今回は、遊びによって鍛えた感覚を用いて新事業を成功させた話について見ていきます。※真面目で誠実という「経営者の鑑」のような社長であっても、事業がうまくいっているとは限りません。本連載では、週6日遊びながらも会社を成長させ、70億円の資産を築いた著者が、「社長が遊ぶほど会社が儲かる」理由と仕組み、「遊びのメソッド」について解説します。

原油価格が暴落すれば他事業にも影響…一か八かの勝負

(運送業からスタートした筆者の会社ですが)ガソリンスタンド業に関しては、運送業から紐づいて始めたものです。1995年あたりを境に、地方のガソリンスタンドはどんどんつぶれていきました。現在でも事業所の数は右肩下がりが続いています。

 

[図表1]ガソリンスタンド数の推移 出典:経済産業省資源エネルギー庁「揮発油販売業者数及び給油所数の推移」(2015年3月)
[図表1]ガソリンスタンド数の推移
出典:経済産業省資源エネルギー庁「揮発油販売業者数及び給油所数の推移」(2015年3月)

 

運送業を続けるなら、どうせガソリンを入れねばならないのですから、「いっそのこと買ってしまおう」という決断をしました。確かに業界的には下火でしたが、その分安く買えましたし、自社の車の給油スタンドとしての役割を担わせれば、利益が出ると考えました。

 

ただし、不安要素はありました。ガソリンの仕入れ値というのは、一介の業者がいくら努力したところで、変わるものではありません。値段は世界のオイルマネーにより大きく上下し、それが事業の業績に直結してきます。

 

そのリスクをなんとかするため、筆者はひとつの勝負にでました。WTI原油先物取引で、向こう10年同じ価格で取引する契約を結んだのです。

 

WTIとは「ウエスト・テキサス・インターミディエート」の略で、西テキサス地方で産出される、硫黄分の少ない高品質な原油のことを指します。そしてWTI先物取引は、原油価格の代表的な指標であり、取引量と市場参加者が圧倒的に多く、市場の流動性や透明性も高いため世界経済の動向を占う重要な経済指標のひとつにもなっています。

 

原油価格は、世界情勢で大きく変動します。向こう10年同じ価格であることなど、まずありません。もし原油の値が暴落すれば、ガソリンスタンドはつぶれ、運送業にも影響がでるのは必須でした。当時の原油価格は、1バレルあたり29ドル。筆者は、「今後原油価格は上がる」と読んで、10年契約に踏み切ったのでした。

 

[図表2]国際原油価格(WTI)の推移 出典:経済産業省資源エネルギー庁エネルギー白書2016
[図表2]国際原油価格(WTI)の推移
出典:経済産業省資源エネルギー庁エネルギー白書2016

 

結果的には、原油価格は1バレルあたり100ドル前後まで伸び、5億円の利益が出ました。これは、リスクを取ったからこそであり、その利益が運送業や大手ガソリンスタンドとの競争力の源ともなりました。

 

なお、こうした勝負勘は、ギャンブルを通じて身につけたものです。また、大胆な挑戦はリスクを伴いますが、そのリスクを取れる度胸というのは、いきなりは身につきません。さまざまなトラブルを経験して初めて、胆力がついてきます。遊びの中で、トラブルを解消する経験を積んでいると、こうした肝心の場面でも物おじせずに勝負に出る、鋼の精神を得られるのです。

 

そして、自分がピンときたら、それに従って行動したほうが、いい結果が待っていることが多いのです。人生においても、行動しなかったことを悔やむより、行動して失敗し、それを次の成功の糧とするほうが、より実りがあるでしょう。

経営を楽しむために、積極的な「M&A」を行った

自動車リース業は、運送業と近いように思えるかもしれませんが、必ずしもシナジーを期待して始めたわけではありません。きっかけとなったのは、「銀行」でした。

 

当時は、運送業が安定していたこともあり、新たなビジネスの種を探して、M&Aに関心を持っていました。

 

そこで日ごろから付き合いのある銀行に「なにかいい事業はないか、あればお金を借りてやってみようと思う」と相談したところ「お金は借りてほしいが、M&Aについては、あまりよくわからない」と言います。

 

「これからM&Aの時代だ、勉強してこい!」

 

そう言ったところ、M&Aの勉強に行ってくれました。もちろん、まずは自分がM&Aに興味があるからですが、銀行員たちにとっても、M&Aについての知識が身につくのですから、プラスになったはずです。

 

そしてその2年間の勉強の成果として、銀行が持ってきたのが、老舗の自動車リースの会社だったというわけです。リース業についてはさほど経験がありませんでしたが、自動車整備や点検には経験がありましたから、それが生かせそうでした。

 

筆者が見ても、その会社は優良に思えました。自動車リース業は大手が乱立している中で、小さいながら着実にシェアを取っていたからです。ここにきっと魅力があると考え、筆者は投資を決意し、3億5000万円で判子を押しました。

 

その後、リース事業を通じてノウハウや人材、業界内のコネクションが得られましたから、自社でも十分、新たなお客が取れるようになりました。このリース事業の経験をもとに自社の中に既にノウハウが蓄積されていた自動車整備や点検も事業に組み込んだ上で、新たに子会社を作りました。

 

自動車リース業は、遊びというより銀行とのやりとりの中で生まれたのですが、「銀行との付き合い方」は、遊びで学んだものです。その後もM&Aを何度か行いましたが、それは主に筆者が「経営を楽しむ」ために行ったもの。新たな世界にチャレンジする楽しさこそ、筆者の人生の原動力のひとつです。


 
谷田 育生

株式会社宝輪 代表取締役社長

 

社長が遊べば、会社は儲かる ―週6日遊んで70億円の資産を築いた経営者のストーリーー

社長が遊べば、会社は儲かる ―週6日遊んで70億円の資産を築いた経営者のストーリーー

谷田 育生

幻冬舎メディアコンサルティング

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