本連載は、資金繰り表を活用した経営管理の普及を目指す、株式会社アセットアシストコンサルタントのCEO兼統括コンサルタントの大森雅美氏が、経営者が知っておくべき会社の数字や統計データの読み方を解説します。※ 本記事は、2019年3月26日に掲載された大森雅美氏のブログ『銀行から融資を受ける前に』から抜粋・再編集したものです。

閑散期は人件費が重しとなり、繁忙期は人手不足の現状

平成31年2月1日現在日本の総人口は概算値で1億2633万人。確定値は平成30年9月1日現在で総人口1億2641万7千人。そのうち日本人人口は1億2425万9千人。その差215万8千人が在留外国人ということです。

 

少子高齢化と人口減少は留まることなく進んでいます。前年同月比で特に15~64歳の労働力人口は実に52万4千人減少、65歳以上人口は44万9千人増加、15歳未満は26万1千人減少となっています。

 

労働力人口の減少と65歳以上の増加から、人手不足の現状があり、就業においては売り手市場となっており、移民受け入れの準備法案の成立があることも納得できます。しかし、私は国が統計数値から政策を実行することは納得ができても、実態との乖離が広がっていくことを懸念します。

 

中小零細企業は売上見込が不確かで繁忙期に合わせた社員の雇用をすれば、閑散期に人件費が重くのしかかり、赤字を積み増し資金不足に陥ってしまいます。また、逆に、閑散期に合わせた社員数では繁忙期に人員不足に陥り需要(取引先からの発注)に対応できず、断らざるえない事態になります。

 

そんななか社員を増やそうと考えると、売り手市場の給与上昇に合わせた高給を提示できないため、社員を増やし難くなります。まさに悪循環です。

 

たとえば、多くの加工業は技術が必要でも商材の単価は低く、準じて利益も薄いものです。給与、待遇を考えず技術習得を目的として就業する心構えがないとできない仕事です。必要な技術ではあっても給与や福利厚生で就業場所を判断するような世の中にしてしまえば、技術は国内から海外に流出してしまい国内の就業場所をなくしていきます。

 

となると抜本的に就業に対する世の中の意識が変わらないと改善しません。ワークライフバランスを突き詰めて働き方改革でより働く時間に制限をかけ、企業の稼働時間を削減してしまうことは単純に生産量を下げてしまいます。

 

たしかに、嫌なことを仕事とし、自分の許容量をオーバーしてまで仕事をして、ストレスで心を壊してしまうまで働いてはいけません。まして過労で身体を壊してしまってはいけません。

 

しかし、一方で中小零細企業が生産量を上げるために事業の稼働時間を増やしたい、社員も沢山働きたいという意思があるなかで制度がブレーキとして機能してしまえば、頑張って働いて経済的にも豊かになりたいという思いは叶わず、政策は本末転倒な結果となります。

売り手市場、転職ブーム…新卒社員が定着しないワケ

また、人手不足の認識が転職を推進することにもつながり、企業の安定性を損なうことに繋がっています。今、テレビCMなどからも転職や人材紹介を事業とする人材紹介、派遣会社が増えていることで、皆さん実感できるのではないでしょうか。

 

企業経営者は採用時に、自社で勤務し続けスキルを上げて、責任ある仕事を担って貰いたいと常に思っています。転職ブームのなか、転職に歯止めをかける労力をかけるのであれば、本来の意図に沿う人材として教育していける「新卒者」を求める傾向にあります。

 

反面で売り手市場ですから、新卒者は楽して儲かる会社を求め給与や福利厚生の充実した会社を探し始めます。そんな探し方で入社しても、その企業で無我夢中に仕事に打ち込むことなどないでしょう。その態度は企業にとっては受け入れがたい態度ですから早期にミスマッチが生じ転職…という悪い循環を生んでしまいます。

 

そこに移民を労働力として組み入れていくと考えると、ますます事態は複雑になるだけで問題解決どころか問題を複雑にし悪化してしまうのは明らかです。企業実態を勘案せず、統計数値を基に政策を実行してしまう弊害が多くの場面で見られます。

 

だからこそ、中小企業として真の意味で「自立」を実現できるよう、自己評価を客観的にしながら改善する戦略をたてられるようになることが必要です。事業においては財務会計の不確かなB/S、P/Lだけではなく、実際のお金の流れを可視化する資金繰り表の活用が一番本質的な対処だと私は結論付けています。

本連載は、株式会社アセットアシストコンサルタントCEO兼統括コンサルタントの大森雅美氏のブログを抜粋・再編集したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。ブログはこちらから⇒http://masami-omori.com/column/

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