本記事では精神科医兼投資コンサルタント小林武文氏の著書『攻防自在の投資戦略』より一部を抜粋し、「iDeCo」について取り上げる。

かけ金の額に対して15%以上の節税効果が得られる

老後に備えた資産形成の手段として、最近話題となっているものに「iDeCo(イデコ)」があります。iDeCoとは、個人型の確定拠出年金制度のことです。

 

確定拠出年金制度は「DC(Defined Contribution Plan)」とも呼ばれ、2001年10月に始まったもので、これ自体は決して新しいものではありません。このDCには、企業型と個人型の2種類がありますが、個人型の方が2017年1月に「iDeCo」というニックネームを得てリニューアルされ、ほぼ全ての現役世代が加入できるようになったことで注目を集めているのです。ちなみにiDeCoとは、individual-type Defined Contribution pension plan を略したものになります。

 

iDeCoは、個人年金に上乗せして、自分で老後の積み立てをする制度ですが、その積立額(かけ金)には上限が定められています。その上限額は、自営業者、会社員、公務員、専業主婦などで、それぞれ異なるのですが、会社員や専業主婦では概ね月々2万円前後となっています。また、最低5,000円から1,000円刻みで毎月のかけ金を決めることができます。

 

そして、毎月のかけ金には所得税や住民税がかからず、かけ金を投資信託などで運用して出た利益にも税金がかかりません。そのため、かけ金の額に対して15%以上の節税効果が得られることが最大のメリットとなります。この15%以上というのは、所得が高いほど節税効果も高くなるため、人によっては30%以上となることも珍しくありません。

 

一方で、途中で解約したり、お金を引き出したりすることは、原則60歳まで行えません。原則というのは、死亡および高度障害、震災で多大な被害を受けた場合などは、例外的に途中で引き出すことが可能となるためです。しかし、それ以外では不可となっており、これが最大のデメリットであるといえます。なお、毎月の積み立てを停止することは可能で、かけ金の額も年1回は変更することができます。

 

さて、このiDeCoを始めるに当たっては、まず金融機関に専用の口座を開く必要があります。多くの金融機関がある中で、運営管理手数料が安く、取扱商品も多い金融機関としては、SBI証券、楽天証券などが挙げられます。

 

ただ、どの金融機関を選んだとしても、毎年かかってくる信託報酬(運用手数料)の高い金融商品が取扱商品の中に混ざっていることがあるので、そういったものを選んでしまわないように注意が必要です。

 

もちろん、取扱商品の中には、国内外の株式や債券などといった金融商品の他に、定期保険や年金保険といった元本確保型の商品もあるため、こうした商品を選択すれば信託報酬のことを考える必要はありません。

「60歳まで引き出せない」が大きなネックに

ここまでiDeCoについて主だったことを書いてきましたが、普通に考えれば活用に値するよい制度だといえます。実際、iDeCoについては肯定的な意見も多いのですが、筆者としてはあまりお勧めできるものではないといった印象です。

 

それはやはり、iDeCoには原則60歳まで解約や引き出しができないという縛りがあるためです。現在の世界的な金融経済情勢を考えると、不確定要素がかなり多く、60歳まで引き出せないというのが大きなネックになってきます。

 

具体的には、先進国では未曾有の金融緩和状態にあり、欧米では縮小傾向にあるとはいえ、このまま縮小し続けることができるかは甚だ疑問です。また、先進国の財政支出拡大もいつまでも続けられるものとは思えず、どこかで激しいインフレが襲ってくるかもしれません。場合によっては、戦後の日本でも実施されたような預金封鎖や、新しい通貨への切り替えの可能性もないとはいい切れません。

 

そういったことを併せて考えると、たとえ節税にはならなくても、自分が容易にコントロールできる流動性の高い状態で、資金を保持しておく方がよいのではないかと思われるのです。

 

 

 

小林 武文

精神科医・投資コンサルタント

 

 

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