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チェティンカヤ総裁は金融政策の変更を否定していることもあり、預金準備率の引き下げが通貨リラに与えた影響は限定的でした。確かに目先、利下げなど金融政策の変更は考えにくいものの、市場の一部には将来の利下げ観測も見られます。早ければ、年後半にトルコ中銀の姿勢に変化があるかもしれませんが、次の点で、当面は据え置きがメインシナリオと思われます。

トルコ中央銀行:預金準備率を引き下げ、貸出促進が目的

トルコ中央銀行は2019年2月16日に預金準備率の引き下げを公表しました。引き下げ率は満期などにより異なりますが、0.5%~1.0%と声明で示されています。

 

なお、預金準備率の引き下げに先立ち、トルコ中銀のチェティンカヤ総裁が、必要な流動性供給に預金準備などを使用する可能性を示唆すると共に、(預金準備率の引き下げは)金融政策の変更を意味しないと説明しています。

どこに注目すべきか:預金準備率、インフレ率、成長悪化、選挙

チェティンカヤ総裁は金融政策の変更を否定していることもあり、預金準備率の引き下げが通貨リラに与えた影響は限定的でした(図表1参照)。確かに目先、利下げなど金融政策の変更は考えにくいものの、市場の一部には将来の利下げ観測も見られます。早ければ、年後半にトルコ中銀の姿勢に変化があるかもしれませんが、次の点で、当面は据え置きがメインシナリオと思われます。

 

[図表1]トルコリラ(対ドル)と消費者物価指数(CPI)の推移

日次、期間:2016年2月19日~2019年2月19日、CPIは月次、1月迄 出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
日次、期間:2016年2月19日~2019年2月19日、CPIは月次、1月迄
出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

 

まず、トルコ中銀の利下げの判断基準を確認します。チェティンカヤ総裁は価格動向と、インフレ率に関連する各種指標の「明確な改善」が必要と説明しています。したがって例えば前期の高インフレの影響で指数が前期比で大幅に低下するといったテクニカル要因や、原油価格等の下落を反映した外部要因は「明確な改善」を意味しないと述べています。

 

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1月の消費者物価指数(CPI)は前年比20.35%と依然高水準で利下げには程遠いレベルと見ています。ただ、リラの安定に伴いインフレ率が低下(改善)傾向であり、リラの動向次第では、インフレ率の一段の低下も予想されます。

 

また、インフレ率に関連する指標の中に、改善が見られるものもあります。インフレ率上昇は通貨安が主な背景と見られますが、昨年新興国通貨が下落した際には、経常収支が大幅な赤字の国の通貨が売られる傾向が見られました。トルコの経常赤字対GDP(国内総生産)比率も、過去数年マイナス(赤字)が拡大傾向でしたが、足元改善が見られます(図表2参照)。チェティンカヤ総裁も輸出や観光客(トルコ訪問)の回復が背景と述べてはいます。一方で、成長率の急速な悪化が経常赤字縮小の主な要因と指摘しています。

 

[図表2]トルコGDP成長率と経常収支対GDP比率

四半期、2013年10-12月期~2018年7-9月期 出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
四半期、2013年10-12月期~2018年7-9月期
出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

 

成長率の低下はトルコ中銀の金融緩和を後押しするというより、取り扱い注意な面があります。トルコ中銀が金融政策を変更するには、不要なリラ安を防ぐために、市場との対話が非常に大切です。昨年のリラ安局面では経済成長を求める政治の介入がトルコ中銀の判断を遅らせた記憶が残るだけに細心の注意が求められるからです。

 

 

政治の介入の試金石となりそうなのが、3月末の統一地方選挙です。トルコ中銀のインフレ目標は5%±2%で、現在のインフレ率は上限の3倍近い水準です。少なくともインフレ目標上限に明確に近づく展開でなければ、利下げは考えにくいと思われます。その時期は早くても年後半と見られます。

 

トルコ中銀の金融政策決定会合は次回が3月6日、その次が4月25日に予定されています。チェティンカヤ総裁が明確な金融政策を運営するかに注目しています。

 

当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『トルコ中銀・チェティンカヤ総裁の発言に見る今後の政策運営』を参照)。

 

(2019年2月20日)

 

 

梅澤 利文

ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部 投資戦略部 ストラテジスト

 

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