命とお金に関わる保険は、生きている限りほとんどの人にとって必要不可欠な金融商品ですが、近年、その種類や保障内容が多様化・複雑化しています。本記事では、保険ショップを経営する筆者が、保険の見直し・掛け替えについて注意すべき点を紹介します。

保険の見直しは必ず必要だが「不要な掛け替え」も多い

自分にピッタリの保険に加入しても、何度も修正が必要なら、そもそも保険加入のためにライフプランなんて立てても無駄なのではないかと考える人がいるかもしれません。でも、そういった考えだとイチかバチか、出たとこ勝負の人生になってしまいます。

 

自分一人で生きていくならそれでもかまいませんが、親がいて、兄弟がいて、ご主人がいて、奥様がいて、子どもがいるのが現実で、そういった人たちへの責任や将来の関わりをまったく考えないで生きていくわけにもいきません。ただ、ライフプランは一度作っておけば、修正が可能です。

 

例えばカーナビは、現在地がわからなければルート検索ができません。皆さんも、ライフプランの作成で「現在地」と「目的地」を確認してください。一度現在地と目的地をきちんと入力すれば、カーナビでは多少道を間違えても、渋滞回避で脇道にそれたとしても、改めて目的地までのルートを表示してくれます。

 

ライフプランの見直しも、それと同じことです。一度作成して現在地を家族で確認し、折を見て見直せば夢の目的地を見失わずに済むということです。

 

その意味で言えば、ライフプランを立てることよりも、必要に応じてライフプランのメンテナンス、つまり見直しをすることのほうが重要と言えるかもしれません。

 

ところが、お客様から見直しの相談を受けて話を聞いてみると、実際には保険を加入し直さなくてもよい場合もあります。そういったときにはその理由も説明して、そのままの保険の継続をお勧めします。

 

また、お客様の過去に加入してきた保険の履歴を見ると、加入・見直しの必要がないのに見直されているケースがあります。保険に詳しくないお客様が、プランナーや外交員に言われるままに掛け替えてきた場合がほとんどです。

 

なぜそのようなことになったのかはわかりません。お客様にメリットのある掛け替えならよいのですが、実際にはそうではないケースもあることに驚きます。

 

契約件数を稼ぎたかったのか、新商品の契約数を増やしたかったのか、実際のところはわかりませんが、保険のプロでありお客様のメリットを第一に考えるのであれば、決してしないような見直しが行われているケースも珍しくはありません。

 

そういった見直しをするプランナーは、まさにコミッションでしか動いていないポンコツプランナーです。改正保険業法の施行で多くは淘汰されていきましたが、そのようなポンコツプランナーから我が身を守るためには、お客様自身が保険というものの基本的な考え方=「ライフプランとデスプラン」を理解していただくことが得策です。

 

なにも、お客様に保険のプロになれと言っているわけではありません。ただ、お客様が保険とライフプランの関係、これまで何度も説明してきたオフェンスとディフェンスの関係を理解できていれば、ご自身のライフプランを把握できるはずです。

 

そうすれば、もしポンコツプランナーが不要の見直しを勧めてきた場合でも、「これは何か違う」と気が付くことができるでしょう。

 

これもライフプランを作り、何のために保険に加入しているのか、その目的を把握していればこそ、ピンとくるのです。もし何も考えていなければ、絶対に気付くことはできないでしょう。だからこそ、現実に、必要のない見直しを繰り返してきたお客様が相談にいらっしゃるのです。

 

自衛のためにも、やはり自分が加入している保険の内容は理解しておきましょう。「命の値段」です!

見直しがトラブルにつながることもある

保険の見直しのポイントは、やはりライフプランが人それぞれであるように、ケースバイケースです。10人いれば、10通りの見直しプランがありますから、絶対ということはありません。ただ、すべての人に気を付けてほしいのは、保険の見直しによるトラブルです。

 

いくつかの例をご紹介しましょう。代表的なのは、無保険期間が発生する例です。

 

意外に多いのが、自分で保険を勉強し、掛け替えの手続きもやろうとしたお客様にごくまれにあることなのですが、これまでA社の保険に加入していたのをB社に掛け替えようとして、先にA社の保険を解約してしまうパターンです。

 

保険に加入するときには診査があり、申し込んだとしてもその日のうちにすぐに加入できるわけではありません。申し込んでから診査が行われ、加入できるか否かの結果が出るまでに、ほとんどの保険会社で1週間から2週間程度の時間が必要になります。

 

フライングでA社の保険を解約してしまうと、B社の診査に通過して無事に保険に加入できるまでの間、無保険の期間ができてしまいます。この無保険の期間に何事もなければよいですが、その間に何もないとは誰も断言できません。

 

また、無保険の間に何事もなく、B社の保険にも無事に加入できれば、結果的に問題はありませんが、もしB社の保険加入を断られてしまったとしたらどうなるでしょうか。

 

B社が加入を断ったということは、何かしら問題があったに違いありません。もし健康状態に問題があったとすれば、一定期間保険に加入できなくなる可能性があるばかりでなく、もし加入できたとしても割高な保険など限られた保険にしか加入できなくなる可能性があります。

 

つまり、当初描いていた保険の見直しプランは崩壊し、下手をすると、もともと加入していたA社の保険より条件の悪い保険にしか加入できなくなってしまう可能性が高まります。

 

保険を見直して掛け替えをするのであれば、まず新しい保険に加入してから元の保険を解約するのが鉄則です。もしかしたら加入時期によっては保険料が重複してかかるかもしれませんが、それは必要経費ととらえてください。

 

もう一つよくあるのが、家族に黙って見直しをしてしまったというケースです。

 

ある男性が一人でプランナーのもとを訪れ、保険の見直しを依頼しました。さまざまな要望を聞いたうえで、それまで8000万円だった死亡保障を3000万円に減額することにしました。プランナーは、男性が当然奥様の了承を得ていると思い手続きを行いました。

 

ところが男性は奥様に保険を見直したことを告げておらず、奥様は過去に「8000万円の死亡保険に加入している」と聞いたことがあるだけでその後は何も知らされていませんでした。

 

数年後に男性が亡くなり、奥様が保険給付を請求すると、いつの間にか死亡保険が減額されています。驚いて保険会社に問い合わせ、初めて男性が見直しの手続きを行ったことを知りました。

 

これはトラブルというか、残された家族にしてみれば「こんなはずでは……」という役に立たない保険の代表例とも言えます。

 

私の会社では既婚者が保険に加入する、もしくは見直しを行う場合には、できる限り配偶者と一緒に来店していただき、保険に関して夫婦が共通の認識を持ってもらえるように配慮しています。それを怠ると、この例のようにご主人が勝手に保険を見直して、奥様はそれを知らなかったということになるのです。

 

実際、このようなケースはものすごい数があります。それ以上に、ご主人が、または奥様がどのような保険に加入しているのか互いに知らない夫婦もたくさんいます。

 

「そんな話は聞いていない」と思ったところで、当の本人を問い詰めることは不可能です。

 

保険は自分一人のものではありません。ライフプランに基づいて組んだ保険プランは、やはり夫婦で、そして家族で共有しておくべきものです。無用のトラブルを招かないために、そしていざというときに家族をがっかりさせないために、保険の見直しは家族で行いましょう。

初めて「保険の見直し」をする際の注意点

これまで、言われるままに保険に加入し、ずっと放置してきた、もしくは勧められるままに保険の見直しをしてきたという方は、なるべく早めに、ライフプランに基づいた見直しをしてみましょう。加入してどれぐらいの年月が経過しているかはわかりませんが、もし一度も見直しをしていないのであれば、確実に状況は変わっているはずです。

 

初めて保険ショップなどで見直しを行うときには、現在加入している保険の証券などを持参するとよいでしょう。

 

よく保険の見直しを求めて「今加入している保険はあるのだけれど、他に何か良い保険はないでしょうか」と聞きに来るお客様がいらっしゃいますが、今加入している保険がわからないと、何が良い保険にあたるのか判断のしようがありません。

 

まず、保険証券でどのような保険に加入しているのかを確認し、現在のライフプランと照らし合わせて保障が十分なのか、それとも足りていないのかを見ていきます。残すものは残し、加入し直すものはし直す。すべてを新しくすることだけが保険の見直しではありません。ただ、現状の保険に縛られることなく、一度まっさらな状態と仮定してライフプランを作成します。

 

もちろん、ふらっと買い物帰りに来店してくださったお客様などは、保険証券などをお持ちでない方がほとんどですから、次回の来店予約などのご案内をします。私たちはお客様に来店していただいたからには、少しでも何か役立つ情報を持って帰っていただきたいと思っていますし、次回ご来店の際にはさらにお客様の要望に応えようと考えています。

 

それも、一人でも多くの人に保険というものの本当の意義を理解していただきたいという想いであり、またすべての人がそれぞれに合った保険に加入してほしいという想いでもあります。

メンテナンスなしの保険は役に立たない

日本人の保険加入率は、世界的に見てもかなり高い数字を示しています。2013年の公益財団法人生命保険文化センターの調査による日本人の生命保険加入率は、男性80.9%、女性81.9%と、男女ともに80%を超える高い数値を示しています。

 

世代別に見ると、20代は男女ともに50%台と低い数値ですが、これは「まだ若いから大丈夫」という認識から、保険を考えるに至っていない現状が見て取れます。

 

それでも、世界的に見れば日本は保険大国と言っていいほど、保険の加入率は高い数値を示しています。2011年のデータですが、世界で最も保険料収入が多い国はアメリカの約5370億ドル、次いで2番目が日本の約5240億ドル(約41兆円)で、世界の生命保険保険料の合計に占める割合は19.97%です(スイス再保険会社sigma)。

 

そんな高額な掛け金を払っているにもかかわらず、私がこれまで接してきたお客様を見る限り、8割のお客様が自分に合った保険に加入しているとは言い難い状態でした。これは日本人の保険に対する認識がまだまだ低いからであると考えます。

 

「とりあえず加入しておけば安心」とか、「保険はお守りのようなもの」といった認識が根強く、「難しくてよくわからないから、お任せします」と丸投げしてしまっている状況が現在も続いているのです。

 

だからこそ、これほど多くの人が保険に加入していながら、自分の保険がどういうものなのかよくわからないという本末転倒な状態でも疑問を感じないのでしょう。

 

でも冷静に考えればすぐわかるはずなのですが、自分でも何だかよくわからないものに年間数十万円ものお金を払っていること自体が、そもそもおかしいのです。

 

まず、自分が今加入している保険や、加入すべき保険をしっかりと理解することです。その次に、ライフプランを見直し、まっさらな状態で必要な保険を組み直してみます。これは、 自分のサイズを正確に測るのと同じことです。

 

そうすることにより現在の保険による保障で十分なのか、足りていないのか、足りていないのだとしたら何を追加しなければならないのか、そういったことが具体的に見えるようになります。

 

ライフプランが変わったら保険の見直しをするのはもちろんなのですが、それ以前にライフプランを立てずに保険に加入したすべての人たちに、すぐにでも保険の見直しをしてほしいと切に願います。

 

そうしないと、現在保険に加入している人のほとんどが、万が一のときに役に立たない保険に加入していることになるからです。

 

限られた収入の中から、決して安くはない保険料を払っているにもかかわらず、家族の将来を守ることができない保険にしか加入できていないのはあまりにも「お金」がもったいないとしか言いようがありません。

 

しかも、本人がそのことに気が付いていません。自分が加入している保険が、役に立たない保険だったと気付くときには、本人はすでにこの世になく、残された家族が「こんなはずでは……」と途方に暮れることになるのです。

 

どうか、保険に加入しているからといって安心しないでください。保険で一番大切なのは、メンテナンスです。

 

メンテナンスをしていない保険は、保険としては「半人前」。皆さんの人生を背負わされた保険が可愛そうかもしれませんね(苦笑)。そして、お守りにもならない、役立たずになるのです。

 

お金を払い、本記事を読んだ皆さんは、保険料という大金をはたいたうえに、役に立たない保険にしか加入していないということが引き起こす大惨事を、改めて頭に叩き込んでおいてください。

 

死亡保険金は「命の値段」

死亡保険金は「命の値段」

杉山 将樹

幻冬舎メディアコンサルティング

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