今回は、「社員が好きなように働く会社」として評価されている筆者の会社の、具体的な運営法を紹介します。※戦後最長の好景気が継続する一方、企業の人手不足・後継者不足は深刻です。また、中小企業にとっては、政府が打ち出した「働き方改革」「ワーク・ライフ・バランス」への対応も、頭の痛い問題です。政策を順守しつつ人材を確保し、企業の業績を上げ続けるにはどうすればいいのでしょうか。本連載では、勤務形態その他について「社員が好きなように働ける会社」を実現し、グループ全体で200人規模ながら、求人に年間600人近い応募が寄せられる人気企業の代表が、その極意を伝授します。

年間600人の求人応募がある、三重県の電気工事会社

このように企業経営を取り巻く環境が急速に変わる中、三重県鈴鹿市に本社を置き、電気工事業を中心に事業展開しているのが私たちの会社です。いわゆるBtoBの会社なので知名度が高いわけでもなく、企業規模はグループ全体でも300人未満、しかもメインの事業は建設業です。それなのに、この1年で中途と新卒の募集に600人近い応募があり、そのうち47人を採用しました。社長としては半分くらい採用したいと思ったのですが、総務部門から強く止められ、前述の採用となりました。

 

なぜ、人手不足が深刻になっている中、私たちの会社にはこれほど多くの人が入社したいと応募してきてくれるのでしょうか。

 

理由は簡単です。社員が「好きなように働ける」からです。それと同時に、同業の一部上場企業に引けを取らない待遇を実現しています(毎年100社以上の同業他社について調査をし、生涯賃金についてのシミュレーションを行い、そのデータを踏まえて「引けを取らない」と伝えています)。最近、私たちの会社は名古屋や東京、横浜にも拠点を展開しており、人員補充のため私が直接ヘッドハンティングに動いたりしています。

 

そうした中で先日、年商200〜300億円クラスの同業他社の中堅社員と面談する機会がありました。話によると、その会社では新卒であれ中途であれ、採用した社員の半分くらいはいずれ辞める前提で事業計画や人員計画を立てているそうです。いわゆる“ブラック”なのか、最近、労働基準監督署が立入り調査に入ったとも言います。

 

私たちの会社より歴史が長く、規模も大きな企業でいまだにそのような姿勢(考え方)で業務が実施されていることに驚くとともに、私たちの会社はまだまだ増員できると確信を深めました。

徹底的な無駄排除…本社はプレハブ、重機はレンタル!

積極的に人員を募集し、増員を続けていくには当然、経営がうまくいっていることが大前提となります。赤字の会社が増員などできるわけがありません。私たちの会社は現在、連結の売上が66億円、経常利益が11億円、利益率は15%程度となっており、8年連続で決算賞与を出しています。

 

建設業界はここ数年、好景気に沸いていますが、それでも同業他社で、これほど「稼ぐ力」があるところはそうないと思います。

 

そもそも、私たちの会社は法人化してこれまで20年間、リーマンショックの後も含めて赤字になったことが一度もありません。会社の都合で人員整理をしたこともありません。よく、「どうして黒字を続けられるのですか」と聞かれますが、私に言わせれば当たり前のことを当たり前にやっているだけで、むしろ赤字になる理由が分かりません。

 

たとえば、私たちの会社では無駄を省くため、一つひとつの仕事、一人ひとりの作業を細かく数値で「見える化」し、徹底的に分析しています。本社の建物はプレハブのままで、初めて本社に来てもらった人はよく、「建て直しているのですか?」と真顔で質問してきます。電気工事でよく見かけるバケット車やユニック車、大型車や重機なども、自前では持ちません。使用頻度やメンテナンスのコストを考えたらレンタルのほうが合理的だからです。もちろん、何回も自社での購入を検討しました。しかし、何度計算してみても収支が合いません。それに、レンタルなら常に最新の機器が使え、メンテナンスはプロが毎日してくれ安心です。そうしたことからずっと、レンタルを活用しています。

設計用のCADは最新、給与水準は上場企業に近似

一方、利益を生み出す「現場」には投資を惜しみません。設計に用いるCADは常に最新のものを大手よりも早く導入しています。社員の給与については先ほども述べたように同業の上場企業を常に調査し、それに引けを取らない水準を維持しています。

 

本社はプレハブのまま、車両や重機もレンタルで済ませているため、借入金は19年間ゼロのままでした。

 

最近は、高圧太陽光発電所の経営と特別高圧の大型太陽光発電プロジェクトの投資案件を手掛けているため、借入をしています。借入は、通常の銀行借入ではなく、プロジェクトファイナンスなどの金融手法を活用し、リスクを適正にコントロールしながら行っています。

 

簡単にいうと、通常の銀行借入は会社として借りるもので担保や保証が必要ですが、プロジェクトファイナンスはそれぞれの事業(プロジェクト)の収益力を裏付けとして借りるものです。借入れの返済は事業が生み出すキャッシュフローから行い、事業に関わる資産以外は担保とする必要がありません。

 

つまり、事業の収益力が厳しく問われる一方、会社としてリスクを抑えることができます。言い換えれば、会社の資本力がそれほど大きくなくても、収益力の高い事業案件を企画・組成できれば融資を受けることができるということです。ちなみに、現在手掛けている大型太陽光発電プロジェクトでは、基本的に5年で借入金を返済する予定です。

 

このような私たちの会社がもし赤字に陥るとしたら、その時はおそらく日本経済そのものが大きく落ち込んでいるはずで、同業他社の9割以上は倒産の淵に追い込まれているのではないでしょうか。

 

私たちの会社のやり方だけが正解とは言いませんが、このように数字にこだわり、社内分析をきちんとすることで利益を確保することはそう難しいことではありません。

安易な経費・人員カットを行えば、経営は悪化する

しかし、建設業界では多くの企業はいまだ売上重視で、経営不振に陥ればとりあえず一律経費や人員をカット。そんなやり方では、能力の高い優秀な人から辞めていきます。

 

かつての不動産バブル崩壊後、私が一人親方として独立した当時も大手を含め多くの企業が一律に経費や人員をカットしていました。しかし、そうした安易なやり方に走った企業ほどその後、経営がさらに悪化していったのを目の当たりにしました。

 

私たちの会社のやり方は違います。能力があってやる気のある人にはどんどん仕事を任せるし、給料も払います。やる気があれば、スキルは後から付けてもらえばいいと思っています。

 

さらに、能力はあるけれど、自分の価値観や様々な事情で勤務時間や働き方を柔軟に変えたいという人には、その希望をできるだけかなえられるようにします。

 

決められた仕事を一定時間だけやりたいという人にも、そのように働ける場所と勤務シフトを用意します。事情により、途中で働き方を変えるのも自由です。

 

誰もが自分の価値観と事情に合わせ、働きたいように働ける。そのことで、その人の能力とスキルを最大限発揮してもらうことが、会社全体の競争力を高め、業績アップにつながります。

 

これが私たちの会社における「社員が好きなように働ける」ということです。

 

 

瀬古 恭裕

株式会社鈴鹿 代表取締役 

 

社員が好きなように働く会社

社員が好きなように働く会社

瀬古 恭裕

幻冬舎メディアコンサルティング

「働き方改革」「ワークライフバランス」を20年前から実践 創業以来、増員・増収・増益を続ける組織づくりのノウハウを解説! 「終身雇用」「年功序列」など、いわゆる「日本型経営システム」は、かつての日本の大量生産大…

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