大好きなサッカーに例えるユニークな視点で、ビジネス戦略をわかりやすく解説する経営コンサルタントの石塚洋輔氏。本連載では石塚氏の著書『サッカー脳で考える起業のルール―ビジネスをゲームメークする49の方法』(合同フォレスト)より「市場の分析」から「集客」までの章を紹介する。第7回のテーマは「見込み客について、どのように捉えているのか」。

見込み客の「悩み」を「解決したい」と願うこと

真剣勝負としての仕事の取引、それはまさにピッチの中(=オンライン)での戦いです。そうしたオンラインの戦いで、「勝てる相手と勝負することの大切さ」について、ここでは一歩踏み込んで見ていきましょう。実際に勝つために必要な要素があります。

 

まずは相手を探すところから。サッカーでは、W杯前の練習試合でどういった相手と戦うか。それがとても重要だといわれています。ですから、予選リーグで対戦する各チームとできるだけ特徴が似ていて、かつ、勝てる可能性が高い相手を慎重に選ぶのです。

 

いくら特徴を知ることができても、負ければ自信を喪失します。

 

自信を失い不安になると、本来のパフォーマンスが発揮できなくなります。だからこそ、勝てる相手を選ぶことが大切なわけです。ロシアW杯の日本代表も、本番直前の勝利がチームをとても活気づけました。これをビジネスに置き換えるとどうなるか。

 

勝てる相手とは、あなたの商品やサービスに興味を持ってくれる人のことです。その相手に実際に勝つとは、興味を持ってくれた人に、商品やサービスを気に入ってもらい、実際に購入してもらうことです。

 

つまり、「セールスする相手」すなわち「見込み客」を見つけることができれば、最初の一歩は踏み出せたも同然です。SNSでのコミュニケーションやさまざまな交流の場を通じて、いわばあなたの潜在的顧客を発見し、見つけたら何があっても逃さないこと。まずはそれを心に留めておいてください。

 

潜在的顧客を発見した後は、潜在的顧客について考え、分析します。あなたが出会ったのは、あくまでも潜在的な(=勝てる可能性がある)顧客であって、まだ本当に買ってくれる(=絶対に勝てる)と決まったわけではありません。

 

それでは、実際の購入へと結び付けるために何が必要なのでしょうか。勝てる可能性が高い相手だからといって、何もせずに試合に臨むことはありません。相手チームの情報をできるだけ多く、かつ正確に収集し、プレーの特徴を判断し、それに見合った戦略をしっかりと立てること。

 

そして、プランニングにあたっては弱点を発見し、攻めどころを見つけることがポイントだということは、すでにご説明しました。だからこそ、ロシアW杯のベルギーは日本代表戦で、高さがない日本相手に長身の選手を送り込んだのです。敵ながら見事な戦略を駆使したベルギー代表。この活躍の理由が、そうした点にも見て取れます。

 

これを個人レベルに落とし込んでみても、同じことがいえます。たとえば、スピードに欠ける相手DFに対して、DFを追い越す飛び出しを活用して攻め込むといった戦略を立てる。そうしたことの繰り返しが、勝利をぐっと引き寄せることになります。

 

これを「ビジネスの相手(潜在的顧客)」に当てはめるとどうなるか。潜在的顧客があなたの商品やサービスに興味を持ったことは、本人が自覚していない場合も含めて、そこには必ず何かの理由があります。その理由、つまり弱点を発見することができれば、効果的な戦略を立てることができます。

 

弱点を「悩み」という言葉に置き換えることもできます。 潜在的顧客が何に悩んでいるのか、それをどうやって解消したいと思っているのか。そんな悩みに対してあなたの商品やサービスがどのように貢献できるのか。

 

この答えが見つかれば、効果的な戦略を立てることができ、商品やサービスを購入しようという意欲を喚起することができます。つまりそれは、戦う前から試合で勝つことが分かっている状態といえます。

 

答えは潜在的顧客をよく知ることによって見つかります。

 

言い換えれば、潜在的顧客をよく知らなければ、いつまでたっても答えは見つかりません。相手の悩みに興味を持ち、共感し、解決したいと願うこと。それが潜在的顧客を、実際の購入客へと格上げする一番の近道なのです。

セールスのタイミングは「大局観」でとらえる

潜在的顧客の今日の理由を知り、具体的な戦略を立てることの大切さは、今見てきた通りです。ここからはさらに踏み込んで、そうした戦略を具体的に考えていきます。サッカーをベースに、いくつかのパターンを仮説として提示しながら、場面別に有効な戦略を見ていきたいと思います。

 

サッカーで勝利を手にするために必要なのは、全員が力を合わせることです。それにはプロもアマも区別がありません。絶対的エースの存在とチームの勝利が必ずしも直結しないのは、先のロシアW杯でアルゼンチンやブラジル、ポルトガルといった強豪チームが教えてくれた通りです。

 

それでも、レベルの高い個人技は多くのファンを引きつけます。それを勝利と結び付けるために必要なのは何なのか。一言で言えば、それは適切な判断能力、つまり「大局観」だと私は考えています。

 

ロシアW杯で個人技の高さに感動した選手の1人に、ベルギーのアザール選手がいます。カウンター攻撃の起点として高速かつ正確なドリブル(運ぶドリブル)で相手DFを翻弄する姿は、見ていて心打たれるものがありました。

 

メッシ選手やロナウド選手に注目が集まりがちですが、本当に素晴らしい選手だと私は思います。そうした感動の根底には、チームの戦術を理解し、状況に応じた適切な判断ができる(=マッチングの高さ)、つまり「大局観」があると言ってよいでしょう。全体のことを常に考えているからこそ、プレーが輝きを増すわけです。

 

潜在的顧客にセールスを行うにも、タイミングが大切です。仮に善意であっても、押し売りは相手の拒否反応を招くだけだからです。アザール選手のように「運ぶドリブル」も、大局観をなくしてただ突っこむだけでは、効果も評価も得ることができません。それをセールスに置き換えると、むやみに売り込むことはマイナスの結果に終わるということです。

 

逆に、チームの戦略とぴったり重なれば(=相手の求めるタイミングとぴったり合えば)、セールスの効果は何倍にも何十倍にもなって返ってくるでしょう。相手の状況をよく観察し、適切なタイミングでセールスを行うこと。やはり相手を知ることに答えのヒントがあるのだと言えます。

サッカー脳で考える起業のルール ビジネスをゲームメークする49の方法

サッカー脳で考える起業のルール ビジネスをゲームメークする49の方法

石塚 洋輔

合同フォレスト

サッカーを知れば、ビジネスが見えてくる。市場というフィールドを見渡すボランチ精神とあらゆる場面を想定したシミュレーション力で結果というゴールを決めろ。 【起業における心構え】【戦略の立て方】【集客】【人間関…

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