命とお金に関わる保険は、生きている限りほとんどの人にとって必要不可欠な金融商品ですが、近年、その種類や保障内容が多様化・複雑化しています。本記事では、保険ショップを経営する筆者が、保険の「見直し」のタイミングを解説します。

自分に環境の変化があった場合は「保険」も見直すべき

どんなに厳密にライフプランニングを行って作った保険でも、そのまま放置しておいたら絶対に機能しなくなります。

 

子どもが2人と考えていたのに、実際は3人目が生まれたとか、公立の学校に進学させると言っていたのに私立に進学したとか、細かいことを言い出したら切りがないぐらいに、人生は計画通りにはいきません。

 

私がかつて担当していたお客様の中には、銀行の窓口から電話をしてきた人もいました。

 

電話に出てみると、「マンションのローンの繰り上げ返済、今のタイミングでよいですか」と聞かれたことがあります。

 

その他にも車を買い替えたいとか、子どもが学校に入学するのでとか、そういったとても細かいことでも、プランニングを見直したいと希望されるお客様はたくさんいらっしゃいます。

 

少し極端な例なのではと思うかもしれませんが、彼らはその度に保険をメンテナンスして、その時点で足りているもの、足りていないものについて見直しをかけています。それは「自分のことを把握する」という意味もあります。

 

これは私の習慣ですが、自分のウエストや体重を、常に把握しています。自分の中で基準となる数値があって、ウエストも体重もその範囲内に収まっていないとなんだか気持ちが悪いのです。

 

ですから、毎週日曜日の夜9時から12時の間に体重を測ります。70 キロから70.5キロの間に入っていないと落ち着かない。そうしないと自分のベストな体調管理ができないのです。

 

ところが世の中には普段、体重管理などまったくせずに、年に一度、会社の健康診断で体重を測るだけという人もいます。

 

年に一度の測定で、うすうす気付いてはいたけれど「随分と太ったな」とか「メタボ一歩手前じゃないか」という事実を改めて、突き付けられることになります。

 

これは、自分をメンテナンスできているか否かの違いです。私は毎週自分の体重を測り、管理しているからこそ、少しでもそこからはみ出したらすぐにメンテナンスを行います。

 

その一方で、年に一度しか体重を測らない人は、いつの間にか太ってしまって基準の体重 から大きく逸脱するまで気が付かないことになる、そういうことです。

 

増えてしまった体重も、100グラム単位で調整するのはそれほど難しいことではありません。しかし、それが5キロになってしまうと大変で、元に戻すのを諦めてしまう人さえいるでしょう。

 

これは保険のライフプランニングに関しても同じことです。保険は命とお金の話だということが認識できていれば、その重要性はとても高いものであることもわかるはずです。

 

ですから、体重測定のように毎週とまで言うのは大げさですが、自分の環境に何かしらの変化があった場合には、保険についても見直しを考えるという意識を持ちましょう。

 

こまめにメンテナンスをしておけば、大幅な軌道修正をしなくても済みますし、取り返しのつかないことになる前にしかるべき手を打つことができます。

ライフプランの転換期が、保険の見直し時期

では、保険の見直しは、どのようなタイミングで行うとよいのでしょうか。

 

ひと言で言ってしまうと、「人それぞれ」です。先ほども言ったようにローンの繰り上げ返済や車の買い替えのときにもプランナーに確認の電話をかけてくるお客様もいるぐらいですから、細かいことを言い出したらきりがありません。

 

ただ、それだとわかりにくいという意見もあるので、ある程度皆さんに共通して起こり得るライフプランの転換期、保険の見直し時期について考えてみましょう。

 

① 家族が増えたとき・減ったとき

 

まず、最初に考えるのは家族が増えたときのことです。家族が増えたときといって最初に思い浮かぶのは、結婚でしょう。

 

独身時代に加入した保険は、自分の将来、そして親のためを考えた条件で加入した保険のはずです。多くの人は、受取人を親に設定していることでしょう。

 

結婚すると配偶者ができますし、将来的には子どももできるかもしれません。

 

結婚した段階で、保険金の受取人の名義を親から配偶者に変更するケースが多いのですが、なるべくなら名義変更だけでなく、保険全体の見直しも行うことをお勧めします。

 

何しろ独身時代のライフプランと違い、配偶者という責任を持たなければならない家族が増えたわけですから、保障の内容の見直しは必須です。

 

また子どもが生まれた場合も、家族が増え、責任が増えるわけですから、当然保障の見直しが必要です。

 

さらに、子どもが生まれると将来の教育資金なども必要になりますし、車の買い替えや家の引っ越しなどで生活が変化する可能性も高くなります。そういったことも加味して、保険の見直しを考えるとよいでしょう。

 

そして、くどいほど繰り返しますが保険の見直しは夫婦が別々に行うのではなく、必ず2人揃って行うのが鉄則です。共通の意思を持ってライフプランを作成し、保険プランを見直しましょう。

 

女性で、それまで保険に加入していなかったような場合は、結婚を機に今後の妊娠・出産の可能性も視野に入れて、早めに保険に加入しましょう。

 

収入のない専業主婦に保険は必要ないと考える人もいますが、それも古い考え方と言わざるを得ません。

 

保険という側面から考えると、一家の大黒柱はむしろ女性であると言っても過言ではないからです。

 

夫婦で保険を考えるとき、どうしてもご主人の保険を手厚く設定するパターンが多いのですが、実は奥様である女性にこそ手厚い保障が必要ではないかと考えます。

 

奥様が亡くなったとします。子どもがいた場合、ご主人は仕事に家事と育児が加わります。残業や休日出勤は難しくなり、これまでのような働き方ができなくなる可能性は高いでしょう。また、外食が増え、家事のアウトソーシングをお願いするにしてもお金がかかりますし、ベビーシッターなどにかかるお金も必要になります。

 

奥様が入院したとしても、同じようなことが言えます。家事をお金に換算すると、実はものすごい金額になるのです。

 

そんなときに奥様が保険に加入していれば、その給付金で何とかやりくりが可能です。

 

一方、ご主人が亡くなった場合です。世帯主が亡くなると、遺族年金が給付されます。大抵、一家の世帯主はご主人になっていますから、奥様はご主人の遺族年金を受け取ることができます。

 

また、ご主人の名義で住宅ローンを組んでいた場合、団体信用生命保険によってそれ以降のローン残金は相殺され、負担はなくなります。

 

ご主人が将来の生活を保障できるだけの死亡保険に加入していたとすれば、残された奥様と子どもは安心して生活を送ることができます。

 

ここまで考えを巡らせていただければ、実はご主人(世帯主)が亡くなるより奥様が亡くなるほうが大変だということがよくわかるでしょう。

 

2014年4月からは、共働きだった父子家庭にも遺族基礎年金が給付されるようになりましたが、依然としてご主人が亡くなった場合を考えて制度はつくられています。

 

今後はこの制度も変わっていく可能性もありますが、現段階では奥様が亡くなった場合に家庭をこれまで通り維持できるかどうかを考えて、女性の保険をおろそかにしないように見直すことをお勧めします。

 

次に家族が減ったときを考えます。

 

家族が減るということは、二つの意味があります。一つは収入が減るということ。もう一つは保障の対象が減るということです。

 

ご夫婦のどちらかが亡くなった場合、当然ながら家計の収入も減ります。もちろん、保険は人が亡くなったときに保険金がおりるのですが、残された方のライフプランも大幅に変わります。したがって、配偶者が亡くなったときには、これから自分がどのように生きていくかも踏まえて、自身の保険についても見直しが必要です。

 

もう一つの、保障の対象が減る場合ですが、これは例えば子どもが独立して家を出るときなどが考えられます。

 

子どもが小さいうちは、教育費もかかりますし、生活全般の面倒を親が見なければなりません。その分の保障は当然保険のプランでも考慮しておかなければならないでしょう。

 

しかし子どもが成長して独立すると、その段階である程度親の役割は一段落したと考えます。自分のことは自分でできるようになるのが独立ですから、小さな頃のように、手厚く保障を準備しておかなくてもよくなります。

 

その分の保障を削れば、保険料をスリム化できるかもしれませんし、その分を自分たちの老後の資金として保険を組み替えることもできるでしょう。

 

その他としては、親が扶養家族になったとき、離婚したときなども家族が増減しますし、ライフプランも大きく変わりますから保険の見直しが必要になります。

 

② 収入に変動があったとき

 

転職や昇進などで、収入に変動があると、ライフプランにも影響を与えます。また、景気の動向なども関係してくるかもしれません。

 

よく、「保険料を安くしたい」という理由で見直しの相談にいらっしゃるお客様がいます。保険料を安くしたい理由には二通りあって、一つは「今の保険料でも払えるけれど、いくななんでも払い過ぎてはいないかな?」という場合と、もう一つは「収入が少なくなってしまったので、保険料を安くして負担を軽くしたい」という場合です。

 

転職や独立起業など自らの意思で収入が変動することもあるでしょうし、リストラや勤め先の倒産といった想定外の要因で収入が途絶えるケースもあるでしょう。

 

保険料を安くするために保障を削るのは、なるべくなら避けておきたいところですが、収入が減ってしまったにもかかわらず、飲まず食わずになってでも保険料を支払えとは言えません。

 

そのような場合は、どれだけ保険料のために予算が組めるのか、家計の収支を見直すとともに、保障内容も改めて見直し、最低限どれだけの保障が確保できるかを予算とのバランスをとりながら調整します。

 

そして、お客様に「収入がまた安定して予算が組めるようになったら、改めて保険を見直しましょう」と伝えます。

 

これとは反対に、収入が増える場合もあります。

 

昇給や転職で大幅に収入が増えたような場合、生活レベルに大きな変化がなければそのまま保険を見直さなくてもよい可能性もあります。

 

しかし収入が増えたことによって生活レベルが格段に上がったという場合には、そのレベルを将来的に維持し続けようと思うのなら、やはり保険による備えも手厚くする必要があるでしょう。

 

もしくは生活レベルは変わらなくても、収入が増えた分を貯蓄型の保険で将来の備えに充てたりなど、資産形成という意味で保険の見直しを行うこともできます。

 

その他としては、専業主婦だった奥様が働きに出たとき、もしくは共働きだった奥様が仕事をやめたとき、定年を迎えたときなども、世帯年収に変動が出ますから見直しのタイミングと言えます。

 

③ 資産に変動があったとき

 

例えば、家を購入する、車を買い替えるなど、資産に大きな変動があった場合も保険の見直しのタイミングです。

 

家の購入時に住宅ローンを利用した場合、大抵は団体信用生命保険に加入することになります。前にも触れましたがローンの契約者が返済中に亡くなった場合、残りの返済をこの団体信用生命保険の保険金によって相殺するというものです。

 

この場合、住居費の負担がなくなりますから、その分死亡保障を減額できる可能性があります。

 

それ以外にも住宅ローンの繰り上げ返済、住宅のリフォームなどによって資産が大きく変動するときも、保険の見直しのタイミングと言えます。

 

また、親が亡くなって遺産を相続した、株式投資などで大幅に資産が増減した場合も見直しのタイミングとして考えられるかもしれません。

 

保険は自分が死んだ後の家族の将来を守るためのものであるという大前提からすれば、預貯金の額が増えれば、その分の死亡保障を減額してもかまわないということになります。

 

ただ、資産管理に自信がない人にとって、預貯金だとついつい使ってしまい、気が付いたらいつの間にか資産が減っていたという危険性があります。定期預貯金などにして簡単には引き出せないような対策をとるか、もしくは心理的に解約しにくい貯蓄型保険で資産を守るという考え方もありますから、プランナーに相談してみるとよいでしょう。

 

子どもの進学先が国公立の予定から私立になったなど、見直しのタイミングは人それぞれです。

 

ライフプランにおいて、何が必要かを自らが常に理解できる状態にしておくこと。保険加入後も、こうしたメンテナンスを続けることが理想と言えるでしょう。

 

死亡保険金は「命の値段」

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杉山 将樹

幻冬舎メディアコンサルティング

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