頻発する自然災害は、日本の地理・地形上の宿命
生活の基盤を海外に移したい。そのもう一つの背景には、日本の将来への不安があるはずです。不安要素は皆さん一人ひとり違いがあるとは思いますが、以下の「自然災害」「経済破綻・高率税制の心配」「地政学上の問題」という3つの要因が共通しているのではないでしょうか。
①日本列島―地理・地形による自然災害のリスク
これは日本の地理、地形上の宿命です。皆さんの記憶に新しい自然災害ですと、1995年1月17日に発生し6000人以上の犠牲者を出した阪神淡路大震災(マグニチュード=M7.3)、2011年3月11日に発生し1万8000人以上の死者・行方不明者を出した東日本大震災(M9.0)といった大地震がありました。特に東日本大震災においては、東北地方の三陸海岸が「リアス式海岸」という入り組んだ湾の形が災いし、津波が増大し甚大な被害をもたらしました。また、福島の原子力発電所もメルトダウンを起こし、周辺住民が避難を余儀なくされました。
日本列島は世界有数の地震地帯にあります。ユーラシア、北米の大陸プレート、太平洋、フィリピン海の海洋プレートの4つのプレートがぶつかり合う地域にあり、それゆえ周期的な大地震は避けられません。
内閣府の予想でも東海地震は「いつ発生してもおかしくない」状況であり、その他、東南海・南海地震も、今世紀前半に発生する確率が高いと見られています。
内閣府はさらに世界のマグニチュード6以上の地震発生の2割が、日本周辺で起きていると報告しています。
地震と同時に火山も大きな危険性を抱えています。
桜島や雲仙普賢岳、浅間山や阿蘇山といったような活火山の数が108と多く分布しており、世界の活火山の7%を占めるという有数の火山国でもあります。もちろん、火山によって温泉が湧き出たり、火山の熱を使った地熱発電など恩恵もありますが、やはり噴火のリスクは大きな不安要素です。
2016年の熊本地震から、阿蘇山の噴火の可能性が論議され始めました。阿蘇山で予測されるカルデラ噴火はそれこそ列島崩壊に近いダメージが予想されますが、もう一方で現実味を帯びているのが富士山の噴火です。
富士山は活火山で江戸時代宝永年間の噴火から300年の沈黙が続いており、これもまたいつ噴火してもおかしくない状況と見られています。
富士山が本格的に噴火すれば、首都圏へも大量の火山灰が降り注ぎ、人的被害の他に日本に長期的かつ深刻な経済停滞を招くことが必至です。
海外から見れば、とてつもないリスクの上に日本人は暮らしている、というイメージで、昨今の日本旅行ブームにも冷や水を浴びせかねません。「自然災害から見て世界で一番危険な都市は東京・横浜、5位タイは大阪・神戸、6位に名古屋」という結果を示したのはスイスの再保険会社スイス・リーが2013年にまとめた「自然災害リスクの高い都市ランキング」でした。この一覧には世界2位にフィリピンの首都マニラなどもありますが、人口の密集度、ビル群と交通網の錯綜している状況から、犠牲者数は日本が圧倒に多くなるはずです。
他にも日本には台風が多数襲来し、それに伴う洪水や土砂災害も頻発します。またここ数年顕著になった異常気象は、これまでにない豪雨や豪雪を記録し、大きな被害を招いています。
意外かもしれませんが温暖化が進む一方、地球規模で寒冷現象も発生しています。ロシアのオイミャコン村では2018年1月19日の日中、なんと氷点下61度を記録したと日本経済新聞が伝えています。近年は氷点下50度程度で収まっていた中での変化で、薄着をしていた2人が凍死をするなど温暖化とは全く逆のような事態も起きています。
また、2018年3月2日の同新聞によると、南米のペルー沖、赤道付近の太平洋東部で海面水温が平年より低くなるラニーニャ現象により、偏西風が蛇行し寒気が日本にも押し寄せ、都内でも積雪が起こるなど厳しい寒さに見舞われました。
激しい気候変動は地球規模で起きていますが、その中でも暮らしやすい気候風土と、新たな生活基盤、国を探す動向は、国内外を問わずこれからも増えていくと思われます。
財政破綻、上がり続ける税金も心配…
②経済破綻と高率税制
次のリスクは経済・金融破綻です。第二次安倍政権は、経済政策アベノミクスを展開し、2012年12月の発足から5年余りで株価は2倍以上になりました。国内では久しぶりの長期政権で、その政権安定が経済成長に貢献した面も確かにあります。
しかし、今その基盤が揺らぎ始めています。
報道でも度々取り上げられている「森友学園」や「加計学園」などの問題により、盤石だと思われていた政権基盤が揺らぎつつあります。2018年3月には財務省の公文書改竄問題を巡り、佐川宣寿前国税庁長官の証人喚問が行われるなど、政権を支える官僚側にも揺らぎが見えています。
また懸念されているのがアベノミクスの破綻です。物価2%上昇の目標を掲げて始まった日銀の黒田総裁の金融緩和政策は、着手から5年経っても実現の見通しが立ちません。
中央銀行の采配による金融緩和は、リーマンショック以来世界の大勢でしたが、米国、そして欧州はその終結、出口戦略に着手しました。その中で日本だけが、緩和策を継続しています。
この金融政策は、日銀が国債を主導的に買い取ることで成立しています。しかしそれも現在の超低金利状況ゆえの存続で、もし国債金利が上昇すれば、1000兆円あまりの負債を抱えるこの国は、国家財政破綻に追い込まれる可能性が極めて高くなります。
そして企業にも個人にも将来リスクを抱かせているのが、国際的に見ても高い税率です。
日本の借金の残高が2017年3月末時点で1071兆5594億円だったと発表されました。毎年何十兆円というペースで雪だるま式に増えている状態です。
日本の財政は破綻しないという見方もありますが、このまま税収が増えなければ医療費補助や年金給付などの支出を抑えるしかなくなります。国民全体の実質所得が減り、デフレが進行していきます。
それに加え、少子高齢化が進み2048年には日本の総人口は1億人を割って9913万人となる予想が出ています。
これにより、ますます年金の減額、消費税の増税などに踏み切らざるを得ないという状況になってきています。
もちろん、日本という国は他の国と比べてとてもインフラが整備されていて、住みやすく安全です。日本独自の文化なども素晴らしいものがたくさん残っており、とてもいい国として誇れますが、一方で前述のようなリスクを抱えた国ということも考えなければなりません。
対処しきれない「危険な隣人」の存在
③地政学的リスク
3つ目の懸念材料として、地政学的リスクやカントリーリスクがあります。最近特に注視されているのが北朝鮮の核の存在です。北朝鮮はここ数年ミサイル実験を繰り返し、すでに日本国内を射程に入れた核ミサイルを保有できる体制を築きつつあります。
2017年8月末に北朝鮮が発射したミサイルが日本の上空を通過し、襟裳岬の東の太平洋上に落下しました。国内では全国瞬時警報システム(Jアラート)が発令されるなど軍事的緊張が高まりました。
北朝鮮の狙いは米国です。トランプ大統領は北朝鮮に対して、「全ての選択肢がテーブルの上にある」と軍事行動も示唆しました。北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長は強硬姿勢を示しました。
一時は軍事的対立もあり得る緊張状態が続きましたが、2018年6月のトランプ大統領と金党委員長の史上初のトップ会談で、交渉の糸口が開かれました。
しかし米国が求める北朝鮮の非核化の足取りは重く、まだ危機が払拭されたという状況には至っていません。
今後交渉が破綻した場合に、アメリカによる何らかの北朝鮮への軍事行動とそれに対する北朝鮮の反撃があれば、その反撃の対象に日本が含まれることも想像できます。日本に核ミサイルが飛んできて、放射能で汚染され、住めない地域が出てくるかも知れません。
また日本国内には北朝鮮のスパイ、工作員が多く潜入しており、有事の際にはテロや核施設への攻撃などが十分考えられる、という専門家もいます。
国内には稼働中から廃炉決定済みのものまで含め、60カ所もの原発があります。そのほとんどが、攻撃に対し無防備に近く、核攻撃をはるかに超える人的被害を招くリスクがすでに存在しているといえます。
坂野 広通
Hallohallo Inc. Executive Management Group
Director
坂元 康宏
株式会社myコンサルティング
代表取締役