仲介店舗は物件探しをする場所ではなくなっている!?
前回に引き続き、高い「広告料」を払っても空室問題が解決されない理由を見ていきます。
仲介会社の役割は、オーナーから預かった物件と入居希望者のマッチングを行うことです。オーナーは客付けを委託でき、入居希望者は営業マンから物件の紹介を受けられる──仲介会社はオーナーと入居希望者の双方にメリットを提供していることになります。
とくに入居希望者にとって仲介会社の営業マンはルームアドバイザーであり、部屋の希望を伝えるだけで、それに見合った物件を提案してくれるありがたい存在です。仲介店舗をいくつか回って物件を内見するだけで、自分の希望にぴったりの部屋を見つけられるという利点があります。
ところが近年、インターネットの普及によって部屋探しの方法が大きく様変わりしました。仲介店舗に直接足を運んで物件を見て回るのではなく、先にネットで下調べをした上で店舗に出向き、あらかじめ目星をつけていた物件を伝えて部屋を内見するケースが増えているのです。
リクルート住まいカンパニーの調査によると、入居希望者が物件を決めるために訪問する不動産仲介店数は平均1.7店舗とされています(2014年度、賃貸契約者に見る部屋探しの実態調査[首都圏版])。しかも0、あるいは1店舗だけしか訪問していないという人が実に5割を超えているのです。
これらは部屋探しにおいて、ネット検索が本格的になってきたのを物語るデータといえます。時間と労力をかけて仲介店舗をハシゴし、苦労して物件を探し回るより、ネットを使って自分で部屋探しをする時代になったということです。
賃貸物件を紹介するポータルサイトの検索機能は飛躍的に向上しています。沿線・エリアや家賃相場、間取りといった基本的な条件設定はもちろんのこと、IHコンロやバス・トイレ別など室内設備のこだわり、最上階や南向きといった部屋の位置、セキュリティ設備にいたるまで、詳細に物件を絞り込むことができます。
さらに物件詳細ページには内外観の写真が複数掲載されていますから、どのような建物や部屋なのかを視覚的に確認できるようになっています。
ポータルサイトの検索システムが普及したことで、わざわざ仲介店舗に足を運ぶ意味が薄れてしまったのです。ルームアドバイザーの役割は、仲介会社の営業マンからポータルサイトに移行してきていると言っても過言ではないでしょう。
その証拠に、前述の調査で「今後、不動産検索サイトに欲しい情報」についてアンケートを取ったところ、「内見しているかのような内覧動画がある」が43.7%で1位となっていました。部屋探しをする人は、いまや内見すらネットで済ませたいと思っており、街の仲介店舗は物件探しをする場所ではなくなっているのが改めて理解できます。
入居希望者は、部屋探し自体はネット検索で行い、自分で見つけた候補物件を内見するためだけに仲介店舗に足を運びます。当然、その候補を扱っている仲介店舗にしか行かないので、訪問数は1.7店で十分でしょう。
時代に見合った入居者獲得の方法を模索する必要がある
このように仲介会社の存在意義が問われている今、多額の広告料を支払うことにどれほどの効果が見込めるでしょうか。
オーナーが仲介会社に広告料を多く支払い、営業マンがお勧め物件として扱ってくれたとしても、肝心の入居希望者の多くは前もって自分で候補物件を絞り込んできているのです。自分が調べてきた物件の内見のみを来店者が希望した場合、営業マンがオーナーの物件を推薦するチャンスはありません。広告料を多く支払っているのにもかかわらず入居が決まらず、結局、家賃の値下げを仲介会社から要求された経験はないでしょうか?
ここで一つ注目していただきたいことがあります。
広告料によって、オーナーの物件の案内数が増えたとして、それはあくまで仲介会社にとってのメリットがインセンティブとして働いているということに過ぎません。営業マンがいくら物件を入居希望者に推薦したとしても、希望に応えるものではない可能性もあるということです。
ここにミスマッチが起きているのがおわかりいただけるでしょう。
仲介会社の役割はオーナーの物件と入居者の間に入り、公平な立場で両者を結びつけることです。にもかかわらず、橋渡し役の仲介会社が自身の利益と思惑を優先して動いてしまっていることで、マッチングがうまく機能していないのです。
住宅不足の時代は、多少のミスマッチがあっても部屋数自体が少ないわけですから、入居希望者は営業マンの勧めるままに契約するほかありませんでした。広告料が効力を発揮していた時代です。
ところが住宅余りの時代にそのミスマッチは致命的です。さらにネット検索が当たり前となったいま、そもそも仲介店舗でミスマッチが起こるより前に、入居希望者は自分にマッチする部屋を自ら探せるようになりました。
時代は大きく変わっています。オーナーは広告料という時代遅れの切り札に頼るのではなく、いまの時代に見合った入居者獲得の方法を模索しなければなりません。