次世代に大切な資産を承継していくために、地主をはじめとした富裕層は常に悩みを抱えています。本連載は、日本で唯一の地主専門の「資産防衛コンサルタント」として展開する、ライフマネジメント株式会社代表取締役の松本隆宏氏の著書『地主の参謀―金融機関では教えてくれない資産の守り方―』(エベレスト出版)より一部を抜粋し、土地や不動産を守りたい地主の方に向けて、自ら地主の長男として生まれた経験もまじえながら、本当に資産を守っていく考え方や資産防衛術を紹介していきます。

相続対策は「立ち止まること」から始めるべき

立ち止まる勇気

 

相続対策に踏み出す前に最も重要なこと。それは、まず立ち止まって「現状を把握する」ことです。

 

この「現状の把握」は、相続対策においてとても重要なことなのですが、これを疎かに考えている方がとても多いように感じます。とはいえ、資産を守るために、つい目先のことに走ってしまう気持ちも理解できます。

 

老後の資金、受け継いだ資産のこと、家族や親戚関係、事業をされている方であれば今後の事業計画など、考える事柄は山積みです。そして、とにかく前へ前へと進むことばかり考えてしまうのもわからなくはありません。

 

私が講演するセミナーに参加をされた方の中にも、「先生、我が家は今のところ大丈夫です! 勉強会にも積極的に参加していますし、税理士も付いていますから」と、なぜか得意満面に発言される方がいます。

 

そして、初めて個別相談に来られた方も、また同じことを口にします。

 

「特に心配事はないんです。ただ、松本先生のお考えもお聞きしたく伺いました」

 

しかし、いざフタを開けてみると、個人の感覚でバランス悪く講じた対策を目にし、唖然とすることが多々あります。さらには、専門家を付けているにもかかわらず、目を疑うような内容を目にすることもあり、同じプロとしてその無責任さに憤りすら覚えるのです。ただ、大抵の場合、すぐに軌道修正をすれば、最悪の状況は回避できます。

 

ところが、「専門家の方に任せたから大丈夫だと信じていました」「プロに任せているはずなのに、収支が改善しないんです」と、資産をすり減らし行き場を失った状態で、最終的に私のところへ駆け込んで来られる方もいます。

 

そのような依頼を受けた場合、直ちに各分野の専門家をフル動員し緊急対応しますが、ここまで来ると、軌道修正も至難の技。

 

なにより一度失ったものは、どんなに頑張っても二度と同じ状態では戻って来ないのです。

 

先祖から受け継いだ大切な資産を確実に次世代へ残す為にも、まずは現在地を把握した上で、ゴールを明確にしてみましょう。

 

そうすればおのずと、様々な方法が見えてきます。

 

なにより、そうすることで、多様なルートが見えてくる為選択肢が広がり、気持ちにゆとりが生まれるのです。

 

クルマに搭載するカーナビが良い例でしょう。例えば、東京から静岡へ行くとします。行き先を入力すると、一般道路、高速道路をカスタマイズし、裏道を駆使した効率の良いルートを数パターンも導き出してくれます。

 

さらには料金と所用時間まで教えてくれるという親切ぶり。この中から、多くの方は最短ルートを選ぶのではないでしょうか。

 

しかし、目的は様々。「とにかく早く到着したい」という方もいれば、「時間はかかってもいいからドライブを楽しみたい」、「たまには通ったことがない道を走ってみよう」など、目的によってルート選択が分かれます。同じように、相続対策も現在地を把握しゴールを定めても、なにを優先するか? なにを求めているか? 将来はどうなりたいか? など、目的により答えは変わってくるのです。

 

私どもは、ご依頼を受けてからいきなりご提案に入ることはしません。お客様が「なにを求めているか?」を、じっくりとヒアリングしていくことからスタートします。

 

お客様自身が気付いていないことや見えていない将来像を、いかにイメージしていただけるか。まずはそのイメージ作りを導き出すことが、プロとして大切だと思っています。

 

そして、そのイメージ作りに重要な役割を果たしてくれるのが、わかりやすい資料です。

 

サラリーマン時代にも感じていた、専門家による小難しい提案書と専門用語の羅列。私がお客様の立場であれば、読む気にもならないし聞く気にもならないでしょう。理解ができていない状態で、真の相続対策など到底不可能なのです。

 

お客様から、いかに理解・納得・安心を得られる環境を作るか。それには現状を「見える化」することが、とても重要となってきます。

 

まずはヒアリングに時間をかけ、現状を分析した上で答えを導き出す。これらの過程は、実際にかなりの時間を要します。

 

しかし、この時間こそが、「立ち止まる」ことなのです。その間、私どもは、案件により必要な各分野のエキスパートを動員し、熟練したテクニックを駆使しながら、お客様に合った最適解を弾き出します。

 

稀に、この作業をご自身で試みる方もいらっしゃいますが、もし成功した暁にはお申し出ください。スタッフとしてぜひお迎えしたいと思います。そして、当然のことながらまず不可能です。

 

それ程までに、ハイレベルでありハイスペックが求められるからです。

 

自身のことは自身が一番気付いていないものです。何事もすべて自分でやろうとせず、他力を上手く借りることが賢い方法ではないでしょうか。そして、力を借りる先の選択も誤らないようにしたいものです。

 

本書(『地主の参謀―金融機関では教えてくれない資産の守り方―』)では、当社が長年の経験により編み出した「現状分析書」の一部を特別に公開します。この現状分析書により、今まで見えていなかった事実が判明し、資金の流れがわかりやすいと大変ご好評をいただいています。

 

「急がば回れ」

 

先へ先へと急がず、まずは立ち止まってみましょう。その立ち止まる勇気が、結果、最良の道を導き出し、明るい未来を切り開いてくれるのです。

 

[図表1]現状分析書:総合評価書

 

[図表2]現状分析書:分析図解

 

[図表3]現状分析書:戦略方針書

 

相続対策…最良の選択肢を見つける3ステップとは?

目線を変えることで生まれる気付き

 

快晴の空の下、ゴルフ場のティーグラウンドに立つと、とても清々しく気持ちが良いものです。

 

ゴルフをする方であれば、大自然の中でプレーをするこの爽やかな感覚を楽しまれる方も多いでしょう。

 

皆さんは、第一打目を打つティーグラウンドからグリーンまでの景色、そしてグリーン上からティーグラウンドの景色を見比べたことがありますか。

 

ティーグラウンドから見たコースは、OBエリアや池等が視界に入ったりすることで、狭く見えたり曲がって見え、難しく感じるものです。

 

おまけにプレー中は、次の地点にしか目が行かない為、全体を見渡すことがありません。

 

ところが、グリーン側からティーグラウンドを見ると、思っていた程狭くなかったり、曲がっていると思っていた景色が真っ直ぐだったり、「あれ?」と思った人も少なくないでしょう。

 

「なんだ、さっきと景色が全然違うじゃないか」

 

実は私もゴルフ場へ行くたびにこのことを感じています。

 

つまりは、何事も目線を変えることで、同じ景色でも見え方や気付きが変わってくるということです。

 

例えば、セカンドショットの地点からティーグラウンドを振り返ってみるのも良いでしょう。そうすることで、新たな攻略法が見えてくるかもしれません。

 

同じように、相続対策も目線や立ち位置を変えることで、別の方法を発見したり、難しいと思っていたことが意外に簡単だったり、遠かったゴールまでの距離が短く見えたりするものです。

 

少し目線を変えるだけで、選択の幅が広がり、最良の解決策を生み出すことが可能となるでしょう。

 

まずは、①見える化を行い→②流れを読み→③判断基準を明確にする。

 

相続対策を行う上で、私は常にこの3STEPを踏むようにしています。

 

[図表4]重要な3STEP

地主の参謀―金融機関では教えてくれない資産の守り方―

地主の参謀―金融機関では教えてくれない資産の守り方―

松本 隆宏

エベレスト出版

相続マーケットの真実がここにある。 優れた名監督の裏には有能な参謀がいるように、地主という経営者にも参謀となる存在が必要です。 地主専門の資産防衛コンサルタントが明かした、本当に資産を守っていく考え方と防…

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