて、セントルイス連銀のブラード総裁が0.5%の利下げに否定的な見解を表明していますが、今回の雇用統計でも裏付けられたと見ています。
ただ、雇用統計にやや気になる面も見られます。例えば、非農業部門雇用者数で製造業は回復しましたが、部門別に見ると電子機器や機械など堅調な部門がある一方で、家具や繊維など軟調な部門も見られます。好調時に見られる幅広い部門の回復とは言いがたい状況です。また、平均時給は前年同月比で3.1%と、市場予想を下回っています。低水準というわけではないものの、賃金が物価上昇圧力となる懸念は低いように思われます。過度な利下げの可能性は遠のくも、既定の利下げ路線に変更は無いと見られます。過去の当局者の言動などから、市場は7月の利下げ幅を0.25%と見込んでいる模様です。
当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『米6月雇用統計、景気の底堅さ示す…適度な利下げ姿勢も維持』を参照)。
(2019年7月8日)
梅澤 利文
ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部投資戦略部 ストラテジスト
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