今回は、融資の重要性について見ていきます。※真面目で誠実という「経営者の鑑」のような社長であっても、事業がうまくいっているとは限りません。本連載では、週6日遊びながらも会社を成長させ、70億円の資産を築いた著者が、「社長が遊ぶほど会社が儲かる」理由と仕組み、「遊びのメソッド」について解説します。

事業拡大や設備増強のための融資は「借金」ではない

真面目な社長が必ずといっていいほど目指すのが、「無借金経営」です。世の価値観でも、「無借金経営こそ善である」という風潮が強いように感じます。しかし、本当にそうでしょうか。無借金がいいに決まっている、と盲目的に信じ、借金をしないことで自分を安心させているだけではありませんか。

 

筆者が感じるのは、中小企業は借金を恐れるあまり、成長の機会を逃しているということです。筆者に言わせれば、無借金経営という信仰こそ、会社の呪縛となるのです。

 

借金という言葉はネガティブに使われがちですが、事業拡大や設備増強のために受ける融資は「借金」ではなく、リターンを見込んだ「投資」です。成長のチャンスというのはそう頻繁に訪れるわけではなく、チャンスにどれだけ多くの金額を投資できるかが、その後の企業の成長を左右します。

 

無借金経営を目指すあまり、「返せなかったらまずい」と借金をするのを恐れてしまうと、ここぞという大きなチャンスがやってきても、積極的な投資に踏み切れません。そうして投資ができなくなると、現状維持にこだわるようになり、時代が変化しても過去の成功パターンにこだわり続けてしまって、倒産への道を歩み出します。

 

かくいう筆者も、初めは無借金経営を目指す経営者のひとりでした。事務所は借り物、不動産も取得せず、固定資産もなく、自分が明日「会社をたたむ」と言ったら、あとは従業員に退職金を払って終わり。そういう会社にしたかったのです。その裏には、「会社に人生を縛られたくはない」という思いがありました。会社を継ぎたくて継いだわけではなかったことが、影響していました。

 

しかしある日、お客様に「お前のところは借金もないだろうが、なんの基盤もない、根なし草だな」と言われ、その言葉がいつまでも耳に残りました。なんだか、度胸のなさを指摘された気がしたのかもしれません。

 

「だったら、借金してやろう。むしろ誰よりもお金を使い、お金を借りられる経営者になってやろう」

 

若かったですから、多少意地になっていたところもあったでしょう。ただし、そうして自分の中で借金を肯定してみると、違ったものの考え方ができるようになりました。自分の手元にお金がなくとも、やりたい事業ができる。そこから経営が楽しくなってきました。

 

経営者が、自らの重要な役割である投資を怠っているような会社には、未来はないのです。「借金は悪」という呪縛から逃がれるためには、一度大きく借金をしてみなければなりません。筆者は55歳で28歳の娘に会社を譲りましたが、その際には60億円の借金も併せて渡しました。普通の親なら会社を承継させる際には、借金はゼロにして子どもが困らないようにと考えると思いますが。ここでも筆者は逆を行ったのです。

 

ここで筆者の後継者選びについて触れておきましょう。私には娘と息子がいます。普通なら迷わず息子に家業を継がせるでしょうが、筆者は娘に白羽の矢を立てました。その理由は娘には真面目な社長にはない、商才があると見込んだからです。それを象徴するエピソードを紹介しましょう。

 

娘が大学生の当時、筆者は会社が経営するガソリンスタンドのカードを娘に渡し、通学に使用する車のガソリンを入れることを許していました。ある月を境に給油量が急に増えたのです。そこで娘に確認すると、なんと同級生に自社のスタンドでの給油をすすめ、カードを使って給油し、友人たちには通常の価格よりも安く提供し、料金を徴収。自分の小遣いとして稼いでいたのです。流石に表向きは娘を注意したものの、なかなか見込みのある奴だと感じました。

 

書類に判子を押した際、娘は「これは個人の人生の範疇でどうにかなる額ではない」と思い、かえって社長となる不安が薄れ、腹がくくれたそうです。そして現在も、不動産を中心に積極的な投資を行い、利益につなげています。ちなみに息子は大物で、副社長として後ろでデンと構えています。

お金をたくさん借りると銀行は会社の「財務部」になる

借金をするには、当たり前ですが貸してくれる相手が必要です。そして多くの場合、まずは銀行に借金を持ちかけると思います。したがって、どんどん借金をして投資をしていくには、銀行交渉に成功するというハードルを越える必要が出てきます。

 

バブル崩壊後、銀行の経営方針は大きく転換しました。景気がいい時には、平身低頭してどんどん融資話を持ち掛けてきたのに、バブルがはじけて本当に資金が必要になったら、突然手のひらを返したように冷たく、高慢になり、貸し渋りや貸しはがしを行う……。

 

こうした経験をした中小企業の経営者は、たくさんいるでしょう。それもあり、銀行は「晴れた日に傘を差し出し、雨の日に傘を取り上げる」と揶揄されるようになりました。そうした不信感があっても、やはりお金を借りる必要があれば、時には銀行にへりくだって、頭を下げるしかない……。それが一般的な経営者の認識かと思います。

 

ここではっきりさせておきたいのは、銀行と経営者は、対等の関係である、ということです。お金を貸した企業が利益を上げ、利息が付いて戻ってきて初めて、銀行の利益が上がるのです。貸す側が偉い、というような関係性ではありません。

 

面白いもので、お金をたくさん借りると、銀行はこちらが何も言わずとも、会社の面倒を見てくれるようになります。なぜなら大きく貸している会社が潰れてしまえば、銀行としてもただではすみません。だから大きく貸している会社に対し、銀行は必死で守ろうとしてくれるのです。資金繰りや財務内容などの経営状況を把握した上で財務的なアドバイスをくれたり、いい投資話をもってきてくれます。そうしてその道のプロがくれる情報が、役に立つのは言うまでもありません。

 

筆者個人の話をすると、「預金ナンバーワンは無理だから、借金ナンバーワンになってやろう」と決めて、ひとつの銀行から、あの手この手でお金を借りまくりました。

 

銀行の支店長が、自分だけの裁量で貸し出せる金額は、地方であればせいぜい3億円ほどです。借金が10億円を超えてくると、それが不良債権化したら支店長の首が飛びます。私の借金が8億円を超えるくらいから、その支店は常に筆者の味方となり、こちらが相談せずとも相手から便宜を図ってくれ、情報をくれるようになりました。

 

これが、銀行から借金をする大きなメリットといえます。ただし、それなりの額を借りて初めて享受できるメリットですから、経営者としては「いかにたくさんお金を借りるか」に知恵を絞る必要があります。

 


 
谷田 育生

株式会社宝輪 代表取締役社長
 

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    谷田 育生

    幻冬舎メディアコンサルティング

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