「税金のプロである税理士ならば、相続税対策に関して総合的なアドバイスをしてくれるのでは?」…残念ながらそうではありません。多くの税理士は、顧問先となる法人税の申告、個人の確定申告をメインの業務としているため、法人税、所得税には詳しいものの、相続に関しては不慣れなのです。そこで本記事では、相続に強い税理士を選ぶための7つのチェックポイントを紹介します。

実績、人脈、家族への気配り…

相続に強い税理士を選ぶ7つのチェック項目を挙げていきます。

 

(1)相続税申告の実績が豊富か

 

相続税の申告および相続対策は、机上の知識だけでは太刀打ちできません。特に、不動産などの評価や特例の適用などについては、数多くの経験と交渉力も必要となります。おおよその目安としては、最低限、年間10件程度の申告の実績を擁しているかは確認しておきたいものです。

 

(2)税務調査などに際し、しっかりと対応してくれるか

 

税務署から指摘・質問があった際に、しっかりと根拠を示し、対応ができるかどうか。税務調査などでの税務職員との接し方についてもチェックしておくとよいでしょう。

 

(3)相続税法や関連の政省令・通達などに精通している

 

税法は頻繁に変更されます。税法や関連する通達などの変更があった際に、きちんと伝えてくれるか。そして、対応策について助言をしてくれるか。相続時だけでなく、普段からのコミュニケーションのあり方についても重視すべきです。

 

(4)全ての財産について、相談できるか

 

相続財産の一部を税理士に隠し、結果的に税理士が不十分な情報をもとに申告し、税務調査で指摘されるようなことになると、信頼関係も損なわれかねません。大前提として、お金回りの事情を洗いざらい伝えられる信頼に値する人かどうかも含め、適切な相続対策を行えるよう、自分の保有資産に関して情報共有できる人を選びましょう。

 

(5)相続対策全体で節税や納税対策を考えているか

 

適切な相続対策は、資産の構成によっても異なります。賃貸経営だけ、保険だけ、といった〝部分最適〟な対策ではなく、資産全体を見て判断してくれる人を選びましょう。また、節税対策ありきだけでなく、遺産分割、納税資金対策までを視野に入れ、助言してくれるかどうかも重要です。

 

(6)家族関係にも気配りできるか

 

相続で一切モメないケースはほぼありえません。日頃からプライベートな家族関係についてもフランクに会話ができ、遺産分割において、家族の関係性、それぞれの思いを配慮してくれそうな人かどうか。人間性や相性も大事です。

 

(7)相続関係の弁護士、司法書士などの士業人脈を持っているか

 

遺産分割でもめ、訴訟に発展するリスクもありえます。万一、弁護士など他の士業が必要になった際に、信頼に値する人を迅速に紹介してくれるかどうか。付き合いのある士業人脈についても確認しておくとよいでしょう。

安心して任せられる「相続のプロ」の条件とは

住宅メーカーの営業マンが一方的に勧めてくる賃貸経営や、気付かないままに相続税に疎い税理士に頼ってしまうリスク。それ以外にも、保険会社、地域の工務店、銀行、不動産仲介業者など、個々の得意分野でそれぞれが売りたい商品・サービスを提案してくる相続ビジネスのプレイヤーは数多く存在します。

 

もちろん一つ一つの情報や対策の大半は、相続税対策として見るならば有効でしょう。しかし、重要なのは、その内容や方法などが、その家の将来像、目指す設計図に合っているかです。

 

また、これをやればOKという万能策はなく、どの対策にも長所と短所が必ずあります。さらに、その対策を実行することのリスクとコスト、さらには実行しないことのリスクとコストをも見極め、慎重に判断することが肝要なのです。

 

そこで頼りにしたいのが、「どれが最も良い選択なのか」「さまざまな対策をどう組み合わせるべきか」を中立的な立場で考え、交通整理をしてくれる専門家、プロの存在です。

 

税理士や司法書士、弁護士などの資格者・専門家が、その道のプロであることは間違いありません。税金の申告ができるのは税理士だけですし、不動産の登記ができるのは司法書士、万一、調停や法廷での審判になれば弁護士の存在が必須となります。

 

しかし、相続で大事なのは〝部分最適〟ではなく、〝全体最適〟です。よって、あるべき相続のプロとは、こうした資格保有者・専門家を上手にコントロール、コーディネートできる実務家にほかならないというのが私の考えです。知識だけでなく、豊富な経験かつ家族の思いを汲み、相続をまとめあげる人間力をも求められることは言うまでもありません。

 

では、あくまでも顧客の立場で財産を守ってくれる相続のプロは、どのようにして 探したらいいのでしょう。

 

今やウェブで検索しただけでも、相続診断士、相続カウンセラー、相続アドバイザー、終活カウンセラー、相続士、相続プランナー、相続対策専門士、相続鑑定士など、さまざまな資格を持った数多くの専門家がいます。相続に注目が集まり、選択肢が増えるのは悪いことではありませんが、明らかにブームに乗って誕生したような資格もあり、玉石混交といった様相を呈しています。

 

ちなみに、これらは全て民間資格です。残念ながら、相続には「この資格を持っていさえすればいい」という公的な資格は存在しないのです。

 

大事なポイントとしては、資格や看板だけに惑わされないことでしょう。

 

口コミなどを参考に、まずは複数の専門家に会ってみてはいかがでしょうか。

 

相談に親身に乗ってくれるか。相続の経験値はどうか。中立な立場で適切な助言をしてくれるか。特定の商品やサービスをすぐに売りつけようとしないか。先に挙げた税理士選びのポイントとからめ、

 

総合的な視点から、しっかり判断しましょう。会って話すなかで、「?」と思うポイントがあれば、遠慮なく別を当たればいいのです。妥協や遠慮は禁物です。

 

 

秋山 哲男

株式会社財産ブレーントラスト 代表取締役

 

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    ※ 本連載は、2016年10月9日刊行の書籍『あなたの資産を食い潰す「ブラック相続対策」』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

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    秋山 哲男

    幻冬舎メディアコンサルティング

    恐ろしい「相続対策の裏側」と「知っておくべきポイント」を大公開! ・相続税対策のうち8割が実は不要!? ・バックマージンが横行する業界の実態 ・相続後にお荷物と化す無意味なアパート・マンション ・税理士のうち約半…

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