今回は、大型不動産を高値売却する極意について見ていきます。※本連載は、ライフマネジメント株式会社代表取締役である松本隆宏氏の著書である『地主の参謀―金融機関では教えてくれない資産の守り方―』(エベレスト出版)より一部を抜粋し、土地や不動産を守りたい地主の方に向けて、本当に資産を守っていく考え方及び資産防衛術をわかりやすく紹介します。

難しい大型不動産を3割高く売る極意

日常生活において、一般的に売り買いされる物には、大抵価格が決まっている物が多いと思います。では、いつも皆さんが口にしている身近な食料品に視点を置いてみましょう。

 

例えば肉や魚などは、収獲の時期や年によって変動=時価になっていることが常識となっていますね。またミネラルウォーター1本を取っても、近所の自動販売機で売っている価格と、山頂の自動販売機の価格はイコールではありません。

 

では、この現象はなぜ起きるのでしょうか。

 

皆さんもご存知のように、市場経済におけるサービスや品物の金額は、買う側が欲しい量(需要)と、売り手が売りたいと思う量(供給)のバランスで決定していきます。つまり、肉や魚、ミネラルウォーターの事例は、この需要と供給によってもたらされている現象であり、ごく自然な現象と言えるでしょう。

 

以上のことを踏まえ、次にこれを“不動産の取引(価格設定)”に置き換えてみましょう。例えば、駐車場を売却しようとした場合、多くのケースでは、相談を受けた不動産会社がまず査定を行い、その査定額に基づいて売却価格を定めます。そしてその査定額は、対象物件周辺の過去の取引事例などを参考にしながら算出されるのです。

 

そう、ここで賢明な皆さんなら、先程の食料品の事例と照らし合わせ、この不動産取引のおかしな現実に気付かれたことでしょう。“需要と供給のバランス”は、一体どこへ消えたのでしょうか。その物件の価値を、いつ誰がどう感じるのかわからないのに、そもそもこの売却のタイミングで価格を定めてしまってもいいのでしょうか…?

 

理屈はわかったものの、一体どのように価格を決めれば良いのでしょうか。先にも述べたように、売却物件周辺の過去の取引事例や、現在売りに出ている類似物件の価格から、査定額を算出します。そしてその算出により、仮にある物件の価格を2億円と定めたとします。

 

しかし、実際はその価格を超えた取引はまずあり得ません。なぜなら買い手が、わざわざ販売価格よりも高い価格で購入しないからです。自分が購入する立場で考えたら、至極当然の感覚ですね。しかも、売り主と買い主の希望条件を調整し、合意に至ったときに初めて価格が確定する為、当初開示した価格よりも低い価格で売買締結する可能性を、十分念頭に入れなければいけません。

 

ではここで、価格を決める前に、興味を持ちそうな企業・団体へ、誘致ヒアリングをした場合はどうでしょうか。全ての対象が興味を持つことはないにしても、ニーズによりその不動産に興味を示す方が現れるのです。

 

買い手にとっての投資パフォーマンスを最大化するソリューションさえあれば、個人規模では難しいことでも、事業規模で考えた場合、効率的で効果的な手法と言えます。“最も求めて下さる方を、最良の方法で探す”。ある方にとっては2億円の価値であっても、ある方にとっては2.6億円の価値になるのです。

大型不動産を高値売却する3つのステップ

大型不動産に限らず、不動産を所有している方であれば、とても興味を引く大きなポイントではないでしょうか。

 

区分のマンションや戸建てなどの住居用不動産の場合はあまり参考にならないかもしれませんが、駐車場や賃貸マンション、テナントが入るビルなどを所有されている方にとって、これはきっとお役に立つ情報となるでしょう。

 

ではまずひとつの例として、所有している大型の駐車場を売却することにしたと仮定しましょう。あなたがその土地の購入を検討している不動産業者の場合、どのようなポイントを気にするでしょうか? 

 

実はこの“気にするポイント”は、事業ベースで見るのと、個人ベースで見るのとでは少々異なってきます。もちろん不動産会社は売買の交渉に慣れており、また知識も豊富な専門家である為、下記のような様々な視点から総合的に判断していくでしょう。

 

①境界は確定しているか?

②何棟建てられるのか?

③地区協定などはないか?

④道路の入れ方は?

⑤地盤が弱くないか?

⑥土壌汚染は大丈夫か?

⑦近隣にどのような方が住んでいるのか?

 

あなたが売主になり、しかもより高値での売却を希望するのであれば、あなた自身が誠実であり、責任を持ち、さらには確実で信頼性のある取引であることなどが、往々にして求められるのです。

 

“買主(不動産会社)の不安を可能な限り取り除く”。あなたがその意識を高く持ち、買主が納得し安心して売買契約が締結する為に、

 

①徹底した準備→②絶対的な営業活動→③競争原理の活用

 

この3ステップが、不動産の高値売却を現実化していく上で重要になるのです。

 

では、この3ステップについて、具体的な取り組みや事例についてお話していきましょう。実際の不動産取引が行われる際に、対象不動産の価値を最も高く評価するのは、個人の方もしくは法人企業のどちらだと皆さんは思いますか?

 

まずは対象不動産や隣接した不動産の徹底した調査はもちろんのこと、どのような企業がどのような理由で興味を持つのか?

 

また、より価値を感じてもらえる要素はどこにあるのか?

 

様々な角度から多角的に検証を行い、その不動産の価値を最大化させる工夫と、営業戦略がとても重要になってきます。しかしながら、通常の取引では動き出す前のこの戦略作りが、確実に不足しているケースが多いのです。

 

通常売却価格の算出は、主に過去の近隣での成約事例などをもとに、価格を定めて売りに出すケースがほとんどでしょう。

 

過去に500坪の駐車場を売却した事例では、買付(購入申込み)が8本入った中で、1位と8位では、なんと坪当たり10万円以上もの開きが生まれました。実際にこの時も、入札前に約100社へのヒアリングを行い、その中で上位数社が入札に参加し、2回戦を行った結果、相場より30%も高い成約となりました。

 

仮にこの土地に2億円という価格が定まっていたら、提示された価格より30%も高く売れたでしょうか?

 

事業用の不動産の場合、その価値は各企業によって様々であり、想像している以上の差が生まれることが多々あります。このような成果を生み出すことが出来たのも①徹底した準備→②絶対的な営業活動→③競争原理の活用の3ステップがあったからこそなのです。

 

「価値を最大化させ、より多くの方々に求めて頂く」

 

これから売却をお考えの方は、一度立ち止まり、ぜひこの意識を持って臨まれることをおすすめいたします。

 

地主の参謀―金融機関では教えてくれない資産の守り方―

地主の参謀―金融機関では教えてくれない資産の守り方―

松本 隆宏

エベレスト出版

相続マーケットの真実がここにある。 優れた名監督の裏には有能な参謀がいるように、地主という経営者にも参謀となる存在が必要です。 地主専門の資産防衛コンサルタントが明かした、本当に資産を守っていく考え方と防…

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