ニーズを先読みし、購入を決めさせる「チラシ」の効果
相手を知り、適切なタイミングでセールスを行うということを、ここでは少し違う角度からお話しします。
それは「運ぶドリブル」と「パス」の違いに例えることができます。どちらも攻撃の手段としてはとても効果的なものです。スルーパスの醍醐味。ロシアW杯でも、柴崎岳選手の効果的なパスが何度も敵陣を切り裂きました。
私が尊敬する中田英寿選手の強みもまた、相手を切り裂くスルーパスにありました。ボールを出す場所、コントロールされたスピード、相手との駆け引き。それらがすべてうまくいった時、パスがゴールの扉を開く魔法の鍵となります。
そんな魔法の鍵を手にするために必要なこととは、グラウンド全体を俯瞰することのできる高い視点です。それは、相手だけでなく、味方選手の位置をも正確に把握し、次の展開を瞬時に予測すること。今はまだ適切な場所ではなくても、ほんの数秒後に適切になるはずの場所。
そんな場所こそが「絶妙」という形容詞にふさわしい場所です。そして、そのようにして見つけられたほんの数秒先が、絶妙なタイミングに当たります。
ビジネスにおいては、チラシがパスに当たると私は考えています。
少し先のニーズを予測して、準備し、購入を決定付けるようにチラシを投入すること。あまり狭過ぎる視野も、今だけに対するこだわりも、どちらも顧客のニーズにとって、訴えかけるところは少ないと言ってよいでしょう。
マーケットの状況を俯瞰して作られたチラシ。それこそが、潜在的顧客の躊躇を切り裂くスルーパスになります。また、絶妙なパスは、受け手のことをよく考えたパスでもあります。時々、FWが絶対に追い付けないようなパスを出して平然としている選手を目にしますが、あれはパスの意味を勘違いしているとしか思えません。
敵の力量はもちろんですが、味方の力量、特にパスの受け手の力量についてもしっかり把握し、「優しい」パスを心掛けること。パスの受け手が潜在的顧客であることは分かります。そうした点を心に留めて、あなた自身のキラーパス(切れ味が鋭くて正確なスルーパス)を研ぎ澄ませてください。
メルマガなどの「継続的な情報発信」は関心を高める
攻め込む手段としての「運ぶドリブル」と「絶妙なパス」。
その大切さや意味をお話ししてきましたが、すべてのケースで、そうした武器が使えるわけではありません。相手と実力が拮抗し、あるいは、相手守備陣の献身的なプレーによって、中盤から前線が膠着状態になることは、決して珍しいことではないからです。ここでは、そんなときにどうするかについてお話しします。
自陣でボールを奪い、前線に残ったエースへ一気に長い縦パスをつなぐ。ベルギーDF陣から前線にそびえ立つルカク選手へのパスをイメージすることができます。膠着状態を一気に打破する力を秘めたロングパス。それもまた、サッカーの醍醐味の1つです。
ロングパスばかりの試合は飽きてしまいますが、その使い方によっては、勝利への有効な武器に転化させることも十分にできるわけです。たとえば、ロングパスがゴールには結び付かなくても、ゴールを奪われるかもしれないという危機感を相手に与えることができます。
また、攻めに夢中になり過ぎて、ロングパスで背後を襲われて失点するリスクを相手チームに意識させることもできます。ロングパスにはそうした力も備わっています。そうやって自軍の位置を全体的に押し上げ、膠着状態を打破していくのです。
前回の(2014年)ブラジルW杯で、ドイツは圧倒的な強さを見せて優勝しましたが、前線へ送られる長いパスの威力が、とても印象的だったのを記憶しています。そんなロングパスをビジネスに置き換えると何になるのか。少しずつ、マーケットでのあなたの位置を押し上げていくための武器となるもの。
それはメールマガジン(メルマガ)やニュースレターなどの継続的な情報発信です。すぐに購入へと結び付ける力はないかもしれませんが、「継続的に読んでくれる読者(潜在的顧客)」は、あなたの商品やサービスへの興味や関心を、確実に高めていくことになります。
とはいえ、メルマガだけに頼っているのでは点は奪え(=ビジネスで成功し)ません。そこで、「運ぶドリブル」としての大局観や、「パス」としてのチラシと組み合わせ、それぞれを適切に使うことで、実際の購入へとつなげることができます。
できるだけ多くの武器を身に付けておくことが大切です。