今回は、フィリピン永住権の種類と取得条件の概要等を見ていきます。※本連載は、坂元康宏氏・坂野広通氏の共著である『日本×フィリピンで実現する 究極のデュアルライフ』より一部を抜粋し、あこがれのデュアルライフを実現する方法をレクチャーします。

各国の制度に比べ、一番利用しやすいフィリピン永住権

 ⓮フィリピン 

 

最後にフィリピンの永住権を紹介します。これまでの各国の永住権よりも、少し詳細に説明します。その理由は本書(『日本×フィリピンで実現する 究極のデュアルライフ』)の冒頭で述べましたように、フィリピンの永住権が現在の各国の制度に比べ、効用や利便性、コストからみて一番利用しやすいものと考えるためです。

 

まず取得条件を確認し、その優れた利便性、効用などは本書第4章以降で確認してください。

 

フィリピンは世界有数の労働者の海外輸出国です。海外で働く人(OFW=Overseas Filipino Workers)からの送金がGDPの10%とも言われ、国の経済を支えています。それと同時に同国では外貨獲得政策として、海外からのビジネスマンやリタイアした人々の受け入れも積極的に展開しています。労働雇用省(DOLE)など関係機関も整備されています。

 

これらの機関が関与する許可、承認システムは、外国人雇用許可証を筆頭に、さまざまなものがあります。

 

フィリピンの永住権と一口にいいますが、その種類や取得方法も多岐にわたります。その中でも代表的なものとして「クオータビザ」、「SRRV」、そして今回ご紹介する「APRV(APECO特別永住権)」があります。

 

クオータビザは、ビジネスなど活動の自由度が高く、取得後の維持条件もほとんどありません。日本、アメリカ、ドイツの三カ国に対しそれぞれ年間50人の枠が認められています。

 

SRRVは特別居住退職者ビザといわれます。リタイアした夫婦や家族がフィリピンに住み、その年金などを使ってもらうことを目論んだ制度ですが、30代でもこの制度の適用が可能です。

 

APRVはオーロラ特別経済区が取り組む振興開発事業プログラムの1つとして承認される特別永住権で、取得の容易さ、利便性からみて今一番お勧めするものです。これら3つの永住権を、それぞれの必要手続きごとに比較検討します。

 

①取得に関する年齢制限

 

他国の永住権の取得に際しては、一般的に成年に達した人でないと取得できない、あるいは高齢者の取得はできないなどの条件がついたりしますが、フィリピン永住権の中でも年齢制限がないものもあります。

 

SRRVの場合 35歳以上

クオータビザの場合 20歳以上

APRVの場合年 齢制限なし

 

となっています。

 

②取得に必要な費用

 

SRRVの場合

SRRVの中でも「SRRVスマイル」と「SRRVクラシック」に分かれています。

 

SRRVスマイルの場合

預託金(一時的に預けますが、永住権を放棄する場合返ってくるお金)は一律2万米ドル(220万円)です。

 

●SRRVクラシックの場合

預託金は50歳未満の場合5万米ドル(550万円)、50歳以上年金受取無しの場合2万米ドル(220万円)、年金受給者の場合1万米ドル(110万円)、ということになっています。SRRVスマイルとSRRVクラシックの違いとして、基本的にどちらも預託金は引き出して使うことはできません。ただSRRVクラシックの場合は諸条件をクリアすれば不動産投資に使用可能です。

 

クオータビザの場合

 

預託金は一律5万米ドル(550万円)です。この5万米ドルはビザ取得後に自由に使うことができます。

 

クオータビザ、SRRVの取得手数料について

 

基本的に両ビザ共に自力で取得作業を実行できる場合、手数料は必要ありません。

 

しかしながら、契約書は英語で表記されていることはもちろん、各諸手続きのための関係各所とのやり取りがとても煩雑なため、かなりの英語力が必要なことと、現地でのコネクションがないままことを進めようとしても、思うように担当者が動いてくれないことへの忍耐力が必要です。

 

取得サポート業務を行っている業者はそれなりに関係各所とのコネクションがあり、自力で行うよりも結果的に時間短縮できることになるため、無駄なストレスを感じずに取得できます。

 

従って現地企業などで永住ビザの取得サポート業務を行っている業者に依頼して、その手数料を支払って取得するケースが大半です。

 

●クオータビザ取得の手数料の目安

預託金や渡航費、宿泊費(長期の連続滞在が必要)とは別に、手数料で200~300万円程度(業者により異なりますが250万円内外の業者が多いようです)。※また、申請しても必ず取得できる保証はなく、取得できない場合にも手数料の返金がないケースも多いようです。

 

●SRRV取得の手数料の目安

預託金や渡航費、宿泊費(長期の連続滞在が必要)とは別に、手数料は35~60万円程度(業者により異なりますが50万円内外の業者が多いようです)。

 

APRVの場合

他の永住ビザと違い、預託金ではなく事業開発費としての資金2万米ドル(220万円)と、新規登録手数料として150万円が必要です。SRRVやクオータビザと違い、投じた資金が戻ってこない点が唯一の不利な点といえます。

取得しやすい「APRV」は、忙しい人に適している

③永住権の更新頻度と更新料

 

永住権を取得してからも、毎年の更新が必要なものから、5年に1度の更新で済むものまで永住権の種類によって条件はさまざまです。

 

SRRVの場合

年会費が360米ドル(同伴者が3人以上の場合は1人あたり100米ドル追加)がかかります。1年ごとの更新のため、仮に日本や他の国に居住していた場合、更新のための渡航費や宿泊費が毎年かかります。

 

クオータビザの場合

年会費は必要ありません。しかし、更新時にアニュアルレポート(手数料約1000円)の手続きが必要となります。SRRVと同じく1年ごとの更新のため、仮に日本や他の国に居住していた場合、更新のための渡航費や宿泊費が毎年かかります。

 

APRVの場合年

会費が7500円かかり、5年ごとの更新費用が7万5000円かかります。他の永住ビザと違い、5年ごとの更新のため、仮に日本や他の国に居住していた場合でも更新のための渡航費や宿泊費は5年に1度で済みます。

 

④取得に必要な滞在期間

 

永住権取得の際に、必要な書類や審査といった諸手続きを行うため一定期間の現地滞在が必要です。

 

SRRV、クオータビザの場合

取得にはおよそ30日から40日以上の連続滞在が必要です。申請から取得までの期間中は出国できませんので、この間フィリピンに滞在し続ける必要があります。やむを得ず途中で一時的に国外へ出る場合は、別途費用が必要になることもあります。フィリピンでの無犯罪証明書が必要で、この取得には時間を要することが多いため、ある程度の期間を見込んだ方が良いです。

 

APRVの場合

フィリピンに5日の滞在が必要です。他の永住ビザと違い、フィリピンでの無犯罪証明書は現地で滞在する5日の間に取得することが可能です。

 

※日本側での無犯罪証明書について

APRVは必要ありませんが、SRRV、クオータビザの場合は、日本において無犯罪証明書を取得する必要があります。無犯罪証明書の申請は本人のみ可、申請場所は各都道府県の警察本部で平日のみの受付けとなります。受け取った証明書は外務省およびフィリピン大使館での認証が必要となりますので、およそ1カ月程度時間がかかると思われます。

 

⑤フィリピンから出国する際の手続き

 

クオータビザの場合

空港で再入国許可手続き(ECC)が必要となります。ECCにかかる費用は基本2170ペソ、その年の初めての出国の場合は2880ペソかかります。

 

SRRV、APRVの場合

再入国許可は不要です。

 

⑥住居の必要性

基本的に永住権を取得するためには、その国で居住するための住所が必要です。

 

SRRV、クオータビザの場合

永住権を維持する目的で、不動産を購入あるいは賃貸して住居の確保が必要となります。

 

APRVの場合

APECOのリゾート施設開発事業目的でプログラムが組まれており、その資金で建設するAPECOのリゾート施設を住所に割り当てる仕組みのため、住居の確保をする必要がなく永住権維持コストの削減になります。

 

⑦手続きに必要な書類

 

SRRV、クオータビザの場合

パスポート、戸籍謄本、日本での無犯罪証明書・健康診断書。

 

APRVの場合

パスポート

 

以上のような違いがあります。

 

それぞれの項目を見ていくと、日本など外国とのデュアルライフを主に考える場合はAPRVを取得するといったように、個人の目的に合わせてどの永住権を取得すべきか考えて選択することをお勧めします。

APRV(APECO特別永住権)の魅

永住権の取得には、APRV以外のものだと通常40日程度の連続滞在が必要となります。もし途中で出国するようなことがあれば、またやり直しになったり、追加で費用がかかる場合がありますが、APRVは4泊5日のツアーで永住権を取得できるという、忙しい方に適した取得しやすいシステムとなっています。

 

APRVは、今のところ取得時に健康診断書の提出もないため軽度の持病があっても大丈夫です。また、永住権の取得と維持にはフィリピンに居住するための住所が必要となりますが、APRVは建設中のリゾート施設の住所を割り当てる仕組みで永住権を維持できるため、すぐにコンドミニアムを購入したり賃貸する必要はありません。もちろん、ご自分で購入した不動産に住所を移すこともできます。

 

そして、取得代表者に紐づく家族(配偶者・20歳未満の子供)の取得費用は、1人あたり取得代表者の10%の金額で取得が可能(人数制限あり)なことも利点といえます。

 

APRVの年会費は取得代表者が7500円、取得代表者に紐付いて取得した家族は750円です。更新は5年に1度で済み、更新料については、取得代表者が7万5000円、取得代表者に紐付いて取得した家族は7500円と取得後の維持コストも安価です。このような取得までの簡便さと低廉な維持コストがAPRVの人気に繋がっています。

 

 

坂野 広通
Hallohallo Inc. Executive Management Group
Director


坂元 康宏
株式会社myコンサルティング
代表取締役

 

 

日本×フィリピンで実現する 究極のデュアルライフ

日本×フィリピンで実現する 究極のデュアルライフ

坂元 康弘, 坂野 広通

幻冬舎メディアコンサルティング

たった4泊5日で永住権取得!フィリピンで憧れの海外生活を実現しよう。 いま、日本を取り巻く環境は大きく変化しつつある。 台風や地震などの自然災害の多発、中国や北朝鮮と隣接していることによる地政学的リスクの上昇、…

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