米中対立の構図に変化は?「追加関税延期」…今後の展開を占う

ピクテ投信投資顧問株式会社が、日々のマーケット情報を分析・解説します。※本連載は、ピクテ投信投資顧問株式会社が提供するマーケット情報・ヘッドラインを転載したものです。

 

米中首脳会談の詳細は、今後の発表を確認する必要はありますが、大枠では追加関税の見送りと貿易協議の再開、中国大手通信機器への禁輸措置緩和、トランプ氏の発言通りなら米国農産物の購入拡大が見込まれます。当面のリスクは回避されたことから市場では円安、株高が進行しています。今後の展開を占ううえで、今回の追加関税延期などの背景を振り返ります。

米中首脳会談:米大統領、中国との貿易交渉再開、追加関税延期、華為の禁輸措置緩和

大阪での20ヵ国・地域(G20)首脳会議に伴い米中首脳会談が実施されました。米トランプ大統領は中国の習近平国家主席との会談後に3000億ドル相当の中国製品への追加関税発動の先送りと、米中貿易交渉の再開で合意したことを表明しました。

 

 

また中国大手通信機器会社に対する禁輸措置を緩和し、米企業の同社への製品売却再開を認めると述べました。

どこに注目すべきか:米中首脳会談、USTR、IMF、大統領選挙

米中首脳会談の詳細は、今後の発表を確認する必要はありますが、大枠では追加関税の見送りと貿易協議の再開、中国大手通信機器への禁輸措置緩和、トランプ氏の発言通りなら米国農産物の購入拡大が見込まれます。当面のリスクは回避されたことから市場では円安、株高が進行しています(図表1参照)。

 

[図表1]日本円(対ドル)と日経平均株価指数の推移 日次、期間:2018年7月2日~2019年7月1日(日本時間正午) 出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成
[図表1]日本円(対ドル)と日経平均株価指数の推移
日次、期間:2018年7月2日~2019年7月1日(日本時間正午)
出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成

 

今後の展開を占ううえで、今回の追加関税延期などの背景を振り返ります。米中首脳会談はあくまで政治問題で、何ら証拠があるわけではありませんが、市場では次の点などから推測して延期の可能性をある程度見込んでいたようにも思われます。

 

まず、米国産業界の追加関税に対する反対が根強いことです。米通商代表部(USTR)は6月17日から25日まで、土日を除いた7日間に中国製品への追加関税(第4弾)の公聴会を実施しました。表明された意見は膨大で、拾い読みではありますが、幅広い反対の声が見られました。

 

 

経済への悪影響も懸念されます。G20前に公表された国際通貨基金(IMF)の報告では、米中の関税合戦が激化すれば、20年の世界経済成長率が0.5%下押しされると警告しています。第4弾の追加関税は、経済への影響が従前の関税(1~3弾)に比べ格段に大きいと見られています。

 

時間の問題も考えられます。米中通商問題といっても、米国農産物購入のような短期的問題から、中国の産業補助金のような長期的な問題まで様々です。中国は産業補助金など核心的利益は譲らない方針である上、10月に建国70周年、その後年末から来年春の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)まで政治的イベントが続く中、時間のかかる問題が後回しにされる可能性もあります。

 

まだ時間があるとはいえ、米国では来年11月に大統領選挙が控えています。トランプ大統領の支持率に底堅さは見られますが、下院で負けた昨年11月の中間選挙と代わり映えしない状況です(図表2参照)。

 

[図表2]トランプ大統領の支持・不支持率の推移 期間:2017年2月10日~2019年6月28日 出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成
[図表2]トランプ大統領の支持・不支持率の推移
期間:2017年2月10日~2019年6月28日
出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成

 

関連は不明ですが最近のトランプ大統領は、イランなどやや唐突感のある問題に取り組んでいるようにも見えます。G20後の米朝会談はサプライズでした。非核化問題に踏み込めるかは不透明ですが、政治的なアピールとしては成果があったと見られます。

 

ライバルの民主党が20人以上の候補者乱立で有権者が困惑気味の中、もしかすると実績を積み重ねた方が得策との判断があるのかもしれません。追加関税はあくまで延期であって、米中対立の構図に変化はないと見ていますが、当面は選挙への効果を重視した政策の選択が想定されます。

 

 

当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『米中対立の構図に変化は?「追加関税延期」…今後の展開を占う』を参照)。

 

 

(2019年7月1日)

 

 

梅澤 利文

ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部投資戦略部 ストラテジスト

 

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ピクテ投信投資顧問株式会社
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日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)

著者紹介

ピクテは1805年、スイス、ジュネーブにおいて会社創設以来、一貫して資産運用サービスに従事し、運用サービスに特化したビシネスモデルを展開してまいりました。信用格付ではフィッチ・レーティングスからAA-の格付けを取得しております(2018年5月末現在)。注:上記の格付はピクテ・グループの銀行部門の債務の信用に対するもので、運用部門や運用能力に関するものではありません

1981年、日本経済や株式市場の調査を目的に東京事務所を設立しました。その後、1987年から機関投資家を対象とした資産運用サービス業務を開始、1997年には投資信託業務に参入し、運用資産総額は1.98兆円となっています(2018年12月末現在)。外資系運用機関の大手の一角として、特色ある資産運用サービスをお届けしております。

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