ゴール(目標)を明確に定めて戦略を立てる
前回は、攻めるという一番の戦略に加え、いくつかのオプションもしっかり準備しておくこと。その大切さについてお話ししました(関連記事『サッカー脳で考えるビジネス戦略「とにかく先制点を狙え!」』)。
その際、事前にシミュレーションが大切であることについても触れておきました。しかし、頭の中の想定と実戦とではどうしても違った部分が出てきます。別の言い方をすれば、実戦の中でしか確認することのできないケースが間違いなくあるわけです。
ここでは、そのような問題意識からPDCAサイクルについてお話しします。
①P=PLAN(計画を立てる)
オプションを含めて、戦略をしっかりと立てること。何事もしっかりとした計画がなければ始まりません。サッカーの練習などでもそうですが、ゴール〔=目標〕を明確に定めて、どのようにしてそこまでたどり着くのか。
そうしたイメージをしっかり持っておくことが成長につながるといわれます。シミュレーションもまた、このP(計画)に含まれると考えてよいでしょう。
②D=DO(実行する)
実行することに特別な注意は必要ない。そのように誤解されている方もいるかもしれません。しっかりと立てた計画を、その通りに実行することは、口で言うほど簡単なことではありません。昔の夏休みの宿題などを思い出すと分かりやすいかもしれません。
計画通りに実行しなければ、問題点が見えてこないのです。
③C=CHECK(検証する)
実行した後には振り返りが必要です。漫然と実行するのでなく、計画通りにしっかりと実行に移してみて、うまくいかない場合には、計画自体に無理があったのか、DO(実行)の力の問題なのか、しっかりと真因を見定めることが必要不可欠です。
そうした一連の流れのことを「検証」と呼びます。検証なくして成功はない、そう言っても言い過ぎではありません。検証をしっかりと行うことで、問題点がはっきりと浮かび上がってきます。ところが、意外と見落とされがちですが、検証はうまくいかなかったときだけではなく、実はうまくいったときにも必要なのです。
計画が良かったのか、それともパフォーマンスが最高だったのか、少しだけ厳しい見方をすれば、ただ運が良かっただけなのか、そうした検証なくして、再現性のある成功モデルは作れません。私自身はこのC(検証)が一番大切だと思っています。うまくいったときほど、検証することを忘れないようにしています。
④A=ACTION(修正し再び実行する)
計画に無理があれば、実行可能なレベルに修正し、再び実行する。DO(実行)のレベルに問題があれば、しっかりとトレーニングを重ねる。そしてまたトライする。修正し、再び実行することがAの本質です。C(検証)と同じように、うまくいったときにもAの意識をしっかりと持つことが大切です。
たまたま運が良かっただけのモデルは明らかに再現性を欠いていて、次回は失敗に終わる可能性が非常に高くなります。漫然と繰り返すだけではダメだということです。
PDCAサイクルを上手に回すことで、実践の価値が何倍にも高まります。特にうまくいっているときこそ、こうした発想が大切なのだと私は信じています。スタートダッシュの場面では、1つの結果に対して明確な要因を特定することが難しい。だからこそ、実際に試してみて、勝利の要因をしっかりと特定し、それを再現性の高いモデルへと昇華させていくことが大切なのです。
ぜひともPDCAサイクルのマスターを目指してください。
想定外のことが起こったときに何ができるのか?
戦略的なオプションをできるだけ多く準備しておき、不測の事態に備えることで、スタートアップの難局をしっかりと乗り切るということ。それを目指すべきであるのは、言うまでもありません。ここで伝えたいのは、想定外の出来事を想定することの延長にある事柄。つまり、それでもなお想定外のことが起こったときに何ができるのかということです。
ロシアW杯予選リーグ初戦の日本対コロンビア戦。開始わずか3分でDFが退場になり、しかもPKまで献上してしまったのは、コロンビアにとっては明らかに想定外の事態でした。選手だけでなく、ベンチも動揺したのではないでしょうか。
故障明けでまだまだ本調子ではないハメス・ロドリゲス選手を早い段階から投入し、何とか挽回を試みたのだと推察しますが、残念ながら明らかに悪い方向へと(日本にとってはラッキーに)作用しました。
結果的にはトップ通過で決勝トーナメントに進出したものの、コロンビアにとっては後味の悪いゲームだったといえます。もしも予選敗退していたら、大きな批判を浴びる原因になっていたでしょう。
ある意味では、動揺は最大の敵であると言ってもよいかもしれません。スタートダッシュをかけるべき時に、緊張で体が動かない。そんなことはまったく想定していなかったため、どうしてよいのか分からなくなって、一種のパニックのような状況に陥ってしまう。
「何が起こったのかまったく思い出せない」
試合に敗れた後に、実によく耳にする言葉です。動揺はパフォーマンスの質を低下させるどころか、ほとんどパフォーマンスを発揮できないレベルにまで人を追い込んでしまいます。動じないためにできること。それはひと言で言えば、心を鍛えることです。
では、人はどうやって心を鍛えることができるのか。それは日々の鍛錬以外にないのだと考えます。経験は裏切らない。他人だけでなく自分の体が裏切ることはあっても、たくさんの試合を乗り越えたという経験、そこから生まれてくる自信、そういったものは決して裏切ることがありません。
すべては基本が大切だということです。
これはビジネスでも同じです。起業までに身に付けたビジネスの経験や、社会に出るまでに乗り越えてきたいくつもの苦境。これらが動じない心の土台となり、不測の事態に対する備えとなります。「ローマは一日にして成らず」ということわざがありますが、本当にその通りだと思います。
日々の経験を大切にしていきたいものです。