なぜ貸し会議室は増えているのか?
不動産を活用して稼ぐ方法は、アパートやマンション経営だけに限りません。最近、駅前のビルで「貸し会議室」や「ワーキングスペース」をうたっているものを見かけるようになりました。多様な働き方が台頭し需要が増えているからこそ成立する商売なのかもしれませんが、そうした不動産活用は果たして儲かるのでしょうか。
昨今の働き方改革の進展やフリーランサーの増加により、これまでのようにオフィスに常駐するのではなく、出先で仕事をする人が増えてきました。また、ITツールの発達でテレワークやリモートワークが可能になったことや、経費削減でオフィスをスモール化した結果、必要な場合に貸し会議室を借りて、会議や研修、勉強会や作業をする会社も増えています。シェアリングエコノミーは、さまざまな分野で大きな広がりを見せています。
以前は、社外で会議をしたくても、なかなか適当な場所がなく、喫茶店やカフェなどを利用するケースがほとんどでした。ただ、こうしたオープンスペースは騒がしく大事な内容は話せず、電話もできず、パソコンを使って資料を閲覧することも難しいといったように、さまざまな制約がありました。やはり、ビジネスは静かで落ち着いた場所が向いています。
一方、ビジネス以外でも、そうしたスペースへの需要が高まっています。SNSが発達したことで、同じ趣味を持った人たちが集まるワークショップや個展、オフ会をする機会が増えてきました。教室や習い事も、固定された場所ではなく駅前の貸しスペースで行えば、生徒も集まりやすく便利ですし、机と椅子、ホワイトボード、電源、Wi-Fi環境など、十分過ぎるレベルの設備が整っています。
初期費用が安くリピーターが多い
貸し会議室では、家賃8~10万円のワンルームマンションを借り、上述のような備品を購入し貸し出すことで成功を収めている投資家がいます。同じように、すでに所有している物件を活かすことも可能でしょう。暗証番号やカードをかざすことで施解錠できるスマートロック、防犯カメラなど、設備にかける費用は、かけようと思えばいくらでもかけられます。しかし、必要最低限のものを用意すると50万円前後になります。
居住用と異なり、物件の築年数はあまり関係ありません。内装も殺風景では困りますが、シンプルなもので十分なので、最低限のリフォームで済みます。
貸し会議室のメリットは、リピーターが期待できることでしょう。使う側もあちらこちらと試すよりも、安くて使い勝手のよいところが見つかれば、継続して利用するようになります。継続してくれるリピーターに特典をつければ、さらに顧客として囲い込むことが可能です。
課題は「物件探し」と「収入」
貸し会議室運営では、少々、物件探しが難しいのがネックです。居住用の物件よりもはるかに立地が重要で、居住用としては防犯のためにオートロックが必須となります。しかし、貸し会議室やフリースペースでは、利用者の利便性を考えるとオートロックではないほうがむしろ便利であり、居住用とは異なる視点が求められます。居住用マンションを区分所有で利用する場合は、管理規約の確認も必要です。利用目的の内容次第で、各種届出が必要になる場合もあります。
収入面では、時間単位で貸し出す点が、居住用とまったく異なります。居住用は月単位ですから、毎月まとまった金額が収入となりますが、時間単位で貸し出すとどうしても細切れになってしまい、日によって収入額にばらつきが出る可能性があります。
たとえば、1室1時間1,500円で貸し出すとして、1日に3、4件、2時間程度の利用だと、1日の収益は1万円に満たず、経費などを引いた月の利益は10万~20万円ではないでしょうか。
また、貸し会議室、フリースペースは不動産投資というよりも、サービス業に近いイメージです。工夫次第で、手間も経費も省けますが、住居用とは収益を上げるためのポイントも異なります。ノウハウをしっかりと身につければ、高利回りで運用することも可能でしょう。特に市場調査、潜在ニーズの把握が、貸し会議室運営で利益を上げる重要な鍵を握っています。