成年年齢引き下げの影響は?「未成年者が相続人」の際の手続き

若くして親を亡くし、未成年の子供が相続人になる相続事例は残念ながら少なくない。ただでさえ複雑な相続手続きだが、相続人に未成年者が加わることで何が変わるのだろうか。本記事では、相続案件を多数扱う、税理士法人田尻会計・古沢暢子税理士が、相続人に未成年者がいた場合の手続きについて解説する。

親権者が法定代理人として手続きをする必要があるが…

◆未成年者は遺産分割協議ができない

 

昨年秋、小学生のお子様2人と奥様を残して亡くなった方の相続について相談を受けました。ご相談にいらしたのは、被相続人(亡くなった方)の奥様とそのご両親です。相続手続きに関する説明とあわせ、相続人に未成年者がいる場合の留意点をお話ししました。


未成年者は、財産に関わる法律行為を自ら行うことができないため、親権者が法定代理人として手続きを行う必要があります。本事例では、母親と子供がどちらも相続人となり、お互いに利害が対立してしまうため、特別代理人として、母親の両親(子供にとっての祖父母)を選任して遺産分割を行うことになりました(母親が相続財産を取得しない場合も同様の扱いとなります)。

 

◆特別代理人の選任申し立てには、遺産分割協議書(案)の添付が必要


特別代理人の選任は、家庭裁判所に申し立てをして行いますが、このときに予め作成した遺産分割協議書(案)を添付する必要があります。この遺産分割協議書(案)が未成年者の権利を害している場合には、原則として申し立ては認められません。

 

つまり、未成年者(本事例では子供2人)の法定相続分(それぞれ遺産の1/4)を充たすような分割をしなくてはなりません。ただし、子供の養育費を親が負担することを前提に、親が財産を多く取得する等、明確な理由がある場合には、その旨を遺産分割協議書(案)に記載することで家庭裁判所に受理される場合もあります。


遺産分割協議書(案)の内容は、申し立て時に提出した後には変更できないため、不動産の表示の仕方など、はじめから司法書士と連携して実務を進める必要があります。

特別代理人選任手続きには「約3週間」必要に

◆代償分割により、未成年者の法定相続分を確保


本事例では、被相続人が不動産を所有しており、この不動産を早急に売却したいというご家族の希望がありました。すべての遺産を分割してから、その財産の一部を処分することも多いですが、遺産分割協議のための特別代理人選任手続きには3週間程度かかってしまいます。そのため、法定相続分により不動産を相続したものとして相続登記を行い、その後すぐに不動産を売却しました。


また、被相続人は、みなし相続財産となる死亡給付のある保険契約以外に、本来の相続財産となる医療給付のある(生存)保険契約や、子供2人を被保険者とする生命保険にも加入していました。こちらは、保険会社がすでに手続きを進め、母親がすべて取得する(契約者となる)ことになっていました。


したがって、相続後売却した不動産と生命保険に関する財産は、すでに取得する相続人と割合が決まっていたことになります。


これらを前提として、特別代理人選任申し立てのための遺産分割協議書(案)を作成するにあたり、残りの財産すべてを子供2人に均等に相続させても、法定相続分を満たすことができませんでした。結果、母親が子供2人に代償金を支払って遺産を分ける「代償分割」という方法を採用し、相続する遺産の調整を行うことになりました。

 

◆特別代理人の選任申し立てから選任審判書が届くまで


特別代理人の選任申し立ては、子供の住所地の家庭裁判所に対して親権者(本事例では母親)が行います。選任申立書に、未成年者と親権者の戸籍謄本や特別代理人候補者の住民票、遺産分割協議書(案)を添付して提出します。その後2週間程度で、家庭裁判所より文書で照会書が届きました。「申請した特別代理人が適任である理由」、「遺産分割協議書に記載した遺産以外に被相続人の遺産があるか、ある場合はどのように分割する予定か」という2点の照会がありました。これらに回答をしてから1週間程度で、母親の両親が選任された特別代理人選任審判書が送られてきました。

 

◆相続税申告書の作成と未成年者控除


遺産分割協議書に母親と、特別代理人である母親の両親が署名押印をして協議が成立したあと、相続税の申告書の作成に入りました。


相続税法においては、残された遺族の生活を保障するなどの観点から「未成年者控除」という規定があります。具体的には、対象となる未成年者が満20歳になるまでの年数に10万円を乗じて計算した金額を、算出された相続税から控除します。本事例では、相続税額が未成年者控除より少なかったため、控除できなかった金額は扶養義務者である母親の相続税額から控除しました。


平成30年6月に、成年年齢を20歳から18歳に引き下げる民法改正案が成立しましたが、相続税法の未成年者控除の年齢が引き下げられるかどうかは現状では未定*です。

 

*平成31年度税制改正で、税制上の成年年齢の引き下げがおこなわれることとなり、未成年者控除の年齢も20歳から18歳に引き下げられます(2022年4月1日以後の相続から適用)。(2019年4月3日追記)

 

相続税申告書も完成し、改めてご遺族にお会いしてその内容を説明する時間をいただきました。遺産分割協議や相続税の申告(本事例では、売却した不動産に関して譲渡所得の申告も行いました)の手続きで、葬儀からあっという間に半年が過ぎていました。残されたご遺族の悲しみはいかばかりかとお察しします。ただそのなかでも、税務申告等には期限や決まりごとが沢山あります。ご遺族の気持ちに寄り添いつつ、リードをしながら相続に関する業務を遂行していかなければならないと、強く心に思い、過ごした半年間でした。

 

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税理士法人田尻会計 税理士

平成28年3月税理士登録 日本FP協会AFP 登録政治資金監査人

横浜国立大学教育学部卒業。一般企業の経理部を経て、平成15年税理士法人田尻会計入社。
法人及び個人のお客様の監査・決算業務とともに、現在は相続・事業承継業務を多く担当する。
毎月お客様を訪問し丁寧に話を聞くことで、適切なアドバイスができるよう心掛けている。

著者紹介

連載相続専門税理士が事例で解説!「相続税申告」手続きの進め方

  • 【第1回】 成年年齢引き下げの影響は?「未成年者が相続人」の際の手続き

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