リスクを過度に恐れる日本人の「安定志向」の強さ
成長やリターンにはある程度のリスク許容度(どれだけのリスクを許容できるか)が必要です。現状維持は停滞と同じですから、守るだけではなく攻めることが必要です。
日本人は安定志向が強く、リスクを取ることを過度に恐れる傾向があります。そのためリスクが伴う行為に対して、必要以上に警戒心を抱きがちです。
リスクのある行動が過度に恐れられているのは、「会社に勤めていれば給料は上がり続けるからリスクを取る必要はない」といった、これまでの日本社会の仕組みと無関係ではないでしょう。
現代の日本では、良い大学に入り、新卒もしくは第二新卒で良い企業に入る…といったレールから一度でも外れると、もう取り返しがつかないという社会の仕組みが出来上がってしまっています。
そのため、レールから外れて新しい試みにトライすることや、リスクのある決定をすることが避けられがちです。特に優秀な人やエリートほどリスクを取ることに恐怖を感じて、トライできなくなっています。
不満やストレスはあっても、会社勤めは毎月の収入が保障されているという意味では安定しており、自営業に比べればまだ不安の少ない生活が送れるため、なかなかそこから抜け出す勇気を持つことはできません。
その結果、安定しているが停滞している状態、下にはいかないが上にもいけない状態が、いつまでも続くことになるのです。
もちろん会社勤めを否定しているわけではありません。ただ、せっかくサラリーマンという安定収入が確保されているのだから、資産の何割かぐらいはリスクを取りにいきましょう、ということです。
「リスクを取らないことのリスク」とは何か?
国民がリスクを取ろうとしない国からは、イノベーションは生まれにくいです。実際、今の日本ではIT分野や先端ビジネス、金融の場面などにおいて世界からどんどん遅れを取っている現実があります。そのような進歩のない状況の中で、欧米はもちろん、アジア内でも日本の存在感は急速に失われています。
例えば東南アジアのホテルに行くと、中国や香港の新聞はあるのに日本の新聞が置かれていなかったり、テレビも、中国・香港・台湾・韓国の放送は複数局流れているのに、日本の番組は観られなかったりと、日本の存在感は確実に薄れている、と感じることがあります。日本がアジアのリーダーだと思っているのは日本人だけ。完全に井の中の蛙です。
ただコツコツまじめに働いて安定収入を得ることを良しとする古い考え方のままでは、豊かな生活を手に入れることはできません。「リスクを取らないことがリスク」なのです。
周りの環境が大きく変動したときに、リスクを取ることを恐れて自分を変えないままでいれば、環境の変化に対応できず、ただひたすらマイナスの影響に翻弄されるばかりです。
多くの日本人は、このような「リスクを取らないリスク」に目を向けようとしません。日本という国が衰退していく中で、自ら動くことを放棄する人たちの生活はいずれジリ貧状態に陥ることが避けられないのです。
しかも先に述べたように、これからますます税金や社会保障の負担は重くなっていきます(関連記事『年収1000万円でも…会社員の「手取り」が増えない日本の実態』参照)。将来的にその負担は60~70%にまで膨らむであろうとも言われています。国は、何も文句を言わない(言えない)サラリーマンからひたすら搾取し続けていくでしょう。
私の周りにはマスコミ、金融、商社など、いわゆる「勝ち組企業」と呼ばれる会社に勤めている人たちが多くいますが、彼らですら生活水準は決して高くなく、現状に対する閉塞感や将来への不安を感じているように思います。
今の日本社会では大企業に入ることが成功の道とされていますが、そのレールに乗っている彼らですらそういう状態です。そうでない人が大半の日本社会ですから、日本の現状がどれほど苦しいものであるかは容易に想像できるでしょう。
何度も強調しますが、このような息苦しく出口の見えない状況を打ち破り、お金に不安のない豊かな生活を手に入れるためには、投資を行うことが不可欠になります。しかも、資産運用に関する正しい知識と理解を持って行うことが必要です。
次回から、これから投資を行っていく上で、第一に押さえておきたい基本ポイントについて取り上げていきます。