家屋の所有者以外の人が自宅を増築する場合、相続税・贈与税の視点から注意が必要です。たとえば息子名義の自宅を増築する際、増築資金を親が負担して息子名義のままにしておくと、税務上の問題が発生する場合もあります。では、増築後も息子名義のままにしておくと、どのような問題が生じるのでしょうか。また、問題がある場合にはどう対応すればいいのでしょうか。詳しくみていきましょう。相続税やその税務調査の実態に詳しい、税理士の服部誠が解説します。

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不動産の付合と増築をめぐる税務の取り扱い

とくに相続税・贈与税という観点から重要なのは、「不動産の付合」と「増築をめぐる税務の取り扱い」です。
具体的には、次の通りです。

 

(1)不動産の付合

 

不動産の所有者は、その不動産に付属するような形で付着(付合)された物の所有権を取得するものとされています(民法第242条)。

 

このことから、家屋を増築する場合、その増築した部分が独立した一戸の家屋としての構造を有しない限り、その増築部分は“既存の家屋の所有者”が所有権を取得することになります(不動産の付合)。

 

たとえば、子所有の家屋に父が資金を出して増築した場合、増築した部分の所有権は子に帰属することになります。

 

(2)増築をめぐる税務の取扱い

 

父が資金を提供して子名義の家屋を増築した場合、増築部分を区分登記することが可能な構造であれば、増築部分を父の名義にすることで何ら課税関係は生じません。

 

しかし、区分登記できない家屋については、前述の通り、増築部分も本体部分と一体で子名義となります。そのため、父から子に対して増築資金の贈与があったものとみなされ、子に贈与税が課税されることになります。

 

時価1,500万円の家屋に、500万円かけて増築する場合を例に見てみましょう。

 

増築部分(500万円)は、一戸の家屋としての構造を有するものでないため、付合により区分登記することができません。そのため、増築後の家屋全体(2,000万円)が子の所有となります。

 

つまり、子の所有となった増築部分の資金(500万円)は父が全額負担しているため、父から子への贈与が発生し、子に対して贈与税の課税が生じることになります。

贈与税を回避するための方策

子に対する贈与税を回避するためには、以下のいずれかの措置を講じる必要があります。

 

(1)“増築前”に家屋の持分の一部を父に譲渡する

家屋の時価  1,500万円

父の増築費用  500万円

 

増築後の家屋の時価は2,000万円になるため、子と父の持分割合が子4分の3(1,500万円/2,000万円)、父4分の1(500万円/2,000万円)であれば、それぞれの出資に応じた持分となります。

 

そこで、増築前に、子は家屋の持分の4分の1を父に譲渡します。譲渡代金は「1,500万円×1/4=375万円」となるため、父は増築資金の500万円から375万円を子に支払います。子はその譲渡代金375万円で増築費用を支払い、父は残りの125万円を自己の持分の増築費用として支払います。

 

こうすることで、父は自ら負担した増築資金500万円に見合う持分を取得することになり、父から子への贈与はないもの判断されます。

 

(2)住宅取得等資金の贈与の非課税の特例を適用して父から資金の贈与を受け増築する

 

平成33年12月31日までの贈与において、一定の要件を満たす場合には、「住宅取得等資金の贈与に係る贈与税の非課税措置」が適用されます。この制度を活用すれば、非課税で資金の贈与を受けることができます。

 

そこで子は、一定の要件を満たしたうえで、父から増築資金の贈与として資金を受け取ります。なお、家屋は全て子名義のままとします。その結果、「住宅取得等資金の贈与に係る贈与税の非課税措置」が適用され、贈与税は非課税となります。

 

ただし、この非課税措置を適用するためには、所定の書類を添付した贈与税の申告書を期限内にお住まいの所轄税務署に提出することが必要ですのでご留意ください。

 

※要件の詳しい概要は、国税庁のホームページを確認してください。

直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税」国税庁

 

ちなみに、上記の問題は増築だけでなく、改築(リフォーム)でも起こり得ます。そのため、家屋の所有者以外の人が増改築の資金を負担する場合には、あらかじめ注意しておきましょう。

 

 

服部 誠

税理士法人レガート 代表社員・税理士

 

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本記事は、『税理士法人レガート』ホームページのコラムを抜粋、一部改変したものです。

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