苦戦した、ウエディング業界での「ネット広告営業」

ネット広告の普及が遅れていたウエディング業界。当初はなかなか良さを理解してもらえない中、敏腕営業マンが取った手段とは…。※サイバーエージェントのグループ企業で、日本最大級のクチコミ数を誇るウエディング情報サイトを運営する「ウエディングパーク」。キーエンス出身の敏腕営業が飛び込んだネットビジネスの最先端で、時代の寵児・藤田晋氏とかかわりながら育てたサイトは、これまで何度も危機を乗り越えながら、現在の地位を獲得しました。本連載は、書籍『僕が社長であり続けた、ただ一つの理由』から一部を抜粋し、熱血社長による、ウエディングパーク立ち上げの道のりを紹介します。

興味をもたれなかった、インターネット広告

ユーザーを会員化しないということになると、ユーザーのアクションポイントは唯一、公式ホームページにリンクするクリックボタンを押してもらう、ということだけです。そして、当時のウエディングパークは、そのクリックされた数に対して課金する、というビジネスモデルでした。

 

ある結婚式場のクチコミ情報を見て、興味を持って、公式ホームページを見てみたいな、と思ってもらう。言ってみれば、式場にわざわざ出向くのと同じように、来館までを促す動機をウエディングパークがつくった対価としてクリック広告費をもらうわけです。そして当時、その費用は1クリック200円でした。

 

この費用の安さが、クライアントに広告を出稿する敷居を大きく下げてくれるはずだ、という考え方がありました。

 

営業活動をスタートさせたのは、サイトがオープンする2カ月前からでしたが、ここで思わぬ事態に直面します。先に、ウエディング業界ではインターネットがまだ浸透していなかった、と書きましたが、インターネット広告そのものについて、なかなか意味を理解してもらえなかったのです。

 

クリックしたら広告費が発生するとは、どういうことか。それまでは、雑誌がメインで広告を出稿していくら、というのが当たり前の業界でした。また、インターネット広告自体、業界に普及していませんでした。

 

ですから、「インターネット広告って、そもそも何なのか」ということが理解してもらえなかった。「クリックされた分、お金がかかります」という話をすると、「そうすると、あなたの会社が自分たちでクリックした分も払うことになるのか?」という素朴な疑問を投げかけられたこともあります。

最初に評価してくれたのは、レストランや地方の式場

こうして営業はなかなかうまく進まず、いわゆる大手の結婚式場や有名なホテルなどには、まったく興味を持ってもらえませんでした。その一方で、「紙メディアやテレビCMは高すぎて広告が出せなかった」と悩まれていたウエディングを手掛ける小さなレストランや、地方都市の結婚式場などがまずは評価をしてくださったのでした。

 

そのお店では、ちょうどお洒落なレストランウエディングが始まった頃で、土日だけウエディングに使いたいと、広告先を探していたのです。地方都市の結婚式場も、紙媒体なら何十万円、何百万円もするけど、ウエディングパークならワンクリック200円でいいね、という評価をもらいました。正直なところ、それほど効果も期待されていなかったと思います。とりあえず安いからいいよ、大きな固定費がかかるわけではないし、と。

 

こうしてレストランや地方都市の結婚式場が少しずつ増えていくことになりましたが、有名な結婚式場を考えているユーザーはやはり見に行きません。クリック自体、なかなかしてもらえなかったのです。つまり、売り上げが発生しない、ということです。これでは困ったことになります。

 

そして、僕たちが知恵を絞ったのが、コンテンツとして見せていくことでした。例えば、「埼玉県の穴場結婚式場」というタイトルで特集を組む。切り口を変え、編集して、ウエディングパークは今ここに注目しているというメッセージを発することで、クリックにつなげていく。

 

当時、すでにクチコミランキングが人気コンテンツになっていました。しかし、ランキング上位の有名結婚式場は、有料広告契約をしていないのでクリックボタンがなかったりするわけです。それでも、こちらで勝手にランキングを操作するわけにはいきません。

 

ウソはもちろんいけません。勝手に数字を変えたり、順位を変えたりしてはいけない。そこで、切り口を変える工夫をしました。僕は当時のメンバーによく、「行列のできるラーメン屋こそ実は無名だ」と言っていました。広告費はないけど、クチコミで人気がある所が顕在化されるように、隠れた結婚式場が、クチコミサイトを使うことで行列ができる。そういうところにこそ、自分たちの意義があるのだ、と。

 

クチコミの良さをフックにして、目立たないけど頑張っている結婚式場や、意外な評価を得ている式場をなんとか目立たせて、クリックに結びつけていく。そんな取り組みを推し進めていきました。

「単価は安いし、なんだか一生懸命やってるし…」

一方、もう一つの悩みがありました。それは、「クリックしてもらって広告料が発生しているらしいけど、本当に見学や申込みに対して影響力があるの?」という疑問が消えなかったことです。

 

グーグルアナリティクスのような分析ツールなどは当時はありませんでしたから、クリックによって公式ホームページを訪れたカップルが、その後どんな動きを示したのか、分かりませんでした。もしかしたら式場予約まで行っていたとしても、それがウエディングパークからのワンクリックで行ったかどうか、というのは、分からなかったのです。

 

式場側では、「何を見て式場見学にお見えになりましたか?」といったアンケートを取っているところも少なくありませんでしたが、カップルにしてみれば正直に答える義務はありません。そういうケースでなんとなく有名媒体に印をつけてしまうこともあるでしょうし、ウエディングパークをチェックマークの一覧に加えてもらったりしましたが、どこまで真剣に答えてもらっていたかは、分かりません。

 

結果的に、ウエディングパークが結婚式場側にどこまで役に立っているのか、はっきりと証明することはできませんでした。ただ、「単価も安いし、なんだか一生懸命やっているし、良いユーザーを集めてくると言っているし、信じてあげようか」と言うお客さまとの対話が少なくありませんでした。

 

それこそ振り返ると、信頼だけで受注をさせてもらったことも少なくなかったと思います。本当にありがたい限りでした。

 

 

日紫喜 誠吾

株式会社ウエディングパーク 代表取締役社長

 

株式会社ウエディングパーク 代表取締役社長

1976年生まれ。
1998年に同志社大学工学部エネルギー機械工学科を卒業後、(株)キーエンスに入社。その後、将来の起業を目指して急成長のネット業界へ転職を決意し、2000年に(株)サイバーエージェントに入社。インターネット広告代理事業のマネージャー、局長を経て、2004年にサイバーエージェントの100%子会社として設立された(株)ウエディングパークへ出向。2005年に代表取締役に就任し、現在に至る。

著者紹介

連載キーエンスのスゴ腕営業がサイバーエージェントで「ウエディング情報ビジネス」の社長になった理由

僕が社長であり続けた、ただ一つの理由 ウエディング業界に革命を起こした信念の物語

僕が社長であり続けた、ただ一つの理由 ウエディング業界に革命を起こした信念の物語

日紫喜 誠吾

幻冬舎メディアコンサルティング

ウエディング業界の常識を変えた革命児の揺るぎない「信念」とは? 誰もが「失敗する」と笑ったビジネスでなぜ成功することができたのか。 20年続くあるベンチャー企業の軌跡。 役員・従業員の大量離職、 事業の方向転換…

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