相続税法大改正! 基礎から学ぶ「相続税対策」6つのポイント

平成27年に相続税の基礎控除額が4割引き下げられ、平成30年には相続税法の大幅改正が行われました。相続税課税対象の範囲は大幅に広がり、もはや他人事で済まされない経営者や、資産家の方も多いのではないでしょうか。そこで本記事では、相続税回避のための対応策を解説します。

相続税対策① 基礎控除額を大きくすること

相続税の申告・納付が必要なのは、遺産額が「基礎控除額」を上回る場合のみです。そこで、相続税対策として、「基礎控除額」を大きくすることが考えられます。「基礎控除額」は、「三〇〇〇万円+六〇〇万円×相続人の数」で算定されるのですから、「相続人の数」を増やせば、基礎控除額が大きくなります。「相続人の数」を増やす方法として、相続人でない長男の嫁や孫と養子縁組をするやり方があります。

 

この点、「相続税対策」の養子縁組は無効ではないかが問題とされていましたが、平成二九年一月、最高裁判所は、養親になる者と養子になる者が自ら署名・捺印した「養子縁組届」を役所に提出している以上、それが「相続税対策」目的であったとしても、有効な養子縁組となる旨判示しました。

 

しかし、「基礎控除額」を算出する際に法定相続人に含めることのできる養子の数は、相続人の中に「実子がいる場合は一人」、「実子がいない場合は二人まで」という人数制限がなされています。言わずもがなですが、「相続税対策」としてなされた養子縁組も有効であり、養子となった者は、被相続人の法定相続人となり、他の相続人とともに相続権を有します。この相続権を有する相続人になるのには、人数制限はなく、すべての養子が、実子と平等に相続権を有することになります。

相続税対策② 正味の遺産額を少なくすること

相続税対策で大切なのは、とにかく「正味の遺産額」を少なくすることです。正味の遺産額が基礎控除額を下回った場合には、相続税の申告そのものが不要となります。

 

正味の遺産額を減少する方法としては、例えば、不動産は時価の七〜八割で評価されるのですから、現金で不動産を購入することが考えられますし、さらに、その土地・建物を他人に賃貸することが考えられます。

 

しかし、他人に賃貸した場合、借りた人には「借地権」「借家権」が発生し、その土地・建物の利用・処分等が制限されることも理解しておかなくてはなりません。「正味の遺産額」を少なくすることが一番の「相続税対策」になるのですから、被相続人としては、生前に、その財産を使うか、贈与すればよいわけです。

相続税対策③ 暦年課税制度を利用した贈与

「相続税対策」として、一番のお薦めは、「暦年課税」制度を利用した「贈与」を行うことです。税法上、贈与税は、毎年一月一日から一二月三一日までの一年間で、もらった人の受贈額の合計が一一〇万円を超える場合に課税されます。ですから、もらった人の受贈額が各自一一〇万円以内なら、何人の人に贈与しても非課税です。妻と子供三人に、毎年一一〇万円ずつ贈与していけば、一年間に四四〇万円ずつ課税されずに、相続財産を減らしていくことができます。

 

しかし、相続人に対する贈与は、死亡前の三年分は「正味の遺産額」にカウントされますので、高齢の方は、相続人ではない「孫」に贈与するのがよいのかもしれません。

 

贈与は贈る人(贈与者)ともらう人(受贈者)の贈与契約で成り立つものですから、贈与をする際には、必ず、「贈与契約書」を作り、贈与者と受贈者が署名・捺印しておくべきですし、さらに、受贈者名義の預金口座を作り、そこに贈与金額を送金すべきです。そして、その預金口座のカードや届出印を受贈者が保管しておくべきです。

 

毎年一一〇万円の贈与が行われていたとしても、受贈者の知らない、あるいは管理していない預金口座に送金がなされていたとしたら、そのような口座は、名前だけの「名義預金」口座として、贈与者の「遺産」として扱われてしまいます。

 

以上、「相続税対策」として、暦年課税を利用した生前贈与の活用が有効であることを説明してきましたが、我々人間は、何歳まで生きるのかはわからず、長生きしたのはよいが、子供たちに贈与し過ぎて、御自分の生活に困るようになっては元も子もありません。ある方からの相談で、「現在、教授になっている娘婿に、頼まれてさんざん貢いできたが、そのせいで、自分の生活が苦しくなってきたので、娘婿に、いくらか返してくれと言ったが、応じようとしない。何とかならないか」と尋ねられましたが、うまい答えは見つけられませんでした。

 

相続開始前三年以内の贈与は、「正味の遺産額」に組み込まれ、相続税の課税対象になりますが、課税対象に組み込まれるのは、相続人や遺言によって遺産をもらうことになった受遺者に対する生前贈与だけで、それ以外の第三者に対する贈与は、正味の遺産額に組み込まれることはありません。

 

相続税対策として、暦年課税を利用した「生前贈与」の活用を考えるのであれば、速やかに実行した方がよいのかもしれません。なお、婚姻期間が二〇年以上の夫婦である場合には、住宅または住宅取得の資金に関して、二〇〇〇万円までの贈与を行っても、贈与税が課されず、非課税の特典があります。この場合には、その贈与が相続開始前三年以内になされたものであっても、「正味の遺産額」に組み込まれることはありません。

 

さらに、三〇歳未満の子や孫に教育資金として一五〇〇万円を贈与する場合や、二〇歳以上五〇歳未満の子や孫に結婚・出産・育児資金として一〇〇〇万円まで贈与する場合に、金融機関に専用口座を開設すれば、贈与税が課されないという制度もできました。

 

しかし、これらの制度においては、利用者がいったん立て替え払いして、領収書をもらった上で、それを金融機関に提出して払い出しをしてもらうということをしなくてはなりませんし、そもそも、祖父母や親が子や孫に必要な教育資金・生活資金をその都度贈与する場合には課税されないのですから、これらの新しい制度は、「無駄遣い」を助長するものであるとの指摘があります。

久恒三平法律事務所 所長
弁護士

中央大学法学部卒業。東京弁護士会所属。久恒三平法律事務所を主宰し、広く民事・家事・商事・刑事事件に対応している。元東京水産大学講師、日本弁護士連合会交通事故相談センター嘱託。現在、東京地方裁判所民事調停委員、法務省人権擁護委員の他、企業・自治体の顧問弁護士を務める。

著者紹介

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幻冬舎メディアコンサルティング

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