世に溢れるメディアなどの情報に騙されず、大切な資産を確実に築いていくにはどうすればよいのか? 本記事では、大手証券会社、マスコミ業界の経歴を持つ、株式会社グランディル代表取締役社長 竹田真基氏が正しい情報の見極め方と正しい投資の知識をレクチャーします。今回は、貯蓄型保険について見ていきます。

貯蓄型保険は一挙両得のお得感があると思えるが…

今回からは、主要な運用商品ごとに、そのポイントや注意点などについて詳しく解説していきます。

 

まず初めに取り上げるのは「保険」です。保険は、保険と貯蓄を兼ねたいわゆる「貯蓄型保険」と呼ばれるタイプに加入している人が多いと思います。

 

亡くなったときや重い障害を負ったときに保険金を受け取れる「終身保険」、子どもの学費を確保することを目的とした「学資保険」、一定の年齢以降に年金形式で保険金を受け取れる「個人年金保険」などがその具体例です。

 

このように万が一のときに備えた保障が付いている上に、返戻金という形で将来のための貯蓄としても活用できることから、貯蓄型保険は一挙両得のたいへんなお得感があるように思えます。

 

しかし実際はどうなのでしょうか? 貯蓄型保険は、本当にお得な商品なのでしょうか?

 

欧米では、保険はむしろ運用商品として、つまりは株や債券、不動産などと同じ投資商品の一つという感覚が強いように思います。

 

そのような観点から、欧米人が資産形成の手段として日本の貯蓄型保険を検討した場合、「利回りがあまりにも悪すぎる。運用商品としてはとても使えない!」と感じるのは間違いありません。

 

図表1は、日本の貯蓄型保険と海外の保険商品を比較したものです。

 

[図表1]日本の貯蓄型保険と海外の保険商品の返戻率の比較 日本で買える貯蓄型保険の中で外資は強いが、アメリカの保険会社の利率には遠く及ばない
[図表1]日本の貯蓄型保険と海外の保険商品の返戻率の比較
日本で買える貯蓄型保険の中で外資は強いが、アメリカの保険会社の利率には遠く及ばない

 

「学資保険18年」「個人年金保険30年」「終身保険30年」が日本の貯蓄型保険の一例、「海外保険15年」「海外保険30年」はアメリカの保険商品の一例です。

 

また返戻率とは、支払った保険料の総額に対して受け取れる金額(解約返戻金)の割合を示したものです。例えば、総額100万円の保険料を支払って、110万円を受け取れる場合、返戻率は110%になります。

 

表を見ると、日本の保険で返戻率の高いもので30年後に118%前後です。加入年齢や時期によっても、もちろん異なります。一方、「海外保険30年」は30年後に196%以上になって戻ってきます。

 

このように、同じお金を30年間払い続けていても、日本の貯蓄型保険と海外の保険商品とでは80%以上の差が生まれるのです。ちなみに、「海外保険15年」でも140%以上なので、表に挙げた日本のどの商品よりも返戻率が高くなっています。

 

資産運用の手段として見た場合、日本の貯蓄型保険のパフォーマンスが話にならないほど低いことは明らかです。補足すると、ここでいう海外保険とは、日本でも有名な外資系保険会社という意味ではありません。あくまでも海外に籍を置いている会社のことです。

買った瞬間にマイナススタートになるのが保険商品⁉

日本の保険は、仕組み上、本質的に割高な商品となっていることは知っておく必要があるでしょう。図表2は、保険料の内訳を示したものです。

 

[図表2]「万が一」の生命保険と「将来への蓄え」は別物と考える 出典:ライフネット生命資料を基に作成
[図表2]「万が一」の生命保険と「将来への蓄え」は別物と考える
出典:ライフネット生命資料を基に作成

 

このように、加入者が払う保険料は大きく①純保険料と②付加保険料に分けられます。①は実際に運用に回されるお金で、②は保険会社の取り分(経費や利潤)です。

 

日本の保険商品では、付加保険料は各社自由に決めてよいことになっています(その割合は完全にブラックボックスです…)。

 

つまり、毎月1万円を積み立てても実際に運用に回されているお金は1000円だったり7000円だったりとまちまちで、残りのお金は保険会社の財布に収まっているわけです。

 

分かりやすく言えば、買ったその瞬間にマイナスからのスタートになるのが保険商品の仕組みです。

 

もちろん保険という商品は、将来の不安に対して保険会社にコストを払うものなので、積立額の全てが運用に回されることなどありえません。

 

ただし、同じ金額を積み立てるのであれば、より高いリターンを得られる方が望ましいはずです。そこで今一度、現在加入している保険の内容や返戻金の額を確認してみることをお勧めします。

 

学資保険が良かったのは、日本の金利が高かった時代の話なのですが、いまだにほとんどの家庭で購入されています。ほとんど増えないばかりか、モノによっては減って戻ってくるという信じられない運用商品に、ほとんどの日本人が加入しているのです。中身も知らず、運用利回りも知らず「祖父母も親も入っていたから」「周りも皆入っているから」という理由だけで、こんなものを購入するのは何も考えていないのと同じ、勉強不足です。

 

ちなみに先述の通り、学資保険は投資対象としては論外なので、加入を検討している人は絶対にやめておきましょう。すでに入っている人は解約し、より利回りの良いものに入り直すのがベターです。

9割の日本人が知らない「資産形成」成功の法則

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竹田 真基

幻冬舎メディアコンサルティング

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