繁盛クリニックのドクターほど「時間の重み」を意識する理由

多忙な開業医の仕事。診療をしっかり行うだけでなく、スタッフに活躍してもらい、プライベートの時間も充実させたい・・・。そのために必要なのが「タイムマネジメント」の能力です。本記事は、医療法人社団梅華会の理事長、梅岡比俊氏の著書『ドクターの“働き方改革”28メソッド』(医学通信社)より一部を抜粋し、売れっ子開業医が指南する「最適な働き方」を紹介します。

若い頃は、体力に任せて無理を重ねていたが…

私は、子どもの頃から親や学校の先生に何度も何度も「時間を大切にしなさい」と教えられてきたように思います。しかし、私自身、20歳になっても時間の大切さや重みを理解できてはいませんでした。それは、20代という若さゆえ、気力・体力ともに衰え知らずで、どれだけ夜遅くまで遊んでも次の日の朝にはシャキッと起きて普通に仕事ができたし、前の晩どんなに暴飲暴食をしても朝起きて体調が悪いなどと感じることがなかったからだと思います。

 

それが30代を経て40代となり、年齢による身体の衰えやそれに伴う体調の変化を感じると、あらためて自分の人生には限りがあり、人間である以上いつかは必ず死ぬのだということを考えるようになりました。

 

開業してしばらくした頃の私は、身長173㎝、体重76㎏で、時を同じくして尿管結石に痛風と、まさに悪しき生活習慣からくる疾病を発症してしまいました。その頃の私は、食事も不規則でカロリーオーバー、運動習慣はまったくなし・・・という生活を送っていたのです。そして、その悪しき生活習慣が当時の自分の身体状況をつくり出していると身をもって実感した私は、健康的に、そしてもっとエネルギー豊かに毎日ハツラツと生きていきたいと強く思いました。

 

それからの私は、世の中の優秀なビジネスパーソンについて、彼らがどのような生活を送り、どのような食生活で、どのような健康管理をしているのかを徹底的に調べました。私が特に興味をもって調べた方は、本田直之氏(作家、経営者、ワインのソムリエ、トライアスリート)、青木仁志氏(事業家、日本ペンクラブ正会員)、道幸武久氏(実業家、ビジネスプロデューサー)、相川佳之氏(美容外科医、事業家)、ジェームス・スキナー氏(アメリカ経営コンサルタント、作家、セミナー講師)、アンソニー・ロビンズ氏(アメリカ自己啓発作家)の各氏です。

 

彼らの本を読み、セミナーがあれば出かけ、その方々の行動を見て学び、まずは真似るところから始めました。すぐに真似できることもあれば、真似るのがむずかしいこともありましたが、真似たのは、生活習慣ばかりではなく、何を大切にして生きて、どのように組織を動かしているか、あるいは家族や友人、部下とどのように関わってきたかに至るまで多岐に渡りました。

アメリカの作家、アンソニー・ロビンズ氏のエピソード

徹底的に研究して真似をして気付いたことは、「時間の重み」です。どの方も一様に時間を大切にされていたのです。なかでも、アンソニー・ロビンズ氏は限られた時間のなかでどう生活するかを徹底的に考え抜いている究極の方だと思いました。私が参加した彼のセミナーで話された次のエピソードが印象的で、今でも私の心に強く残っています。

 

超多忙な彼も時にはゴルフを楽しむそうですが、18ホールすべてを回ることだけがゴルフではないと考えていると言いました。自分の好きなホールを3ホールだけ回って、それが終わるとすぐに取って返し、次の行動に移ることもあるそうです。ゴルフに行ったら18ホール回らなければならないというルールに必ず従う必要はなく、優先して考えるべきは楽しみにしているゴルフに、その時どれだけの時間が使えるかということだと言うのです。

 

彼ほどの著名人になると、ゴルフはしたいけれど18ホール回りきるほどの時間は取れないということがあるかもしれません。それでも、ゴルフはしたい・・・。ゴルフコースに出て3ホールだけプレイして帰るということに全面的に共感したわけではありませんが、時間の使い方に関するそこまでのストイックさには感銘を受けました。

 

このエピソードは、物事に対して、こうあるべきと決めつけたり制限をかけてしまうのではなく、柔軟に考えていくべきであり、例えばこのゴルフの話のように物事に対するイメージそのものの定義づけを改めて考えるきっかけになりました。

 

そして、自分にとって勉強とは、ランニングとは、診療とは・・・と考えていきました。すると、例えば、診療であれば、1週間朝から晩まで毎日自分が診療することが本当に自分の時間の使い方、人生の使い方としてベストなのかということを考えるきっかけにもなったのです。

 

私は、そのセミナーで得た時間の使い方に関する学びをクリニックの経営にどう活かすかをじっくり考えました。そして得た答えは、診療以外の業務に関して、私はポイントだけを押さえて、業務自体はスタッフに権限委譲する仕組みを構築しようということでした。例えば、経営に関する数値も、経営を担当する幹部と面談して、私はKPI(Key performance indicator:重要業務評価指数)だけをポイントとして押さえ、それ以外については幹部に任せることにしました。

「権限委譲」を繰り返し、スタッフを育てる

とはいえ、ときとして時間をかけて答えを出したほうがよい場合もあります。その一つに全体ミーティングがあります。

 

このミーティングでは、私が言いたいことをトップダウンで一方的に伝えるのではなく、スタッフに司会を任せたり、少人数のグループをつくって議題に沿って考え話し合う時間を設定したりして、スタッフが自分たちで決めたことを、彼らに任せて行動させるようにしています。私は自分の意見を言わず、その状況を見守るようにしているのです。

 

とは言っても最初はなかなか〝見守る〟ということができず、ついついミーティング中に口出しをして結論を先に言ってしまうことが多々ありました。今でもまだまだ自分自身それが改善しきれていないのですが、それでも、やはりスタッフを成長させるという意味では、しっかりとスタッフ個々に考えてもらって、それにコミットして動いてもらうという動機付けをしていくことが大事だと思います。

 

すぐにスタッフが成長していくわけではありませんが、権限委譲というものを繰り返し、小さな課題から少しずつ大きな課題を与えることによって、どんどん私自身の手が離れてきたことを感じています。

 

スタッフが考えるのに適している一つの事例を挙げれば、患者さんからのアンケートにある要望についてスタッフ同士で考えてもらうことが、非常に良い機会だと考えています。スタッフにいきなり0から10を生み出すような作業、例えば、患者さんの満足度を上げるためにはどうしたらいいのかといったような課題を振るよりも、患者さんからのアンケートでの生の意見を元に、例えば、クリニックに置いてある本の内容としてこういった本を置いてほしいであるとか、待合室のクーラーが少し寒いといった要望に対してどう対応するか、スタッフ同士で考えるという習慣をつけることが非常に大切だと思います。

 

そこで要した時間というのは短期的視点で見れば非効率で、トップである私が自分の考えを指示し、行動してもらったほうが時間がかからず効率的なのかもしれません。それでもあえてスタッフ全員に考えてもらって、自分たちが出した答えで動いてもらっています。それは、スタッフが自分自身でコミットしたことに対して動くほうがはるかに良い成果が得られますし、成果が得られればスタッフは自信をもつようになるからです。

 

この自信は、徐々に自分で判断して動くことができるようになるための源になると考えます。ただし、前提として、スタッフがクリニックの理念をしっかり理解して共感し、同じベクトルで行動できるよう教育しておくことが必要ではありますが・・・。

 

また、仮にスタッフが考えて出した答えで行動してうまくいかなかった場合でも、どうしてうまくいかなかったのかをスタッフ同士で改めて考え直し改善していくことで、スタッフ力の向上という意味では、うまくいったときと同じ成果が得られると考えます。

 

この繰り返しにより、将来的には私からの指示がなくてもスタッフが自主的に動けるようになるので、スタッフの監督や指示に費やす私の時間は要らなくなります。

 

「時間の管理」イコール「成果を出すのに要する時間の短縮」ではありません。「時間の重み」というものをしっかりと意識し、何が重要なのかを考えていくこと、これがワーク・ライフ・インテグレーションの第一歩です。

名著『七つの習慣』に書かれた、バケツの中の小石の話

時間管理に関する書籍のなかで最も印象に残っているものを挙げろと言われたら、私はためらうことなく、かの有名な著書、スティーブン・R・コヴィー博士の『七つの習慣』のなかにある「バケツの中の小石」の話を挙げると思います。

 

すでに『七つの習慣』をお読みになってご存知の方もいらっしゃると思いますが、自分の時間を「バケツ」、行動を「石」に例えて、バケツの中に石を詰める場合、大きな石から詰めるのと、砂粒のような小さな石から詰めるのと、どちらがたくさん入るか・・・という話です。答えは皆さんもうおわかりと思いますが、最初に大きな石を詰めてから隙間を小さな石で埋めるほうがたくさん入ります。

 

これを私の時間に置きかえると、大きな石は何日もかかるようなセミナーへの参加や家族との海外旅行、事前予約が必要なトライアスロンの大会などで、小さな石は業務上の電話や自分の部屋の片付けであったりするわけです。

 

『七つの習慣』のこの話を読み、私は非常に感銘を受けて、これがこれまでの私の生活を一気に改めるきっかけとなりました。それまでの私は、目の前の仕事に集中することはできていたと思うのですが、次々と予定を入れては考えなしに片っ端から片付けるという方法をとっていたので、まとまった時間が取れない状態でした。まとまった時間が取れなかったので、数日間のセミナーに参加したくても参加できない、本を書きたくても書けない、トライアスロンやマラソンの練習をするためのまとまった時間が取れない、家族と長期間の旅行に行けない・・・という状態だったのです。

 

現在それらのことを実行できているのは、1年間のスケジューリングをする際に、大きな石となる行動をまず計画してその時間をブロックし、空いているところに小さな石である業務を組み込むようにしているからです。

 

本連載では、このバケツの中の小石の話をはじめとして、私が世に出版されている時間管理に関わる本をたくさん読み、自分で真似てみて、失敗して、試行錯誤をしてきた経験から、クリニックを経営する院長の時間管理に有効と思われる取組み、あるいは改良しながら今も私が実践している取組みを紹介しています。

 

 

梅岡 比俊
医療法人梅華会 理事長

 

医療法人梅華会 理事長
医師
開業医コミュニティ(M.A.F主宰)

兵庫県芦屋市出身。奈良県立医科大学を卒業後、勤務医を経て2008年に兵庫県西宮市に梅岡耳鼻咽喉科クリニックを開設。その後耳鼻咽喉科クリニック分院や小児科クリニックを開設し2019年現在、合計8つのクリニックを経営。2016年に開業医がより良いクリニック運営を行うための学びの場としてM.A.F(医療活性化連盟)を発足する。

著者紹介

連載クリニック運営を成功に導く、開業医のための最強のタイムマネジメント

ドクターの“働き方改革”28メソッド:開業医のための最強のタイムマネジメント

ドクターの“働き方改革”28メソッド:開業医のための最強のタイムマネジメント

梅岡 比俊

医学通信社

「仕事、仕事で1年365日疲れ果てている・・・」 「日々の仕事をこなすためだけに時間を使い果たし、自分のために使う時間、家族との時間はほとんど残っていない・・・」 「医師には患者を救う使命があるが、自らが心身ともに…

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