超富裕層が考える「円と外貨」の適正な保有比率は?

本記事では、資産の外貨比率について、ある超富裕層の事例を見ていきます。※本連載では、ペレグリン・ウェルス・サービシズ株式会社 代表取締役の山口聰氏に、超富裕層の資産運用のエピソードから、資産防衛のヒントを解説していただきます。

金融商品の選択の前に「外貨の保有比率」を考える

今回は、外貨資産の保有にこだわるお客様の考え方をご紹介いたします。

 

お客様は金融関係の会社を約50年前に創業され、10数年前に大手金融グループにM&Aで売却し、一代で資産を築き上げた70歳代のJ様です。現在は約30億円に上る金融資産や不動産資産の運用管理を行う傍ら、息子様が中心となって様々な事業を手掛けておられます。

 

その息子様からお聞きした話ですが、J様は若くして起業し、随分と苦労しながらも、人一倍の勉強と努力で事業を成功させたそうです。息子様も会社を売却する前は役員としてお父様であるJ様を支え、二人三脚で経営されてきました。

 

このJ様と息子様の資産運用をサポートしていると、お二人の立場の違いでしょうか、お父様はご自身の考えを重視して判断は大胆、比較的ハイリスクハイリターンを好まれる傾向がありました。一方の息子様は慎重派。提案をよく聞いて熟慮した上に非常に慎重な判断をされる方で、ローリスクローリターンを好まれる傾向でした。

 

もちろん投資経験ではJ様の方が圧倒的に豊富です。聞けば国内株式から新興国関連への投資まで一通り試してこられました。そして色々と試行錯誤した結果、J様は最終的には自分の考えや投資スタンスをダイレクトに反映できる仕組債を中心に運用を行うようになりました。仕組債はこれまでにも何度か触れてきました通り、お客様の許容できるリスクをベースにオーダーメイドで金融商品を仕立てるもので、超富裕層の資産運用に積極的に活用されています。

 

ただ、多くの金融商品を活用している場合、外貨の保有バランスにまで気が回らないことがあります。どのように資産運用を行うかということの前に、どのような通貨配分で資産を保有していくか、ということが実はとても重要なポイントなのです。

 

ご存じの通り、銀行をはじめ、証券会社や保険会社でも外貨商品を保有することをお勧めしています。しかし多くの場合は商品をお勧めすることが第一目的で、どういった考え方で資産の何割くらいを外貨で保有したらよいか、という前提の話は必ずしも十分にされていないのではないでしょうか。

 

なぜなら、金融商品は「売るために開発された」商品であり、外貨資産を保有したほうがよいと思う富裕層に売り込むためのものなのです。本来、金融商品は資産運用や資産防衛のための手段であるべきものですが、販売自体が目的となってしまっていることが多いため、外貨資産を保有する目的や配分についての話がおろそかになってしまうのです。

 

そもそも金融資産の内、外貨資産を保有する目的は何でしょうか。ここで、将来の承継を見越して外貨資産の保有にこだわるJ様のお考えを紹介します。

日本の未来を考えて「米ドル中心」で外貨を保有

外貨資産の保有に関して、資産運用の観点では低金利の円に対して高金利での運用が可能になることや、円安になった場合に円換算での資産額が増えるといった経済効果が期待できます。しかし、円高になった場合は評価損が発生してしまいます。

 

外貨運用では円高はリスクと捉えられがちですが、評価損が出ている状態でも株式や債券のようにどこかで換金する必要はなく、通貨としての価値があるため保有し続けることが可能です。米ドルなどの外貨資産を保有している場合は、円高で損をしたというよりも、円高のメリットを受けそこなったと考えるほうが実情に即しています。

 

円高になると、米ドルなどの外貨に対して円資産は価値が上昇します。円からよりたくさんの外貨に換えることができます。日本の企業は原材料やエネルギーなど多くのものを輸入しているので、円高はコストの減少要因となり、日常品の物価も低下します。これは円の購買力が上昇した結果です。また、わたしたちの収入も、金額が同じであっても諸外国から見れば実質的な価値は上昇していることになります。円高のときは安く海外旅行に行けることを考えると一番わかりやすいです。

 

一方、円安になると、すでに保有している外貨資産の評価額は上昇し、外貨収入を持つ人にもメリットがあります。日本の輸出企業が海外で得た外貨を円に戻す金額が増え、輸出企業の業績も好調となり、競争力が高まります。すると輸出製品を作る製造業だけでなく、原材料を提供する会社や関連する会社の取引も増え、景気がよくなっていきます。

 

どちらの立場でもそれぞれにメリットとデメリットがあります。しかし、将来のある時点で円高と円安どちらに進んでいるかはわかりません。そこで、あるとき、将来に備える資産運用という視点で、J様は外貨資産を持たないまま円安が進行した場合のデメリットを考えてみたのです。

 

日本には、人口が減少していくリスクや、政府の財政状況の悪化から国の借金が増加し続けるリスクがあります。将来、労働力が減少して企業の経済活動が停滞すると、収入も減少して景気は悪化してしまいます。また日本は借金を減らすことがさらに難しくなり、日本の国力は弱くなってしまいます。そうなると海外から見た円の価値は減少するため、円を保有する魅力が失せ、円を売る圧力が強くなることから円安が進行していく可能性があります。

 

円安が進行した状況では日常品の物価が上昇してしまいます。通貨危機とまでいかなくても日本全体が弱体化することでわたしたちの生活レベルの維持が難しくなっていくかもしれません。

 

そこでJ様は考えました。円安が進行した場合に備える手軽な保険は、外貨資産を保有することです。将来も日本で生活する予定ですから、資産は円が基本ですが、日本の将来にまったく不安が無く、100%信頼がおける場合は別として、その不安の度合いだけ米ドルを中心とした外貨資産を保有することを検討してみました。そして結論として、金融資産の半分を今は米ドルで保有して運用しています。

 

超富裕層が海外のプライベートバンクなどで運用を委託するような本格的なポートフォリオを始め、いわゆる分散投資を行う場合は、投資先資産(アセットクラス)と通貨は切り離して考えます。J様もご自身の考えで約半分のドル資産を保有し、その上でドル資産の運用と円資産の運用は別途検討する、というスタンスでいらっしゃいます。

 

 まとめ 

いかがでしたでしょうか。以下に、J様のこだわりを整理しました。

 

①金融商品と外貨資産は切り離して考える

②実際の生活や実体経済と為替との関係を考える

③円安が進行してしまった場合のリスクを考える

④外貨資産(米ドル)を円安進行への備えと考える

⑤日本の将来への不安分は外貨資産に置き換えて保有割合を考える

⑥外貨資産を保有する割合をまず確認してから個々の金融商品を考える

 

外貨を資産として考える場合は、個別の金融商品を検討する前に全体の配分についてまず確認することがポイントです。その上で必要な金融商品を検討していくとよいでしょう。参考までに、日本の公的年金の運用資産では、基本の資産構成割合として、約4割を外貨資産に充てています。

 

ペレグリン・ウェルス・サービシズ株式会社
 代表取締役

1978年生まれ。同志社大学法学部卒業後、大和証券株式会社入社。大阪、東京での支店勤務と人事部付きインストラクターを経験後、アメリカン・ライフ・インシュアランス・カンパニー営業教育本部にてコンサルティングセールス研修の企画実施業務に携わる。その後バークレイズ・ウェルス・サービシズへ移り、日系メガバンクとの協働部門にて超富裕層向け資産コンサルティング業務に従事。クレディ・スイス証券ブライべートバンキング本部を経て2017年にIFA法人ペレグリン・ウェルス・サービシズ株式会社を設立。これまでの経験を生かし、独立系金融アドバイザーとしてお客様の気持ちに寄り添う資産運用コンサルティングサービスの提供を心掛けている。
国際公認投資アナリストCIIA(R)
公益社団法人 日本証券アナリスト協会検定会員CMA(R)

著者紹介

連載金融資産5億円以上!超富裕層のユニークな運用術から学ぶ「資産防衛のヒント」

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