診察時間の差別化で競合病院以上の集客を目指す
前回に引き続き、動物病院を繁盛させるために押さえる「集客」について見ていきます。
【10】24時間オープンも! 地域に合った診療時間
集客のための工夫としては、病院の診療時間を、開業した地域のニーズに合わせて設定することも一つの選択肢となるでしょう。たとえば、首都圏を通勤範囲とする郊外のベッドタウンなどでは、都心などで働いている人が、平日の昼間にペットを近くの動物病院に連れていくことは困難です。そこで、そのような人たちが会社から帰宅した夜遅くでも、動物病院で診療を受けられるよう、開院時間を夕方から深夜の時間帯に設定することが考えられます。
実際、筆者のクライアントの先生の中には、そのような試みを行っている方がおり、周囲の競合病院に比べて多くの患者さんを集めることに成功しています。また、さらに一歩進めて、24時間オープンにしてみることを検討してみてもよいかもしれません。帰宅が深夜になる人や、あるいは朝、会社に行く前にペットを診てもらいたいという飼い主さんなどには間違いなく重宝されるはずです。もっとも、診療時間を夜間中心に設定したり、あるいは24時間オープンにするためには、スタッフの確保や人件費の問題もあるでしょうし、特別な設備投資が必要となるかもしれません。
また、24時間病院を開くことに対しては、テナントの場合、オーナーがいやがる可能性もあります。さらに早朝、夜間の開院に対しては、近くの住人から苦情が出るおそれもあるので、近隣対策も求められます。診療時間を24時間あるいは夜間や早朝にすることを検討する場合には、そうした問題やコスト、対策の必要性も考慮しながら、結論を導き出す必要があります。
「また来よう」という気持ちにさせるのは受付次第
【11】受付は病院の顔
集客をアップするためには、「わざわざ足を運んでくれた患者を逃がさない」ことも大切となります。そのような観点からは、病院の「顔」ともいうべき受付が、ペットの飼い主に対して与える印象が非常に重要となります。
受付の印象の重要性をご理解いただくために、動物病院の評判が書き込まれている、インターネット上のある掲示板の中から、受付への「よい印象」について述べている書き込みと、「悪い印象」について述べている書き込みをそれぞれ抜き出してみましたので、まずはご一読ください(元の文章を一部アレンジしています)。
●よい印象について述べている書き込み
「○○動物病院はこぢんまりとした病院ですが、受付の方も先生も、とっても気さくな方々で先生と受付の方も仲が良いのがこちらからでもわかる程、アットホームな感じです。受付の方も先生も愛犬にも話しかけてくださり愛情も感じられます!!」
●悪い印象について述べている書き込み
「・・・それに比べて一部のスタッフの態度には完全にきれますね。待合室にいるペットに対して、受付時の対応、電話の対応すべてに対して相当憤りを感じます。なんであんなに良い先生なのに・・・と強く感じます。それが他の方も思っていたので正直、共感しました。この前も午後の時間を聞いたら、『いつも通りですから・・・』。口調もとても怖かったし、時間を聞いているのにその回答はとても不親切だと感じたのですが、我が子のようにかわいいペットのことを考えて我慢しました。私たちからしてみたら人間と同じなんですよね。今でも思い出すと腹がたって仕方がないです」
この二つの文章を読み比べればわかるように、飼い主が担当医に対して好印象を抱いているような場合、受付の印象がよいと、さらに病院への好感度が高まり、逆に、受付の印象が悪いと、担当医に対しては好感をもっていたとしても、受付の印象の悪さがもたらすネガティブな効果のほうが強く働き、病院に対する好感度がぐっと下がってしまうおそれがあります。
はじめて病院を訪れた飼い主さんが「またここに来よう」という気持ちをもつのか、それとも「もう二度と来るものか」という思いを抱くのかは、受付スタッフから受ける印象次第であるということを肝に銘じておく必要があるでしょう。
受付の顧客対応能力を高めるためには、接遇研修を受けさせることなども一つの手です。最近は、医療機関の接遇能力を高めることに特化した研修も企画されていますので、利用を検討してみるとよいでしょう。