ピクテ投信投資顧問株式会社が、日々のマーケット情報を分析・解説します。※本連載は、ピクテ投信投資顧問株式会社が提供するマーケット情報・ヘッドラインを転載したものです。

 

今回のリクスバンクの決定内容で注目されたのはフォワードガイダンスです。年末から来年初めという利上げ時期の見通しを後退(後ズレ)させるとの観測もあっただけに、ややサプライズとなりました。そのため、公表後に市場ではクローナが小幅ながら上昇しました。ただ、声明など公表内容を見ると景気への見方などが若干弱気に傾いていると見られます。

スウェーデン中央銀行:市場予想通り政策金利据え置き、フォワードガイダンスも変更無し

スウェーデンの中央銀行であるリクスバンクは2019年7月3日、政策金利であるレポレートを市場予想通りマイナス0.25%に据え置くと発表しました。

 

また、リクスバンクは今後の政策金利の方針を示すフォワードガイダンスにおいて「19年年末または来年初めに」利上げする考えを維持しました。

どこに注目すべきか:フォワードガイダンス、利上げ、成長率予想

今回のリクスバンクの決定内容で注目されたのはフォワードガイダンスです。年末から来年初めという利上げ時期見通しを後退(後ズレ)させるとの観測もあっただけに、ややサプライズとなりました。そのため、公表後に市場ではクローナが小幅ながら上昇しました。ただ、声明など公表内容を見ると景気への見方などが若干弱気に傾いていると見られます。

 

[図表1]スウェーデンの政策金利とクローナ(対ドル)の推移 日次、期間:2017年7月3日~2019年7月3日 出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成
[図表1]スウェーデンの政策金利とクローナ(対ドル)の推移
日次、期間:2017年7月3日~2019年7月3日
出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成

 

日、米、ユーロ圏など世界の主な中央銀行が金融緩和姿勢を示す中、北欧のスウェーデン、ノルウェーなどはタカ派(金融引締めを選好)姿勢を維持し、フォワードガイダンスで利上げを示唆しています(他に英国中央銀行も利上げを示唆していますが、弱気な景気見通しとは不整合です)。

 

米中貿易戦争などを背景に経済の不確実性が高まっていることなどを背景にフォワードガイダンスの利上げ時期を後ずれさせるという市場予想に反し、変更はありませんでした。

 

資産を「守る」「増やす」「次世代に引き継ぐ」
ために必要な「学び」をご提供 >>カメハメハ倶楽部

 

しかし、次の点で、ハト派姿勢も見られます。

 

まず、今回の声明文に海外リスクがスウェーデン景気に影響を与えるリスクと、金融政策による対応の必要性を示唆する文章が新たに付け加えられています。

 

次に、リクスバンクの経済成長見通しが下方修正されていることです。例えば、20年のGDP(国内総生産)成長率予想を見ると、今回は1.6%と、4月に公表した前回の1.9%から下方修正され、景気に対し慎重な見方を強めています(図表2参照)。

 

[図表2]リクスバンクによる主な経済指標と政策金利予想 時点:2019年2月(前々回)、4月(前回)、7月(今回)、2020年の予想 出所:リクスバンクのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成
[図表2]リクスバンクによる主な経済指標と政策金利予想
時点:2019年2月(前々回)、4月(前回)、7月(今回)、2020年の予想
出所:リクスバンクのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成

 

20年の消費者物価指数(CPI)は2.2%と、前回の2.3%から引き下げています。また、声明文の中で、インフレ率の状況に変化があった場合には金融政策変更の必要性がある旨の文章が今回加えられています。

 

その意味では、反対に今回フォワードガイダンスを維持した背景として、足元のインフレ率を懸念した可能性があります。リクスバンクが予想する19年(図表2は20年)のインフレ率は1.8%ですが、先日公表された5月のCPIは前年比2.2%と予想を上回っています。

 

 

また、関連が強い欧州中央銀行(ECB)の動向を見守った可能性もあります。ピクテではECBは7月の政策理事会でフォワードガイダンスを変更、9月に利下げをすることを見込んでいます。リクスバンクの次回の金融政策決定会合は9月5日であるため、ECBの繰り出す政策と市場の反応などを参考にしたいのかもしれません。

 

なお、来年末までの利上げ予想は1回にとどめており、慎重にマイナス金利からの脱却を目指している模様です。

 

 

当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『スウェーデン中央銀行、タカ派姿勢を維持も若干弱気に傾くか』を参照)。

 

 

(2019年7月4日)

 

 

梅澤 利文

ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部投資戦略部 ストラテジスト

 

カメハメハ倶楽部セミナー・イベント

【5/7開催】ABBA案件の成功体験から投資戦略も解説
世界の有名アーティスト「音楽著作権」へのパッション投資とは

 

【5/8開催】使わない理由はない!?
金融資産1億円以上の方だからできる「新NISA」活用術

 

【5/8開催】「相続登記」を放置するとどんなトラブルに?!
2024年4月施行「相続登記の義務化」を専門弁護士がイチから解説

 

【5/9開催】認知症対策だけじゃない!
数世代先の相続まで見据えた資産管理・承継ができる
「家族信託」活用術

 

【5/9開催】「海外法人のつくり方・つかい方」
日本に居ながら自分の「分身」を海外に作るメリットは何か?

 

【5/11開催】相続人の頭を悩ませ続ける
「共有名義不動産」の出口は“売却”だけじゃない!
問題点と最新の解決策を藤宮浩氏が特別解説

 

【5/12開催】良い案件を見つける3つの方策とは?
「日本型オペレーティングリース」投資の基礎講座

 

【ご注意】
●当レポートはピクテ投信投資顧問株式会社が作成したものであり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。
●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。当レポートに基づいて取られた投資行動の結果については、ピクテ投信投資顧問株式会社、幻冬舎グループは責任を負いません。
●当レポートに記載された過去の実績は、将来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません。
●当レポートは信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用目的への適合性を保証するものではありません。
●当レポート中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。
●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。
●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の対象ではありません。
●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資家保護基金の対象とはなりません。
●当レポートに掲載されているいかなる情報も、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録
会員向けセミナーの一覧