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EU主要人事で注目ポストの1つであった次期ECB総裁にラガルドIMF専務理事が指名されました。事前の予想ではフランスやドイツの中央銀行総裁が有力と見られていただけにやや意外な指名となりました。まだ消化しきれない面もあるのかもしれませんが、通貨ユーロなど市場の反応は今のところ限定的です。

ECB次期総裁人事:EU首脳がラガルドIMF専務理事を指名、初の女性総裁誕生の期待

欧州連合(EU)首脳は2019年7月2日に、ブリュッセルで開催してきたEU首脳会議で、国際通貨基金(IMF)のラガルド専務理事を欧州中央銀行(ECB)次期総裁に指名しました。


ラガルド氏はIMFのホームページに声明を公表し、ECB次期総裁に指名されたことを光栄に思うと述べると共に、欧州議会が指名を承認するまでの間、IMF専務理事の職務から一時離れる意向を示しています。

どこに注目すべきか:次期ECB総裁、ラガルド氏、EU委員長、議会

EU主要人事で注目ポストの1つであった次期ECB総裁にラガルドIMF専務理事が指名されました。事前の予想ではフランスやドイツの中央銀行総裁が有力と見られていただけにやや意外な指名となりました。まだ消化しきれない面もあるのかもしれませんが、通貨ユーロなど市場の反応は、次の点で今のところ限定的です[図表1]。

 

[図表1]ユーロ(対ドル)の推移 日次、期間:2018年7月3日~2019年7月3日(日本時間正午) 出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成
[図表1]ユーロ(対ドル)の推移
日次、期間:2018年7月3日~2019年7月3日(日本時間正午)
出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成


まず、ラガルド氏は実績の点では違和感はありません。前IMF専務理事のスキャンダルによる辞職を受けラガルド氏は2011年にIMF専務理事に就任しました。就任直後の欧州債務危機ではEU、ECB、IMFのいわゆる「トロイカ」体制で債務問題に取り組んでおり、EUとの関係は良好と見られます。

 

次に、ラガルド氏は国際会議でリーダーシップを発揮してきており、コミュニケーションが求められるECB総裁と、元アイルランド中銀総裁で新チーフエコノミストのレーン理事と共にECBを運営するのならば、現体制に近いスタイルが維持される可能性があると見られます。またIMF出身のラガルド氏には、財政規律の重視や、新興国対応で見せた金融緩和姿勢を想定する声もありますが、これらは今後の注目です。


なお、やや先走ってしまいましたが、そもそも現段階でラガルド氏はEUからECB総裁に指名を受けただけで、就任するか不透明という点も考慮する必要があります。今回のEU主要人事では、ECB総裁とセットでEU委員長の人選が進んでいます。欧州委員長に指名されたウルズラ・フォンデアライエン氏(ドイツ国防相)の動向が今後の展開を左右しそうです[図表2]。EU主要人事ではバランスが重視されますが、ECB総裁と欧州委員長のポストを、ドイツとフランスで分け合うことが前提で人選が進められていたようです。

 

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図表2:EUの主要人事の現在と今後の予定 出所:各種報道等を参考にピクテ投信投資顧問作成
[図表2]EUの主要人事の現在と今後の予定
出所:各種報道等を参考にピクテ投信投資顧問作成

 

ECB総裁の承認プロセスは欧州理事会が、特定多数決で承認、任命する流れで、ラガルド氏の任命に問題はないと思われます。一方、欧州委員長は欧州議会の承認が求められており、過半数獲得できるか不透明です。欧州議会選挙で最多議席であった欧州人民党(EPP)党首の指名をあきらめ、ドイツ与党所属とはいえフォンデアライエン国防相を持ち出したことに、早くも反対の声が高まっているからです。

 

一方でドイツ(メルケル首相)は何故、ドイツ出身のECB総裁でなく、EU委員長に固執したのか? あくまで想像ですが、欧州を取り巻く問題を踏まえ、委員長ポストを選んだと思われます。

 

 

例えば英国のEU離脱問題です。現在のユンケル委員長が英国と交渉を重ねた重責が、新委員長にも想定されます。就任する10月に英国は離脱しているのかもしれませんが、その後も英国との交渉は必要です。そしてより重要な問題は米国との貿易交渉です。委員長ポストに固執したドイツの戦略が思惑通りとなるかに注目しています。
 

 

当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『次期ECB総裁はラガルドIMF専務理事…市場の反応は?』を参照)。

 

 

(2019年7月3日)

 

 

梅澤 利文

ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部投資戦略部 ストラテジスト

 

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