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長生き社会になれば、お金の問題は必然的に発生する
「長期投資って何年のことでしょうか?」
セミナーなどで、こうした質問を受けることがよくあります。これについては、明確な定義があるわけではありません。たとえば「長期国債」という、日本政府が発行している国債で「長期」と名の付くものの償還期限は10年です。そのことから、10年を長期ととらえる人もいます。
あるいは、つみたてNISAの積立期間が20年なので、20年と考えることもできます。また、コモンズ30ファンドが30年目線の長期投資を行なうことからすれば、30年ととらえることもできます。とらえ方は人によってそれぞれですが、私は冒頭の質問を受けたときに必ず申し上げるのが、「とにかく、一生、積み立ててください」ということです。
お正月に親戚一同が集まると、私が資産運用の世界にいることを知っている叔父、叔母から、「ことしは株が上がるのか?」とか「ことしの見通しは?」といった質問を必ず受けます。長年、マーケットを見てきましたので、簡単に見通しなどについては話すのですが、最後に必ずこう付け加えるようにしています。
「相場の見通しは変わっていくものだけど、いつの時代も変わらないのは、積立投資だけは一生続けたほうがいいということ。これがいちばん、資産をつくれるはずだから」
確実に人の寿命は延びていきます。日本人の平均寿命は、平成29年簡易生命表によると男性が81.09歳、女性が87.26歳となりました。いずれも過去最高を更新しています。医療の発展によって、これからもしばらく平均寿命は延びていくものと思われます。
このように長生き社会になると、当然のことですがお金の問題が生じてきます。生活レベルにもよりますが、公的年金だけでは生活が大変という人もいるでしょう。そういう人は将来、不足すると思われる分については、自助努力で補う必要があります。
だからこそ積立投資になるわけですが、ここで出てくる疑問が、「いつまで積み立てればいいのか」ということです。人によっては、「定年になると収入が増えることもないので、運用は保守的に行ないたい。定年を迎える65歳くらいまでにはリスク資産での運用を減らし、確定利回りの金融商品で安定運用したほうがいい」という意見もあります。
私は前述したようにこれからは寿命自体が伸びていくのだから、積立投資は一生続けたほうがいいと考えています。しかし一方で、積み立てているあいだは一部たりとも解約するべきではないといった、ストイックな考え方もよくないと思います。そこまで思い詰めて投資すると、途中で息苦しくなってしまうからです。お金が必要になったときは、積み立てているお金の一部を解約して使えばいいのです。とくに現役時代は子供の教育資金、住宅資金など、それなりに大きな資金需要がありますから、必要なときは解約してください。
ただし、一部解約して使うのはいいのですが、積立投資は継続しておくべきです。そうすれば一部解約によって資金が減ったとしても、また、積立投資によって資金が徐々に貯まっていきます。解約した時点ですべて止めてしまうと、いつか再開しようと思っても、なかなかできないものです。
そういう意味では、私が考える長期投資とは、「使いたいときには一部を解約するけれども、積立投資はずっと続ける」ということになります。
それは、別に自分の子供や孫に財産を遺そうという話ではありません。自分自身の老後を楽しむためです。
最近、企業を取材していてよく耳にするのが、100年人生が現実化してきて、多くの高齢者が消費を抑えはじめているという話です。みんな自分が高齢になったときに、手元のお金がなくなることに恐怖を覚えています。「自分が生きているうちにお金がなくなったら惨めだ」という意識が強まっているわけですが、一生、積立投資を続けていけば、こうした恐怖から逃れることができると思っています。
もちろん、ご自身にお子さん、お孫さんがいて相続できるならば、生涯で使い切れずお金が余ったら、そのまま相続すればいいだけの話です。しかし、基本的には自分自身の人生を楽しむために、積立投資を一生続けていくことをお勧めします。
いちばんのメリットは、時間分散の投資が可能になる点
さて、ここまで散々、積立投資を勧めてきたわけですが、なかには「積立投資なんて無意味だ」という意見もあります。
そのロジックは、「投資信託を買うということは、そもそも値上がりすることを前提にしているのだから、わざわざ毎月定額で買う意味がない。それなら最初から割安な水準で一括購入するべきだ」というものです。
この意見に一理あるのは事実です。たとえば基準価額が1万円から2万円に値上がりしたケースを想定してみましょう。
投資家Aさんは基準価額が1万円のときに100万円分を一括で購入しました。その基準価額が2万円に値上がりしたら、100万円が200万円になるわけですから、100万円の利益が得られます。
対して、投資家Bさんは100万円を5回に分けて買いました。1回あたりの投資金額は20万円です。基準価額は1口=1円で、1万口あたりの基準価額で表示されています。各回の購入時の基準価額と投資金額は次のようになります(カッコ内の数字が投資金額です)。
1回目・・・1万円(20万口)
2回目・・・1万2000円(16万6666口)
3回目・・・1万4000円(14万2857口)
4回目・・・1万6000円(12万5000口)
5回目・・・1万8000円(11万1111口)
このようなシミュレーションで積立投資を行なっていった場合、5回に分けて購入した際の総口数は74万5634口になりますので、1万口あたりの基準価額が2万円になったときの総資産額は、1口あたりが2円になりますから、
2円×74万5634口=149万1268円
になります。これにより、投資家Aさんと投資家Bさんの収益は以下のようになります。
投資家Aさん・・・100万円
投資家Bさん・・・49万1268円
その差は歴然です。ドルコスト平均法は、マーケットが上昇と下落を繰り返しているときには非常に効果的ですが、投資家Bさんのケースのように、基準価額が上昇トレンドにあるときは、徐々に買付コストが上昇してしまうため、一括購入した場合に比べて不利になってしまうのです。
これが、積立投資に対して懐疑的な見方をする人たちの代表的なロジックですが、そのように主張する人たちには、「理屈のうえではそうかもしれないけれど、現実的に、本当に一括で買えますか?」と聞いてみたいのです。
おそらく、一括では買えないと思います。投資に慣れていて、かつ投資に回せる資金も豊富であれば、100万円、200万円の資金を一括投資に回すのも容易だと思いますが、しかし、普通のサラリーマンが、自分の月給の数か月分に該当する金額を、この先、どのように動くかわからないマーケットに一括で投じることなど、まずできません。
たしかに投資するということは、投資先となるマーケットが将来、値上がりするという期待に基づいてはいますが、絶対に値上がりするという保証はどこにもありません。100%値上がりするとは言い切れない以上、その不確定要素とバランスを取りながら投資する手法として、積立投資に勝るものはないと思います。
このように言うと、また別の批判が出てきます。これはとくに高齢者の方に多いのですが、「そんなことを言ったって、もう人生はほとんど残されていないのに、積立投資などというまどろっこしいことをしている時間が、私にはないよ」という意見です。
もちろん、それは重々承知しています。50歳の人なら小口で積立投資も可能ですが、70歳、あるいは80歳といった方の場合、自分の余命と積立投資の金額を考えると、「もうそんなに長生きできないのに、毎月2万円の積立投資なんて、まどろっこしくてできないでしょう。
しかし、積立投資=小口投資ではありません。積立投資のメリットは、小口資金でもコツコツ積み立てていけるということももちろんありますが、いちばんのメリットは時間分散が図れることです。株式にしても為替にしても、あるいは債券にしても、マーケットは常に先行きが読みにくいものです。そういうものに投資する以上、自分の投資判断が常に正しいということはありません。常にマーケットの将来を当てることができる人などいないのですから、タイミングを見極めて一括投資で成功すると考えていること自体、無理があると思います。だからこそ、積立投資が誰にとっても、資産形成の近道なのです。
ですから、シニアの方の場合は、持っている資産の額と年齢を勘案しながら、たとえば手元に500万円あるとすれば、50万円ずつ10回に分けて投資するといった方法をとればいいのです。それは長期積とは少し違いますが、積立投資のメリットを限られた時間のなかで享受できる方法だといえます。大事なことは、「小口資金でも投資できる」ということだけではなく、「時間分散の投資が可能になること」なのです。
伊井 哲朗
コモンズ投信株式会社 代表取締役社長/最高運用責任者
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