相続税の税務調査は、「相続税の納税義務者(相続または遺贈により財産を取得した方)」であれば、誰でも対象となる可能性があります。そして、他の税金(所得税や法人税など)と比較してみると、相続税は税務調査が行われる確率が一段と高くなります。その理由は、相続税の申告件数が所得税や法人税の申告件数に比べてまだまだ少ないためです。そこで今回は、相続税の税務調査について、「強制調査と任意調査」および「税務調査の準備」という観点から、相続税やその税務調査の実態に詳しい、税理士の服部誠が解説します。

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1:相続税の税務調査は「任意調査」

税務調査には、「強制調査」と「任意調査」があります。強制調査は犯罪調査の色合いが強く、通常の税務調査とは異なります。通常の税務調査とは、一般的には任意調査を指しています。ここでは任意調査について触れておきます。

 

◆任意調査における「実地(隣宅)調査」と「反面調査」

 

任意調査の中身について、詳しく見ていきましょう。任意調査には、「実地(隣宅)調査」と「反面調査」があります。実地調査には、大きく分けて次の3つがあります。

 

1.聴取調査……相続人から、被相続人の生活状況、財産状況等について聴取し、申告内容に誤りがないかを確認します。

 

2.現況調査……被相続人の自宅の中の状況について、書類の保管場所、金庫、タンスの引き出し等を確認します。

 

3.現地調査……相続税の申告書に記載された不動産等を確認するために、実際に現地に足を運ぶものです。

 

一方、「反面調査」とは、相続人等の当事者以外の金融機関や取引先などに対して行うもので、文書による照会や直接出向いての調査があります。

 

反面調査は、その相続に関して直接関係のない立場の者が受けるものであり、業務に支障をきたしたり、自分の内容も調査されるのではないかと思い、迷惑だと受け取られることから、無闇に行うものではなく、実施には次のような要件が義務付けられています。

 

● 客観的に見てやむを得ないと認められる場合

 

● 合理的必要性と納税者の私的利益の保護との視点に立ち、社会通念上相当と認められる範囲内で行うこと

 

● 調査の便宜のみにとらわれて、納税者の業務に必要以上の支障を与えることのないように配慮すること

2:相続税の税務調査で相続人が準備すること

相続税の税務調査は、あくまでも任意調査です。通常は、税務署の調査官が何の前触れもなく、税務署の調査官がいきなりやってくることはありません。ほとんどの場合で事前の連絡があり、ある程度、日程等について納税者の都合を配慮してくれます。

 

税務調査の時期としては、おおむね申告書提出後から1~2年ほどの間に行われます。被相続人はとうに亡くなっていて、残された人たちも相続関係の整理がついて落ち着き始めた頃にやってくるので、少し慌てるかもしれません。

 

税務署から連絡があった場合は、できるだけ冷静に対応するようにしてください。まずは、調査官の所属先、名前、調査の日程等を確認し、税理士と相談しましょう(通常、関与した税理士と相続人の代表に連絡が入ります)。

 

そして、調査の当日は、調査を効率的に済ませるために、次のような準備をしておくことをお勧めします。

 

(1)書類の準備

 

相続税の申告に関係のあるすべての書類を整理し、聴取を受ける予定の部屋にまとめておきましょう。あちこちの部屋に分散していると、調査官の要請のたびに取りに行ったり、場合によっては調査官がその部屋まで同行することがあります。

 

● 不動産関係……土地・建物登記済権利証、固定資産台帳、実測図、公図、賃貸借契約書、外国不動産関係書類、等

 

● 過年分申告書……所得税申告書、贈与税申告書、関連する法人税申告書、等

 

● 金融関係……預貯金通帳、印鑑、損害保険・生命保険契約関係書類、ゴルフ会員権、借用書、金銭消費賃借契約書、公社債証券、証券会社関係書類、外国金融資産関係書類、等

 

● その他……相続税申告書控え、遺産分割協議書、遺言書、香典帳、同族会社関係書類(決算書、申告書、株式、貸付・借入関係書類等)、等

 

(2)資産状況の把握(関係者)

 

相続税の税務調査では、家族名義の資産についても尋ねられるのは必至です。そのため、家族その他の相続人の預貯金や所有する不動産について、取得の原資および管理状況などを明確に答えられるように準備しておきましょう。

 

(3)税理士との打ち合わせ

 

相続税の申告に関与した税理士ならば、その内容については把握していますが、申告後に判明した些細な事実や新たに気づいたことについて、改めて相談・打ち合わせをしておくことも有益です。できれば、税務調査当日をイメージしたリハーサルも行っておくことをお勧めします。

 

次回は、実地調査(聴取調査・現況調査・現地調査)の内容について解説いたします。

 

 

服部 誠

税理士法人レガート 代表社員・税理士

 

 

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本記事は、『税理士法人レガート』ホームページのコラムを抜粋、一部改変したものです。

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