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「日本経済」と「日本企業の業績」はイコールではない
「日本株に投資しています」という話をすると、必ず聞かれるのが、「日本はこれから人口が減少するし、高齢化も進む国なのに、長期で投資しても大丈夫なのですか?」ということです。
ここですでに誤解があるのですが、日本経済と日本企業の業績(=株価)は、同義ではないということです。
少し考えてみればわかることですが、1990年代以降、経済のグローバル化の進展は加速度的に進み、加えてインターネットで簡単に世界はつながるようになったことで、企業もどんどんと国境を越えて活動するようになりました。それまでは、グローバル企業といえばネスレやコカ・コーラなど欧米の一部の大企業に限られましたが、いまや日本の中小企業や飲食店などでも海外でビジネスを展開する時代です。つまり企業の国籍とビジネス領域が完全に一致するような時代は終わっているのです。
事実、日本の企業でも売上高の過半を日本以外の海外が占めることは珍しくありません。まさに世界は、ヒト、モノ、カネ、サービスが国境を越えて活発に動く時代になってきたわけです。しかし、一方で、金融市場はインデックス(株式指標)が国ごとに分かれていることが多いように、いまだに企業の国籍で語られることが多く、ここに大きな矛盾が発生しています。日本経済がダメだから日本企業はすべてダメだという発想が、大きな罠に陥っているというわけです。
たとえば、それをサッカーで考えてみましょう。仮に、「日本のサッカーは世界ランキングでは上位に入らないよね」と言われたとしても、日本選手が世界トッププレイヤーになれないわけではありません。事実、中田英寿選手や本田選手、長谷部選手、香川選手など、世界のトップチームで活躍する選手も増えてきました。日本サッカーが強くないので日本人選手もダメということではないはずです。同様に、日本経済が停滞気味だから日本企業も全部期待できないということはありません。
手数料商売の証券会社が「外国株」へシフトした理由
また、金融業界では別の理由で日本株や日本株投信を否定して外国株や外国物の投信を勧める動機がありました。
かつて日本株は証券会社にとって有力な収益源でした。株式の委託手数料が自由化される前は、売買金額が100万円でも片道1%の手数料率でしたから、買いと売りの往復で合計2%の手数料を取ることができました。いまとは比べものにならないくらい高い手数料率です。それだけ収益の柱だったので、当時はどの証券会社も株式の営業に力を入れていました。
ところが、1999年に株式委託手数料が完全自由化され、インターネット証券会社の新規参入が進むようになってから、手数料率は画期的に安くなっていきました。その結果、とくに店舗網を持っている証券会社は、インターネット証券会社に比べて業務効率が悪いため、手数料競争に勝てなくなり、株式委託手数料以外のところに収益源を求めるようになりました。その収益源が、投資信託や保険商品、そして外貨建て商品だったのです。
共通点は、株式の委託手数料に比べて高い手数料が取れることです。投資信託の場合、投資家にとっての購入手数料は全額、販売金融機関に落ちますし、投資信託の信託財産から日々、支弁される運用管理費用の一部が代行手数料として、やはり販売金融機関に落ちる仕組みになっています。たとえば購入手数料が3%でも、運用管理費用が年1.6%であれば、大体その半分に相当する0.8%が、代行手数料として販売金融機関に入ります。これで販売金融機関が受け取れる手数料は、初年度は合計で3.8%にもなります。
保険商品についてはブラックボックスな部分もあるので、正確な手数料率はわかりませんが、一般的には販売金融機関に支払われる手数料は円貨建てで1〜6%、外貨建てでは4〜9%程度ともいわれ、国会でもその手数料が高すぎると問題になったこともありました。
外貨建て商品は多岐にわたります。外国債券、外国株式、外国投資信託などがそれです。外国株式の個別銘柄に至っては、ブラジル株などの新興国の場合、為替手数料も含めると片道で9%近く手数料が取れることもあったと聞いています。
証券会社は手数料商売です。とくに株式委託手数料が自由化された1999年以降は、日本株に代えてそれまでと同じかそれまで以上の手数料をもらえる商品に力を入れざるを得なくなりました。そのためには、日本株から外国株へ、投資信託も日本株投信からより手数料の高い外国株投信へと営業の中心を変えざるを得なかったのです。結果として、日本経済はダメだ、日本企業はダメだ、となっていったわけです。
日本経済や日本企業はデフレや円高などで苦しんでいた時代もありましたが、証券会社や銀行などからはそれを増幅するようなセールストークが多く聞かれていたわけです。金融機関は、本来は経済の血液としてお金の循環を良くして自国の経済を良くしていく使命があると思いますが、残念ながらそうした光景はあまり受けられませんでした。
私たちコモンズ投信は、日本企業のなかから長期的に企業価値を向上させていける企業を発掘し投資を続けています。これは、前述のサッカーでたとえれば、国全体のサッカーのレベルは世界的には上位でなくとも、世界で活躍できる選手を中心に集めた日本代表チームをつくって応援しているというイメージだと考えています。
伊井 哲朗
コモンズ投信株式会社 代表取締役社長/最高運用責任者
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