「悪化」を示している令和最初の景気動向指数
さて、本連載は、GDPと人口統計を中心に、気になる中小企業向け統計資料を使ってマクロ的な視野を共に考えてみよう、というスタンスでお送りしております。「景気はいいの?」の日常よくある会話に少しでも寄与できる情報になればいいなあ、と思っております。
関連性と客観性を持てるように2つの資料を使ってクロス分析しています。
今回は、2019年1~3月期四半期別GDP速報(1次速報値)と景気動向指数2019年3月分(速報)を見ていきましょう。
令和元年5月13日内閣府発表の景気動向指数の一致指数の基調判断では「悪化を示している」でした。悪化の定義は「景気後退の可能性が高いことを示す」です。
寄与度のプラスとマイナスを見て思うのは、アメリカ、中国の貿易戦争の影響による輸出関連の会社の低迷やイラン、アメリカの政情不安による原材料高騰不安からの生産調整、そこに働き方改革の残業減少、就職ノマドといわれる就業定着の低下です。
国内ではそれほど感じない民間消費の減退も影響しているのでしょう。みなさん「景気が悪いよ」と言いながらも、「何とか幸せにやってます」と言えるくらいの消費はしているでしょう。
でも、「旅行の数が増えている」とか、「外食にみんなが高級店を使うため、高級店の予約ができない」という感じでもないですよね。
「国民が豊かになる前に徴収を増やせば、統治は崩れる」のは歴史が証明しています。
中小・零細企業は、赤字でも、消費税は売上に関連して課税されます。個人は、所得税だけでなく、社会保険税、住民税と料率や税項目を増やされ、可処分所得は減少傾向にありますね。年金の運用報道も将来の不安を煽ります。
GDPの成長率を根拠に「消費税増税」を納得させるのか
次に令和元年5月20日内閣府発表の2019年1~3月期四半期別GDP速報(1次速報値)を見てみましょう。実質GDP成長率は、年率2.1%、名目GDP成長率は、年率3.3%、過去4四半期(3か月統計の4回分ですから過去1年分)を振り返って、その寄与度も含めて判断すれば、内需も外需も引き下げていないので、1番良い景気の上昇指標と言えるでしょう。
寄与度で財貨・サービスの純輸出(輸出 − 輸入)が伸びていることが、外需が押し上げている要因といえますが、内需も伸びています。
「これなら、国全体が景気が回復していくので、消費税を上げても問題ないだろう」ということになりますが、「ちょっと待て!」ですよね。景気動向指数は「悪化」を示し景気後退局面としながら、GDPは外需が伸びて、ここ5四半期では過去最高の成長率。
同じ内閣府からの統計発表です。経済再生担当の茂木大臣が、記者会見でGDP速報の内容に対する考えを求められ、厳しい顔で対応しているのが印象的でした。その会見には、記者からGDP速報の数値を見て、「本当に国民は景気回復を実感できてると思ってるのか、そんなわけないだろう。この数値を捉えて消費税を上げる根拠にするつもりか」という空気感が漂っている中での会見だったからです。
記者さん達に同感です。一方で景気後退局面としながら、GDP速報値の成長率を根拠に、国民に消費税増税を納得させようとしているのなら、統計資料と、その資料に基づく政治判断は信用できなくなりますよね。
つまり、この2つの資料をクロス分析して、自分自身に落とし込むと、自分自身の置かれている環境(マーケット)と、本質的なものを見極める経験と信念で今を精一杯生きるしかないんだな、と思えませんか。
だからこそ、自分の身は自分で守る。そのためには、理解し難い財務諸表を利率で見ながら経営の舵を取るよりも、資金繰り表で、会社の出納レベルのシンプルな経営ツールで、経営の舵を取るべき時だと思います。「本質に目を向けて、自分を信じて経営する」。これに尽きるような5月でした。